キヤノン IXY DIGITAL 20 IS レビュー

全11種類の「スペシャルシーンモード」、色調効果の「レタッチマイカラー」

撮影モードは [オート] [マニュアル] [デジタルマクロ(デジタルズームによるマクロ効果)] のほか、撮影状況に応じた設定を自動で行う [スペシャルシーンモード] がある。シーンは、[ポートレート] [ナイトスナップ] [キッズ&ペット] [パーティー/室内] [夕焼け] [新緑/紅葉] [スノー] [ビーチ] [打上げ花火] [水族館] [水中] の11種類、特定の色のみを残して他をモノクロにする [ワンポイントカラー] 、指定した色を別の色に置き換える [スイッチカラー] もある。
マニュアルモードでは、コントラストの強調や鮮やかさなど色調を変化させることができる、IXY シリーズではお馴染みの [マイカラー] 機能が利用できる。曇りの天気で発色が不足している場合に鮮やかさを強調するなど、意図的なカラー演出が可能だ。
撮影後の画像に対しても、再生モードで「レタッチマイカラー」として同様の色調効果を与えることができる。

ノーマル

くっきりカラー

すっきりカラー

ノーマル

あざやかブルー
操作面ではスペシャルシーンモードでシーンを選択する場合に、途中で [DISP] キーを押してからでないと、隠れている他のシーンが出てこないのは面倒に感じられた。
また他社ではシーンごとに、設定の特長や撮影時のコツをサンプル写真や説明文で参照できるガイドの導入が増えているが、IXY シリーズにはない。IXY DIGITAL 20 IS は親しみやすいデザインやカラーリングを採用しているものの、インターフェイスなど操作性の面で親しみやすいアプローチが少ないのは残念だ。

撮影・再生モードで活かされる顔検出機能「フェイスキャッチテクノロジー 」

IXY DIGITAL 20 IS には顔検出機能である「フェイスキャッチテクノロジー」が搭載されている。顔検出機能の利用は、設定メニューから [AFフレーム] で、[顔優先] を選ぶと働き、顔にピントを合わせる「顔優先AF」、顔の明るさを最適に調整する「顔優先AE」、ストロボ発光時に顔の明るさを調整する「顔優先FE」、そして新たに顔のホワイトバランスを最適に調整する「顔優先WB」が追加された。
また、検出された複数の顔から優先したい人の顔を選ぶことができる「顔セレクト」機能が搭載された。あらかじめプリンターアイコンのイージーダイレクトボタンに「顔セレクト」機能を割り当てておくと、撮影時に方向キーを使って検出された複数の顔から、優先したい顔を任意に変更することができる。これにより運動会やサークル活動の集まりなどで、自分の子供の顔を優先的に検出させる、といったことができる。
「顔セレクト」で設定した人の顔は、メニュー表示の切替や電源を切らない限り追従し続けるが、激しく動いたり、一定時間検出が途切れると無効になることがある。
また「ピント位置拡大」機能を利用すれば、シャッター半押しの状態でピントが合っている顔の部分を拡大表示できる。
これは AFフレームが [顔優先] 以外の、[中央] に設定しているときにも働くので、マクロ撮影時のピント確認など人物撮影以外にも利用できる。
そして「フォーカスチェッカー」によって、撮影直後のプレビュー表示で顔を検出し、自動で拡大表示させて目つぶりや表情をチェックできる。複数の人物が写っている場合は、拡大表示させる顔を順番に切り替えることができるので、ズームや画面移動の操作を何度も繰り返す必要がない。フォーカスチェッカーは再生モードでも利用できる。
この記事を書いている段階で「顔優先WB」「顔セレクト」「ピント位置拡大」機能は、上位モデルには未搭載の新機能だ。

撮影サンプル

マニュアル [遠景モード]
シャッタースピード 1/160秒、F8.0、ISO80

マニュアル [マクロモード]
シャッタースピード 1/100秒、F2.8、ISO80。
オート
シャッタースピード 1/125秒、F2.8、ISO80。

詳細表示、カテゴリーやフォルダ分類、検索が可能な再生モード

IXY シリーズではお馴染みだが、再生モードではカメラ本体の傾きを感知して、自動的に画像を90度回転して表示する「 SI センサー」が働く。再生モードではズームレバーの操作により、9枚までのマルチ表示が可能だ。
また、[DISP.] ボタンを押すと、中心部分を拡大表示する「フォーカスチェッカー」や撮影情報を参照できる「詳細表示」に切り替えることができる。
画像は日付単位やフォルダ単位で検索することが可能で、撮影枚数の多い少ないを表す棒グラフを選んで、日付やフォルダを移動して画像を検索できる。
しかし棒グラフの長短だけでは、目的の画像がどのあたりにあるのか判断しづらく、結局は9枚マルチ表示でスクロールする方が探しやすく感じられた。できればサムネール付きのカレンダー表示など、もう少し視覚的に画像の場所を類推・判断できるような検索方法が欲しい。
編集機能は赤目補正、リサイズのほか、撮影時のマイカラー機能と同様に、セピアやモノクロ、コントラストの強調など色調を変化できる [レタッチマイカラー] が利用可能だ。

従来よりも画素数アップにも関わらず、撮影可能枚数が約10%以上アップ

IXY DIGITAL 20 IS には専用バッテリー NB-4L と、コンセントに直結するコンパクトなバッテリーチャージャーが付属する。専用バッテリーは、約1時間30分でフル充電が可能だ。
フル充電の状態で、約240枚(CIPA準拠※)の撮影ができる。前モデル IXY DIGITAL 10 の約210枚から、画素数がアップしつつも撮影枚数が約10%以上アップしているのは嬉しい。専用バッテリーそのものは変わっていないので、本体側のバッテリーマネジメントの改良によるものだろう。
パッケージには、32MBのSDメモリーカードも付属する。
本体の他に、32MB SDメモリーカード、USBケーブル、バッテリー、バッテリーケース、バッテリーチャージャー、AVケーブル、ストラップ、ソフトウェア、説明書が付属する。
※CIPA規格:カメラ映像機器工業会(Camera & Imaging Products Association)が定める電池寿命測定方法についての統一規格。

総論:充実機能で上位モデルに引けを取らない、オシャレなコンパクトデジカメ

本編でも述べたが、IXY DIGITAL 20 IS は、IXY シリーズの中でもスタンダードモデルに該当する。
スタンダードモデルと言えば、上位モデルに搭載されている先進機能を適度に削って落とし込まれた、まさにスタンダードな位置付けを想像するが、IXY DIGITAL 20 IS に搭載されている機能は、上位モデルにも負けず劣らず充実している。
中でも注目のポイントは、やはり光学手ぶれ補正の搭載と5色のカラーバリエーションだろう。

これまで手ぶれ補正機能はハイエンドモデルが光学手ぶれ補正、スタンダードモデルは高感度ISOというように、ラインナップの中でも機能的な差別化が図られてきたが、IXY DIGITAL 20 IS が光学手ぶれ補正を搭載したことにより、そのような垣根が無くなった。

これはコンパクトデジタルカメラの現状を、IXY DIGITAL 20 IS 自らが体現した格好だ。機能的に成熟しつつモデル間の差が感じられなくなる状況は、デジタルカメラ市場の状況と一致している。それら状況を踏まえ、デザイン面で大きな変化を取り入れたのは必然的であり、高機能でありつつも、デザイン性も重視するユーザーが増えている現状への対応でもある。

余談だが、IXY DIGITAL 20 IS がカラーを取り入れたデザイン性を重視したことによって、他の IXY シリーズのラインナップも画素数や広角レンズ、ズーム倍率、液晶サイズというように、各モデルの性格がわかりやすくなった。

一方、IXY DIGITAL 20 IS は見た目の親しみやすいデザインやカラーリングに比べると、メニュー画面などのインターフェイスは従来からほとんど変化はなく、親しみやすいとは言い難い。IXY シリーズからの買い換えなら迷わずに使える安心感はあるが、初めて手にするユーザーには若干堅く感じられる。
機能とデザインは先に進んだが、それらを橋渡しするインターフェイスが少し遅れを取っているようにも感じられる。次のモデルでは、何らかの変化を期待したい。

それら気になる点はあるものの IXY DIGITAL 20 IS は機能的、デザイン的にも非常に魅力的に仕上がっている。しかも現在のタイミングでは、一部新機能は上位モデルにもまだ搭載されていないものがあり、お買い得感もある。

IXY シリーズは新製品が発表されるたびに人気となるモデルが多いが、IXY DIGITAL 20 IS もかなりの人気モデルになると予想される。機能とデザインを両立したオシャレなデジカメを求めるなら、間違いなく有力候補の上位に名前が挙がるだろう。
H-lab:山地啓之)
 キヤノン [ http://canon.jp/ ]
 IXY DIGITAL 20 IS
 価格:オープンプライス 最新価格を調べる >>
 発売日:2008年3月6日
  1 / 2
ページのトップへ▲
デジカメの基本から撮影転送編集プリント活用法を幅広くご提供する“カシャリ!”