ニコン COOLPIX S60 レビュー

タッチパネルで直感的な操作ができる、スタイリッシュなコンパクトデジタルカメラ“ニコン COOLPIX S60”

 ニコン [ http://www.nikon.co.jp/ ]
 COOLPIX S60
 価格:オープンプライス 最新価格を調べる >>
 発売日:2008年9月19日
本体サイズは小さいながらも多機能化が進むポータブル機器では、限られたボタンに複数の機能を割り当てるのではなく、液晶モニターに必要に応じてメニューを切り替えられ、指先で操作できるタッチパネルの採用が広がっている。代表的なところではiPhoneのような携帯電話からポータブルミュージックプレーヤー、そしてデジタルカメラも例外ではない。

今回ご紹介するCOOLPIX S60は、従来のボタンをほぼ廃し、撮影・再生操作のほとんどをタッチパネルで行えるコンパクトデジタルカメラだ。タッチパネルの採用で撮影スタイルがどう変化し、どう便利になったのかレビューしていこう。

波打つ曲線が美しい、女性的な印象のボディデザイン

まずは外観からチェック。
今回取り上げるCOOLPIX S60はリッチゴールド、パープリッシュブラック、ワインレッド、ロイヤルピンクの4色がラインナップされており、いずれも女性的なカラーリングと言って良いだろう。
写真左上からリッチゴールド、パープリッシュブラック、ワインレッド、ロイヤルピンク

お借りしたパープリッシュブラックは完全な黒というよりも、ダークブラウンをもっと濃くした感じで、落ち着きと高級感がある。ボディの一部に利用されているシルバーのメタリックがポイントとなり、カジュアルなシーンでもエレガントなシーンでも違和感がない。

ボディは光沢のあるメタルで、高級感がありモノとして満足度の高い質感だ。ただ、表面にはかなり指紋が付きやすい。指紋がベタベタと付いてしまうとせっかくのスタイリッシュさが損なわれるので、表面処理には高級感と扱いやすさを両立したアプローチも欲しい。

形状は単にスリムという言葉では片付けられないほど、微妙な曲線の変化で構成されている。特に前面カバーは上から下にかけて波打つような曲線に加え、上から1〜2cmの位置に左右へも曲線が流れている。見る角度によって色や形状が異なった印象を与え、デザイン面でのコダワリが強く感じられる。

本体重量は約145 g(バッテリー、SDメモリーカード含まず)で、このクラスのコンパクトデジカメでは平均的だが、見た目のスリムな印象のせいか手に持ってみると意外と重く感じる。3.5型液晶モニターを搭載していることもあり、本体サイズは幅97.5mm、高さ60mmとやや大きい。右手で構えた際にグリップのような突起はないが、曲面のおかげで手にフィットしやすい。しかし、それなりに大きなボディなので、手が小さい女性の場合は特に、ストラップを取り付け手に巻くなど落下防止を心がけた方がよいだろう。
上部のボタンは電源スイッチとシャッターボタンのみでスッキリしている。それぞれはサイズと高さが異なるので、慣れれば目視しなくても指先で位置を判断できるだろう。
電源を入れると、電源ボタンが点灯する。
右側面にはマイクと、スピーカーが内蔵されている。マイクが側面にあるため、カメラを構えた際に左手がボディに接触するとノイズが録音されてしまう可能性がある。COOLPIX S60はムービー機能を重視するカメラではないが、音声の捉えやすさを考えると、マイクは前面か上部に配置して欲しかった。
撮像素子は、1/2.3型原色CCDの有効1000万画素で、記録サイズは最大で3648×2736ピクセル。レンズは本体内部で垂直に駆動する屈曲光学系の33 - 165mm相当(35mmフィルム換算)の光学5倍ズームを搭載している。レンズカバーを内蔵し、電源に連動して開閉する。レンズが上部に近い位置に配置されているので、構え方によってはレンズに指が被りやすい。
レンズの隣には、セルフタイマーランプと、AF補助光を兼ねたランプを内蔵する。
記録画像サイズは、3648×2736(高画質/ 標準)、2592×1944、2048×1536、1024×768、640×480 、3584×2016 (ワイド 16:9)、1920×1080 (ワイド 16:9)の8種類から利用できる。
続いて背面を見てみよう。
背面はボタン類が一切なく、タッチパネル機能を採用する横長のワイド3.5型液晶モニターを搭載する。ワイドで大きなモニターは、かなりの迫力がある。背面にボタンや、それらの機能を記す文字なども一切なく、「Nikon」のロゴがあるだけで非常にスッキリしている。背面だけ見ていると、ポータブルワンセグテレビかメディアプレーヤーのようでもある。
モニターの表面はタッチ操作対応の、やや軟質のアクリルパネルで覆われている。
背面はほぼ全面がパネルのため、構えると必然的にパネルに指がかかり指紋が付きやすい。指紋は柔らかい乾いた布で拭けば綺麗に取れるが、気になるようであれば指紋が付きにくい保護フィルムを貼ろう。
液晶モニターの視野角は広く、上下左右どの角度からでも明るくハッキリと見える。画素数は約23万画素で、サイズの割には画素数が物足りない印象で、直線の被写体が斜めに映し出されたり、メニュー画面の文字やアイコン表示でジャギー(ギザギザ)が気になる。
メモリーカードは2GBまでのSDメモリーカード、8GBまでのSDHCメモリーカードに対応し、本体底面から挿入する。手元にあった16GBのSDHCメモリーカードでも初期化、撮影・再生は可能だったが、利用に関しては、自己責任で対応して欲しい。
COOLPIX S60 の本体には約20MBのメモリーを内蔵しており、最大記録サイズの10M(3648×2736ピクセル:高画質)では4枚、L判サイズ相当の3Mでは28枚の撮影が可能だ。

底面の三脚用の穴の隣にあるのはマルチコネクター端子で、付属のUSBケーブルやAVケーブルが接続できる。設置タイプのクレードルは付属しない。

側面にはミニHDMI端子を搭載し、市販のHDMIケーブルでデジタルテレビへ画像を映し出すことができる。COOLPIX S60 に搭載されている、画像とBGMを組み合わせてハイビジョン画質のスライドショーが作成できる「HD Pictmotion(ピクトモーション)」を使って作成したムービーを、大画面テレビで楽しむことができる。

撮影のほぼ全ての機能を、直感的に操作できるタッチパネル

次に、撮影モードや設定を含めた操作面を見ていこう。
COOLPIX S60の特長は、なんといってもタッチパネルの採用だ。本体にはボタンとしては電源ボタンとシャッターボタンしかなく、操作のほとんどをタッチパネル上で行う。
COOLPIX S60は、電源を入れると撮影モードで起動する。液晶モニターには、選択している記録画像サイズが4:3比率の場合は両サイドに黒い帯が入り、ワイド 16:9比率の場合は画面いっぱいに被写体が映し出され、左右に操作アイコンが並ぶ。撮影モードの切替は左上部のカメラアイコンから変更できるほか、右下の [HOME] からホーム画面に入り変更できる。

ホーム画面は丸いアイコンでデザインされており、撮影・再生モード切り替えのほか、撮影メニューの呼び出しや本体のセットアップが行える。
画面をタップした際の反応は良く、アイコンを押して画面が切り替わる動作もサクサクしており、ストレスがない。

ただ、ホーム画面はクールな雰囲気でデザインされているものの、撮影・再生画面や、各種設定メニューに入ると、四角いメニューとギザギザが目立つ文字やアイコンが並んでおり、ホーム画面や、スタイリッシュなボディデザインとは違和感がある。指先でのタッチを考慮すると、ある程度のボタンサイズと視認性が必要になるが、もう少しスタイリッシュさが欲しい。

タッチパネルを活かした撮影機能として、「タッチAF/AE」がある。これはモニターで撮りたいものにタッチすると、AFエリアが移動してピントと露出を合わせてくれる機能だ。タッチAF/AE機能の利用に特別な操作は必要なく、ダイレクトに撮りたい被写体をタッチするだけでよい。構図に凝って撮影したい場合に、オートでは希望する被写体にピントが合いにくい時や、全体の構図は変えずにピント位置を変えることで、趣の異なる写真を撮りたい場合に便利だ。
これらタッチパネルの操作は軽快で便利だが、注意すべきところもある。それは、パネル上を2点同時に触れての操作ができないのだ。具体的に言うと、右手で本体を持った際に親指がタッチパネルにかかっていると、左手の指で操作しようとしても反応はしない。また、両手で持ってゲーム機のように左右の親指で操作したい場合も、両手同時に画面には触れず、交互に触れるとうまく扱うことができる。

また、全体的には従来からのメニューがタッチパネル用に置き換わった印象で、タッチパネルならではの機能ももっと充実して欲しい。例えばカメラを縦位置に構えるとメニュー項目も縦位置に回転するなど、状況によって表示を変化させることができるパネルだからこその利便性も期待したい。

最適な撮影モードを自動判別する「おまかせシーン」モードを搭載

COOLPIX S60は被写体に合わせて最適な撮影モードを自動判別する「おまかせシーン」モードを搭載する。シーン自動判別機能は、パナソニックのLUMIXシリーズから広まった機能で、現在では各社のコンパクトデジカメでも採用が広まっている。

自動判別できるのは、[ポートレート] [風景] [夜景ポートレート] [夜景] [マクロ] [逆光] の6種類。判別に少し待たされることもあったが、ほぼ被写体に応じたモードが選択されていた。ただ、明暗の差が激しくコントラストのある被写体では、風景と逆光で判断を繰り返すこともあった。

その他、任意に切り替えできるシーンモードとして、[ポートレート] [風景] [スポーツ] [夜景ポートレート] [パーティー] [海・雪] [夕焼け] [トワイライト] [夜景] [クローズアップ] [料理] [ミュージアム] [打ち上げ花火] [モノクロコピー] [手書きメモ] [逆光] [パノラマアシスト] の17種類が利用できる。
おまかせシーン、ポートレート、夜景ポートレートでは顔検出機能が利用できる。

次ページ「笑顔を検出、自動でシャッターを切る“笑顔自動シャッター”
  1 / 2

ページのトップへ▲
デジカメの基本から撮影転送編集プリント活用法を幅広くご提供する“カシャリ!”