IXY シリーズ初となる手ぶれ補正、被写体ぶれ軽減を搭載した
“キヤノン IXY DIGITAL 800 IS”

キヤノン [ http://canon.jp/ ]
IXY DIGITAL 800 IS
価格:オープンプライス 最新価格を調べる >>
発売日:2006年4月中旬
キヤノンの IXY は、スタイリッシュなボディと画質の高さで非常に人気が高いシリーズだ。
奇をてらった目新しい機能は搭載させないものの、画質やボディデザインの細部へのコダワリなど、老舗カメラメーカーとしての堅実さが感じられるシリーズだ。

その反面、他社に比べて物足りなく感じる部分もあった。それは手ぶれへの対応だ。他社がどんどん手ぶれ補正を採用していくなか、なかなか搭載されてこなかった。キヤノンとしてもトレンドを無視しているつもりはないと思うが、画質との兼ね合い、コンパクトなボディとのバランスなどを踏まえて、あえて採用してこなかったのだろう。

その意味でも手ぶれ補正、高感度ISOを搭載してきた IXY DIGITAL 800 IS は、ユーザーが首を長くして待ち焦がれていたカメラだ。では、早速レビューを進めていこう。

3層カラーで、さらに精悍になったボディデザイン

まず、本体デザインをチェック。
IXY シリーズのボディデザインは歴代、無駄のないスクウェアな形をしていたが、IXY DIGITAL 600 あたりから曲面を利用した形状に変化してきている。平面を貼り合わせた箱ではなく、円筒形から微妙な曲線をコントロールしながら造形された「カーバチャー・デザイン」と呼ばれる技法から生まれたデザインだ。IXY DIGITAL 800 IS のボディ本体も、その流れを汲んでいる。
カジュアル路線のモデルとなる IXY DIGITAL L3 も曲面が強調されたボディデザインを採用しているので、今後はシリーズを通じてボディの形状が曲面に移行していくのかもしれない。
IXY DIGITAL 800 IS では、ボディカラーが場所によって3色に分かれている。前面が青緑色のシルバーで、操作ボタンを含めたサイドはシルバー、液晶モニター周りがブラックと3層になっている。上部から見ると色が3層に分かれているのがよくわかる。前面の大部分が青緑色のおかげで、従来モデルに比べ、精悍な印象がさらに強くなった。しかし、液晶周りのブラックには、発表当時から異論を唱える声が聞かれる。
取って付けたようなブラックのおかげで、これまでシルバー1色で続いてきた IXY シリーズのスタイリッシュさが感じられないというわけだ。確かに全体としては、違和感がなくもない。
個人的には使っているうちに、それほど大きな問題とも感じられず、かえって新しいと思えるようにもなった。液晶モニター周りのブラックのおかげで、撮影時や画像鑑賞時には、画像の色が締まって見えるというメリットも感じられた。このあたりはハッキリ言ってしまうと、好みの問題だ。

レンズは光学4倍ズームを搭載。本体の厚みが IXY DIGITAL 700 と比較して、奥行きが 0.8mm 薄くなったにも関わらず、従来の3倍ズームよりも高倍率になったのは立派。デジタルズームとの併用では、最大16倍ズームが可能だ。

ただし、搭載されているCCDは、 IXY DIGITAL 700 の 1/1.8 インチ710万画素から、1/2.5 インチ600万画素となっている
念のため断っておくが比較として IXY DIGITAL 700 を引き合いに出しているが、 IXY DIGITAL 800 IS は IXY DIGITAL 700 の後継機種ではなく、別のラインとして位置付けられている。

サイズは、IXY DIGITAL 700 と比較しても幅で0.9mm 長くなった程度で、高さと奥行きでは0.5〜0.8mm程度小さくなっている。数値的にはそれほど大きな差がないにもかかわらず、正面から見た印象では従来よりも横長で精悍に感じられるのはデザインの妙といえるだろう。
手に持った印象は、これまでの IXY シリーズと同じく、見た目の割にズッシリしている。これまで IXY シリーズ を使ったことがないユーザーだと、意外と重く感じられるだろう。重いことは決して悪いことではなく、安定しやすく手ぶれしにくいメリットもある。
次に背面を見ていこう。
コンパクトデジタルカメラ全体にいえることだが、液晶モニターサイズが大型化するにつれて、スペースの物理的な問題から操作キーは小さくなる傾向にある。それはIXY DIGITAL 800 IS も例外ではない。
背面には液晶モニター、操作キーなどが並び、凹凸が少なく、フラットに近い状態となっている。キーのレイアウト自体はほとんど変わっていないが、これまでダイヤル全体が見えていた撮影・再生モードのキーが、半分以上ボディに埋め込まれる形となった。背面をフラットに近づけるための処理と思われるが、操作性では少し不便になったように思う。
ダイヤルの周囲には溝があるので引っかかりは悪くないのだが、手が少し汗ばんでくると滑ってしまいダイヤルが回しにくくなることがあった。また、IXY DIGITAL 700 の場合はレバーが付いたダイヤルだったので、指の引っかかりで確実に回転できたのと、慣れてくるとレバーの角度によって、手探りでも撮影モードを確認することができた。IXY DIGITAL 800 IS では、撮影・再生モードを切り替える際に、モードキーに毎回、目をやらなければならない。ダイヤルのサイズが小さく、アイコンが小さいのも気になる。

キー周辺は、もう少し凹凸があってもよいと思う。凹凸があれば、グリップの役割もしてくれ、安定感もアップする。キー周辺に関しては、デザイン優先で処理されているようにも感じられる。
バッテリーとSDメモリーカードは本体の底面から挿入する。三脚用の穴は中心近くあるので、三脚にセットしたままでのバッテリー、SDメモリーカードの交換はできない。

3種類のモードを搭載する、レンズシフト式光学手ぶれ補正

IXY DIGITAL 800 IS が採用する手ぶれ補正は、カメラ本体の揺れに対してレンズ駆動で補正するレンズシフト式、または光学式と呼ばれる方式だ。同じような方式はパナソニックの LUMIX シリーズが採用している。レンズシフト式のメリットは、ぶれを補正しつつも画質に与える影響がほとんどないことだ。もともと画質に定評のある IXY シリーズとして、レンズシフト式を採用したのは順当といえる。キヤノンではこのレンズシフト式手ぶれ補正のことを「Image Stabilizer( IS ):イメージスタビライザー」と呼んでおり、IXY DIGITAL 800 IS の「 IS 」はこれを表している。
IXY DIGITAL 800 IS での手ぶれ補正の設定は、撮影モードでメニュー画面を呼び出して行う。他社では、本体の見えるところに手ぶれ補正ボタンを配置するモデルもあるが、ほとんどのユーザーは常に手ぶれ補正をオンのまま使っているので、メニューでしか設定できないとしてもそれほど不便は感じないだろう。
IXY DIGITAL 800 IS の手ぶれ補正モードは、3種類ある。「入」は、 常に手ぶれ補正が適用された状態で、液晶モニターでも効果の状態が確認でき、厳密に構図を決めたりするのに適している。「撮影時」は撮影の瞬間だけ補正され、「流し撮り」は上下のぶれの時のみ補正し、横方向に動いている被写体を追いかけるようなカメラの動きには補正されない。
手ぶれ補正モードの設定画面。左から「入」「撮影時」「流し撮り」のメニュー画面(上段)と、液晶モニターでのアイコン表示(下段)。
撮影時のほとんどにおいて手ぶれ補正をオンの状態で撮影をしていたが、手ぶれすることなく良好な結果が得られた。次ページのサンプルを参照して欲しいが、夜のイルミネーションを撮影する場合でも、ISO感度100に設定することで手持ちでも、ぶれることなく撮影することができた。
手ぶれ補正「切」での撮影(左)と、手ぶれ補正「入」での撮影(右)。
ただし、一般家庭の室内のような明るさの環境で、特にマクロ撮影の場合にはぶれてしまうことがよくあり、同じレンズシフト式を採用する他社のデジタルカメラよりも、ぶれることが多く感じられた。室内など光量が不十分に感じられる場合には、次に説明する高感度ISOも併用するとよいだろう。
次ページ「被写体ぶれに対応する ISO800相当の高感度ISOモード
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