リコーといえばハイエンドコンパクトデジカメといった、通好みのコダワリカメラを送り出しているメーカーとしての印象が強いが、今回はタフネスカメラの登場だ。しかもカジュアル路線のデザインで、意外に感じている人も多いのではないだろうか。カジュアルなマスクを纏いつつ、同社初となるタフネスデジカメが、どんな性能を秘めているのかレビューしていこう。
RICOH PX のボディデザインは「コンパクトデジタルカメラ」と聞いて頭に思い浮かべそうな、長方形に円いレンズを配したムダのないシンプルなデザインだ。特長のひとつでもある防水・防塵性能を備えているような、見るからに質実剛健なイメージは無い。特に今回お借りしたライムグリーンモデルはビビッドなカラーリングがオシャレで、海や山など夏のレジャーに栄えそうなカラーリングだ。表面は艶消しになっており、指紋が残らない。カラーはライムグリーン、シャンパンシルバー、ブラックがラインナップされている。
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前面は凹凸が無く、ほぼフラットだ。電源を入れてもレンズはせり出さず、レンズ駆動が全て内部にあるインナーレンズ構造になっている。グリップになる膨らみも一切無いため、片手で持つと落としてしまわないかと少し不安になることがある。また、グリップのような多少の膨らみでもあれば、構えたときに指の収まりがよい位置を探りやすいが、何もないためレンズやストロボの位置まで指が被ってしまうことが何度かあった。 |
今回はオプションのプロテクションジャケットもお借りできた。このジャケットはTPU(熱可塑性ポリウレタン樹脂)製で、シリコンに比べてやや固く装着しにくいが、ホコリが付きやすいシリコンとは異なりほとんど付かない。これを装着するとグリップ感はかなり高まる。ジャケットはホワイト、ピンク、ブルー、イエロー、ブラウンがあり、ホワイト以外は半透明になっているためカラーによりPXの印象が大きく変わる。下の写真はブラウンを装着している。RICOH PXの製品情報サイトではジャケットの違いによる色の見え方をシミュレーションできる「
ジャケット装着シミュレーター」が用意されているので、気になる方は購入前にチェックしておこう。
アクティブな環境ではカメラケースからの出し入れは煩雑になりがちだが、そのままではキズを付けてしまう可能性が高まる。本体の保護とシャッターチャンスに対応できるのが、このプロテクションジャケットだ。
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上部右には電源ボタン、シャッターボタン、ズームレバーがある。アクティブなシーンでの利用を想定してか、いずれのボタンも突起は最小限に抑えられている。その影響もあってズームレバーは小さく、左右に動かせる幅も小さいため、思い通りの画角へのズーミング操作には慣れが必要だ。 |
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反対側にはスピーカーとマイクがある。マイクは2つの穴が空いているが、音声はモノラル録音となっている。RICOH PXは動画撮影を重視するデジカメではないが、上部にマイクがあると撮影者の声が入りやすいので、被写体の音が拾いやすいようマイクは前面に付けて欲しかった。 |
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レンズは光学5倍ズームレンズを搭載し、35mmフィルム換算で約28mm〜約140mmに相当する。イメージセンサーは1600万画素、1/2.3型CCDを搭載する。可動式のレンズカバーはなく、防水・防塵のため保護ガラスを採用する。レンズ駆動が完全に内蔵されているため、砂や汚れが付いても水でサッと洗い流すことができる。
また、手ぶれ補正機能として、ぶれ幅を検知しイメージセンサーの動きで相殺するイメージセンサーシフト方式を採用する。 |
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モニター解像度は23万画素と、特に高解像度ではないが発色は良く見やすい。ただ、晴天下においてはやや見づらいので、ワンタッチで輝度をアップさせられるような機能が欲しかった。モニター表面はキズがつきにくいハードコート仕様になっている。 フラッシュダイヤルはレバーによって、フラッシュのオン・オフ・オートを切り替えやすい。屋内・屋外、日向・日陰など状況が変化するアクティブな状況で重宝するだろう。 |
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バッテリーとメモリーカードは本体の底面から挿入する。最大2GBのSDメモリーカードと、最大32GBのSDHCメモリーカードに対応し、Wi-Fi環境でファイルをワイヤレス転送できるEye-Fiカード(X2シリーズ)に対応する。SDXCメモリーカードには非対応だ。
本体には約40MBの内蔵メモリーが搭載され、最大サイズの16M(4608 x 3456 ピクセル)で約6枚、L判プリントサイズ相当の1M(1280×960ピクセル)で、約43枚の撮影が可能だ。
底面カバー内には、付属ケーブルを接続できるUSB・AV OUT端子が用意されている。また、HDMIマイクロ出力端子を備えている。HDMIマイクロケーブルは別途購入が必要だ。バッテリーの充電は本体にバッテリーをセットし、ACアダプタに接続したUSBケーブルを本体底面のUSB・AV OUT端子に挿して行う。また、パソコンのUSB端子からも充電することが可能だ。フル充電に必要な時間はコンセントの場合で約160 分、パソコンの場合で約240分となっている。 |
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RICOH PX の一番の特長はリコーのコンシューマー向けデジタルカメラとしては初となる、防水・防塵機能を備えている点だ。防水・防塵・耐衝撃デジタルカメラとしては土木・建築・工事現場や医療現場などでの利用を想定したモデルがかなり以前から発売されており、現在でも
G700、
G700SEがある。しかし、これらは基本的に業務現場での利用を対象としていた。
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RICOH PXが備える防水機能は水深3mで60分まで耐えられ、 JIS/IEC 防水保護等級8級、JIS/IEC防塵保護等級6級(IP68)に対応する。JIS/IEC防塵保護等級6級は本体内への粉塵の侵入がないことを表し、 JIS/IEC 防水保護等級8級は水中撮影用ハウジングと同等の水中での動作が可能だ。RICOH PXはハイビジョンムービー撮影にも対応しているので、高画質な水中動画撮影が可能だ。
また、電源オフの状態で、高さ1.5mからの落下テストもクリアした耐衝撃性能を備えている。高さ1.5mというと手にカメラを持っている状況に近く、ほぼ日常的な利用シーンに近い。底面のバッテリーカバーはゴムパッキンにより水やホコリの侵入を防ぐ構造になっている。カバーの開閉もスライド式のロックになっており、やや硬めで不用意に開くことは無さそうだ。 |
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バッテリー寿命がフル充電で約300枚(CIPA準拠※)の撮影が可能となっており、アウトドア環境でも、丸一日バッテリー交換なしでも活動できるだろう。水や砂などがある環境では、バッテリーカバーの開閉はできるだけ避けたいので、このバッテリー寿命は心強い。
※CIPA規格:カメラ映像機器工業会(Camera & Imaging
Products Association)が定める電池寿命測定方法についての統一規格。