「Optio」というと、手のひらにすっぽりと隠れてしまう Optio S シリーズを思い出すユーザーも多いだろう。小さく四角い同シリーズは少しずつデザインを変えながら、しかしその特徴であるコンパクトなボディサイズはほとんど変わることなく進化を続けてきた。
だが、サイズはともかく機能面で不満がなかったわけではない。それは手ぶれ補正への対応だ。他社が次々と手ぶれ補正機能を搭載したデジカメを投入してくる中、究極まで小型化されたボディに手ぶれ補正はなかなか搭載されてこなかった。ペンタックスファンは気をもんでいたことだろう。
今回取り上げる Optio A10 は、 Optio シリーズ 初の手ぶれ補正搭載モデルとなる。まさに万を期して登場したと言える。しかも、コンパクトな印象はそのままで、800万画素にアップ。画質面でもパワーアップが図られた意欲作だ。
まず、外観からチェックしよう。
Optio A10 の本体デザインは、従来のスクウェアな印象が強かった Optio S シリーズに比べ、全体的に丸みが増した。手に持った印象としては、適度な重量があり本体前面にグリップのような膨らみや出っ張りはないが、特に持ちづらいというようなことはない。
本体のサイズは、
Optio S6 と比較すると高さで3mm、幅で1mm、奥行きで 4mm 大きくなっており、構えたときには特に厚みが増えたなと感じられる。
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ただしそれは、あくまでも従来と比較して感じるところであって、 1/1.8 型CCD や手ぶれ補正が搭載されたことを踏まえると、十分納得できるコンパクトさだ。それら機能アップでサイズが犠牲になっていないのは嬉しい。同じ 1/1.8 型CCDで800万画素だが手ぶれ補正を持たないキヤノンの IXY DIGITAL 700 と比較しても幅、高さ、奥行きで1〜4mm 程度小さく、重量145gは800万画素モデルではかなりの軽量級だ。 |
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Optio A10 のカラーナインナップはシルバーのみ。アルミ製の本体カバーには艶消しの擦り加工が施され、明るい反射をともなう。またレンズ周辺部には、12面カットのダイヤモンドリングが施されている。
本体前面は Optio A10 の特徴的な機能を示す英字ロゴによるアピールが多いせいか、高級感があまり感じられない。「コンパクト」だが、「クール」や「スタイリッシュ」とは違う方向に行ってしまったように思う。800万画素を搭載するハイエンドモデルとしては、外観から醸し出す雰囲気にもう少し落ち着きがほしい。
レンズ部は S シリーズからの伝統でもあるスライディングレンズシステムを搭載している。これはレンズを収納する際に、構成されているレンズの一部をずらして収納する仕組みで、本体のスリム化に貢献している。レンズは光学で3倍、デジタルとの併用で最大12倍までズームが可能だ。 |
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また、左右の視野角(綺麗に見える角度)はある程度あるものの、上下の視野角は狭く、額の少し上あたりで構えても明暗が反転して見えづらい。人垣でカメラを高く構えたり、ペットの目線で低い位置で構えた場合には、液晶モニターが暗くなってしまい視認性はかなり落ちる。
ひと頃は、液晶モニターのサイズがポイントとなっていたが、次に解像度が競われ、現在では上下左右からの視野角の広さをアピールする傾向にある。 |
液晶モニターの視野角は購入時には見落としがちで、実際に使って気がつくと結構ガッカリしてしまう。同価格帯デジカメの2.5型液晶で解像度20万画素の液晶モニターと比較しても数値的には変わらないが、映りはいまひとつといった感じだ。
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Optio A10 の操作キーレイアウトは過去の Optio S シリーズとほぼ同様だが、機能アイコンがキートップに印刷されたことでキーサイズも大きくなり操作性がよくなった。
再生画像の確認は再生ボタンで切り替え、動画の撮影は [MODE] ボタンで表示される撮影モードの一覧から切り替える。
キーに機能の割り当てができる、グリーンボタンも健在。グリーンボタンは再生時の画像消去以外に、撮影時には [手ぶれ補正] [撮影設定クリア] [動画] のいずれかを割り当てられる。
さらに [Fn 設定] によって上下左右キーにも機能を割り当てることが可能で、初期設定の [手ぶれ補正] [画像サイズ] [露出補正] 以外にホワイトバランス、シャープネス、ISO感度、AFエリアなど好みの機能を割り当てることもできる。Optio A10 は。キー数が少なくメニューの呼び出しに数ステップ必要なところを、グリーンボタンでうまく解決している。 |
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上部には電源ボタン、シャッターボタン、手ぶれ補正プレビューボタンが並んでいる。従来の Optio
S シリーズに比べて奥行きが長くなったことにより、シャッターボタンのサイズも大きく押しやすくなっている。
バッテリーとSDメモリーカードは本体の底面から挿入する。バッテリーはフル充電で約150枚(CIPA準拠※)の撮影が可能。CCDサイズのアップやぶれ補正機能の搭載で本体の厚みが増しているので、できればバッテリー容量もアップしてほしかったが、容積的余裕がなかったのだろうか。できれば180〜200枚くらいまで撮影できるよう、がんばってほしい。 |
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※CIPA規格:カメラ映像機器工業会(Camera & Imaging
Products Association)が定める電池寿命測定方法についての統一規格。 |
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Optio A10 は、1/1.8型CCDを搭載し、画像サイズは [640] から [8M] まで7段階の利用が可能だ。画質は [S.ファイン] [ファイン] [エコノミー] があり、本体内蔵の約24MBのメモリーには、8M [S.ファイン] の設定で7枚の撮影が可能だ。
7段階の画像サイズは種類が多いようにも思うが、場合によってはメモリーカードの空き容量と照らし合わせながら、できるだけ高画質で撮影したい時には、選択肢の多さに助けられることもある。ただし、画像サイズの違いによるプリントサイズがわかりづらい。初心者は必要以上に高画質で撮影してしまいメモリーを無駄に消費してしまう可能性もあるので、ガイド表示などでのフォローがほしい。
フレームが合成できる
[フレーム合成] モードでは 3M に固定される。 |
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起動時間は約2秒ほどで特に遅いわけでもなくレンズのせり出しも高速だが、液晶が表示され撮影可能になるまで少し待たされる「間」を感じるのが気になる。それ以外のレスポンスで気になるところはなかった。
今回のモデルチェンジのポイントは、手ぶれへの対応だ。他社の手ぶれ補正方式には、パナソニックの LUMIX シリーズに代表される、ぶれ幅をレンズ駆動で補正する「光学方式」や、富士フイルムの FinePix シリーズ、カシオの EXILIM シリーズに見られる ISO 感度のアップによる「高感度方式」などがある。
Optio A10 で搭載されたのはそのどちらでもなく、「SR(Shake Reduction:シェイクリダクション)」と呼ばれるペンタックス独自の「CCDシフト方式」だ。
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CCDシフト方式による手ぶれ補正の仕組みはこうだ。
Optio A10 の CCD は小さな2つのモーターによって、水平垂直方向に移動できるようになっている。ぶれが起きると本体内部に搭載されている2つのジャイロセンサーがぶれ幅を関知し、補正すべき情報をそのモーターに伝えて CCD を移動させてぶれを相殺する。
CCDを移動させるとは大胆な方法のように感じるが、撮影時に特別変わった感覚はない。
手ぶれ補正の効果は絶大で日常的な撮影において、手ぶれすることはほとんどなかった。ISO 感度アップによる補正と違ってノイズの発生がないのはもちろん、光学方式に比べて画質が劣るとか、反応が悪いということもない。
本体上部には、補正の効果を確認できる「手ぶれ補正プレビューボタン」がある。普通は撮影時の瞬間に補正が行われるので効果がわかりづらいが、このボタンを押し続けている間は、ぶれが補正されている状態を液晶モニターで確認することができる。その際、内部で駆動しているモーターの振動をわずかに感じることができる。 |
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「手ぶれ補正プレビューボタン」は撮影前に液晶モニター上で効果のほどを知ることができるので、構図を決める段階でもぶれを補正できるが、日常の撮影においては手ぶれ補正のオン・オフで良かったのではないか。もっというとほとんどユーザーは、手ぶれ補正を常にオンの状態で利用しているので、それすら必要ないかもしれない。ちなみに手ぶれ補正のオン・オフは、撮影メニューで設定する。