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IXY 30Sの撮影モードの切替は本体上部のスライドスイッチで行い、シーンを自動判別する「AUTOモード」と、シーン設定やシャッター・絞り優先など細かな設定が可能な「撮影モード」、さらにハイビジョン動画の撮影もできる「動画モード」を利用できる。
「AUTOモード」は人や風景など被写体を判断して最適な撮影モードを自動設定する機能で、被写体が変化するたびに設定を変える必要がないため、最も使い勝手のあるモードといってよいだろう。キヤノンではこの機能を「こだわりオート」と呼ぶ。 |
「こだわりオート」はその名の通り、風景や人物のほか、明暗、青空を含む・含まない、マクロなど判別材料は多岐にわたり22シーンに分類する。ストロボ発光でも被写体に応じて発光量を調整し、逆光時の自動発光や近距離撮影時の白飛びを押さえてくれる。実際に「こだわりオート」を試した感触では、近接撮影時に一瞬、風景モードが選択されるなど、状況によっては期待したシーンモードとは異なるものを選択することが時々あった。最終的には最適なシーンモードに設定されるのだが、若干判断に遅れがあるように感じられたので、もう少し精度と速度を高めて欲しい。
「撮影モード」はマニュアル設定が可能な [プログラム] [Av] [Tv] と、シーンモードとして [ポートレート] [ナイトスナップ] [キッズ&ペット] [パーティー/室内] [オートシャッター(スマイル、ウインクセルフタイマー、顔セルフタイマー)] [ハイスピード連写] [ローライト] [ワンポイントカラー] [スイッチカラー] [魚眼風] [ジオラマ風] [ビーチ] [新緑/紅葉] [スノー] [打上げ花火] [スティッチアシスト] が利用できる。
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中でもユニークなのが [ハイスピード連写] だ。IXY 30Sではプログラムモードの連写で約3.7画像/秒の連写が可能だが、このモードを使えば最高約8.4画像/秒の撮影ができる。他社には1秒間で数十枚撮影できる超高速撮影ができるモデルもあるが、日常的な撮影ではIXY 30Sのハイスピード連写でも充分だろう。スポーツはもちろん子供やペットの撮影など、一瞬を捉えた面白い写真を撮ることができる。ハイスピード連写の時は、画像サイズが2.5Mサイズ(1824×1368ピクセル)に固定される。 |
魚眼風による撮影 |
ほかにも魚眼レンズで撮影したようなデフォルメ効果が得られる [魚眼風]、ピントの合う範囲が極端に狭く、ミニチュア模型を撮影したような効果が得られる [ジオラマ風] など、遊べるモードが用意されている。 |
IXY 30Sの動画モードでは1280×720ピクセル、30fpsのハイビジョン動画の撮影が可能だ。撮影中はAFが働き光学ズームも利用可能で、動画はMOV形式で記録される。映像の印象は静止画の品質が高いIXYらしく、とてもクリアで安定した映像が得られる。
レンズの左右にマイクを内蔵する |
レンズの左右にマイクがあり、音声をステレオ記録できる。このクラスのコンパクトデジカメでハイビジョン動画の撮影ができるタイプでも、音声はモノラルが多くマイクも上部に内蔵され、被写体よりも撮影者の声をよく拾ってしまうケースが少なくない。その点、前面にステレオマイクが付くIXY 30Sで撮影された動画は、音の移動感がよく伝わる。ハイビジョン動画の撮影ではファイル容量で4GB、時間で10分に至ったところで自動的に撮影が終了する。これはファイル管理の仕様によるものだ。 |
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また動画モードでは、240コマ/秒のハイスピード撮影もできる。これは1秒を240コマの連続する静止画として記録し、それを再生時には1秒30コマとして再生することで、1秒の出来事を8秒に引き延ばした超スローモーションの世界が再現できる。水滴が落ちる瞬間や風船が割れる瞬間など、肉眼では決して見ることができない世界を記録することが可能だ。ハイスピード動画では音声は記録されず、画像サイズは320×240ピクセル、記録時間は最大30秒となっている。ピントは撮影スタート時の位置に固定されるので、動きの激しい被写体ではうまく捕らえられないケースもある。 |
ムービー サンプル(MOV形式) |
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ハイビジョンムービー
画像サイズ 1280×720(ファイルサイズ:45.1MB) |
ハイビジョンムービー
画像サイズ 1280×720(ファイルサイズ:31.06MB) |
ハイスピード動画
画像サイズ 320×240(ファイルサイズ:16.59MB) |
※動画再生環境に関する質問にはお答えできません。 |
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IXY 30Sは電源オフの状態から、背面の再生ボタンを押して再生モードとして起動できる。画像の検索方法はズームレバーによる一覧表示の切り替えのほか、コントローラーホイールの回転操作による切り替え、撮影時のモードカテゴリーによる絞り込みなどが行える。ズームレバー、コントローラーホイールの利用による画面の反応は非常に良く、撮影済みの画像がたくさんある場合でもスムーズに表示を切り替えることができる。 |
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再生モードのユニークな機能に「連想再生」がある。これは、ある1枚の画像を選択すると、その画像内容から連想される4枚の画像が自動的に選ばれる機能だ。その4枚の中から上下左右キーで1枚を選ぶと、さらにその画像から連想される4枚がまた表示されて画像の連鎖が続いていく。何を基準に選び出しているのか詳しくはわからないが、同じ被写体のバリエーション違いの画像が表示されることもあれば、思いがけない画像が表示されることもある。実用的な機能とはいえないが、画像閲覧の楽しみが広がる機能だ。 |
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IXY 30Sには専用リチウムイオンバッテリー NB-6L と、コンセント直結タイプのバッテリーチャージャーCB-2LYが付属する。バッテリーは約1時間55分でフル充電可能で、フル充電の状態から約250枚(CIPA準拠※)の撮影ができる。CMOSセンサーはCCDに比べると電力消費量が低いといわれるが、CCDを採用する従来の同等モデルと比較しても、撮影枚数は約1割程度アップしているだけで、さほど極端な差は表れていないようだ。 |
※CIPA規格:カメラ映像機器工業会(Camera & Imaging
Products Association)が定める電池寿命測定方法についての統一規格。
IXY 30Sの特長的な機能を中心にレビューしてきたが、F2.0の明るいレンズと裏面照射型CMOSセンサーの採用など、IXY 30Sは次のトレンドとなりつつある機能をいち早く取り入れた非常に力の入ったモデルであることがわかる。
そもそも「明るいレンズ」という表現は、少し前までそれほど一般的な言葉ではなく、特にコンパクトデジカメの世界で用いられることはほとんど無かった。同じくキヤノンのPowerShot S90もF2.0のレンズを搭載するが、こちらは画質にこだわるハイエンドモデルとして存在する。それがカジュアルラインのIXY 30Sにも搭載されたことは注目すべき点だろう。これは「広角」や「手ぶれ補正」などの機能が、フラッグシップモデルからその下のモデルまで幅広く広がっていった状況と似ており、今後のデジカメ選びでは「明るいレンズ」が1つのキーワードになるかもしれない。
同様に裏面照射型CMOSセンサーも、他社も含めた高機能モデルへの搭載が始まっており、ここ1年ほどで注目度が急上昇している機能だ。高感度でもザラッとしたノイズ感が抑えられ、従来との違いは撮ってすぐに実感できるだろう。また、CMOSセンサーが得意とする高速読み出しによる、ハイスピード連写・動画も撮影の楽しみが広がる楽しい機能だ。
気になるのは一部の操作で戸惑いを感じたところだ。本編でも触れたように、背面のコントローラーホイールは上下左右方向キーとしての機能も割り当てられているが、それが記されておらず操作に迷うことがあった。背面もスッキリとしたデザインはクールではあるが、デザイン性を優先させて割り切りすぎたように思われる。
それら気になる点はあるものの、IXY 30Sは今後のコンパクトデジタルカメラに搭載されて行くであろう先進機能を先取りしており、これから新製品が登場しても大きな不満を感じずに使い続けることができるだろう。