キヤノン IXY 32S レビュー

カメラが被写体に自動でピントを合わせる「主役フォーカス」

最近のコンパクトデジタルカメラでは人物や風景、マクロなど被写体を判別して最適なシーンモードを設定するシーン自動判別機能の搭載が進んでいる。そして、IXY 32Sでも「こだわりオート」と呼ばれる同様の機能を搭載する。上部のモードスイッチは通常の撮影モードと「こだわりオート」の切り返しかなく、ほとんどの状況で「こだわりオート」で対応できるとの意図が感じられる。
「こだわりオート」は風景や人物のほか、[人物の動き] [顔の一部が暗い] [人以外の動き] [青空を含む] など被写体の違いを細かく判別し、32シーンに分類する。さらにIXY 32Sではカメラが主役となる被写体までも自動で判断する「主役フォーカス」を搭載する。これはカメラを向けると、画面上から主役と思われる被写体に自動でフォーカスフレームが表示され、ピントと露出を合わせ続ける機能だ。試しに子供やネコで撮影してみたところ、それら被写体が動いていても、動きが止まってもフォーカスフレームが追尾し続けていた。
そして気に入ったところでシャッターボタンを押せば、すでにピントと露出は合っているため、タイムラグもほとんどなくシャッターチャンスを捉えることができた。また、風景の場合でも画面の中心、もしくは画面内で多くの面積を占める被写体に、自動的にフォーカスフレームが表示された。状況によっては意図しない箇所を主役として判断してしまうこともあったが、子供やペットなど動きのある被写体の場合は比較的、的確に主役を見つけることができた。ただ、人物が複数人居る場合は、主役と判断する第一候補と他の人物に複数のフレームが色違いで表示されるため、ファインダー上が少しうるさく感じることもある。動いている被写体のシャッターチャンスを逃したくないとき、静かな風景を落ち着いて撮りたい時など状況に応じて使い分けることも必要だろう。

裏面照射型CMOSセンサーと映像エンジン「DIGIC」による高感度撮影

「こだわりオート」のようなシーン自動判別機能で気になるのが、ISO感度の設定だ。特に夜景や光量が不足しがちな状況では。手ぶれを防ぐため思った以上の高感度に自動設定されるケースもあり、ノイズが多くて鑑賞に堪えられないといったことも起こりがちだ。IXY 32Sでも自動でISO1600まで自動でアップされるが、裏面照射型CMOSセンサーと映像エンジン「DIGIC」によりノイズ低減を実現している。裏面照射型CMOSセンサーは従来は受光部の前面にあった配線部を、受光部の後面へ配置することにより受光量をアップし高感度撮影が有利になった。

ISO1600:画面全体

ISO1600:部分拡大(等倍)
夜の街で試しに撮影したところ、さすがにクッキリというわけにはいかず、ぼやけはあるものの高感度に特有のザラつきは抑えられている。L判サイズのでのプリントや、ブログ掲載用に縮小して少しシャープネスを加えるなど、用途によっては充分利用できるレベルだ。

1920×1080ピクセルのフルハイビジョン動画撮影に対応


動画ボタン(赤丸)をタッチして
撮影スタートとなる
IXY 32Sの動画モードでは1920×1080ピクセル、24fpsのフルハイビジョン動画の撮影が可能だ。つい数世代前までコンパクトデジタルカメラのハイビジョン撮影は1280×720ピクセルがほとんどだったが、あっという間にフルハイビジョンまでアップし、それが当たり前となりつつある状況には驚かされる。
IXY 32Sではモードスイッチに動画モードの切替はなく、モニター上の動画撮影ボタンを押せば、即座に撮影がスタートする。動画モードでも被写体を自動判別する「こだわりオート」が利用可能で、21シーンに分類される。動画撮影中でも最大4.4倍の光学ズームが可能だ。また、コンパクトデジタルカメラではモノラル録音が多い中、IXY 32Sの前面にはステレオマイクを内蔵し、音声はステレオ録音が可能だ。
動画ファイルの記録形式はMOV形式で、テレビやビデオレコーダーよりも、パソコンやタブレット端末での再生に適している。テレビで視聴したい場合は動画ファイル単体で扱うよりも、IXY 32S本体にHDMIケーブルを繋いで直接再生する方が便利だ。

本体前面にステレオマイクを内蔵

撮影サンプル

オート
シャッタースピード 1/125秒、F2.8、ISO100

オート
シャッタースピード 1/800秒、F2.0、ISO320。
プログラム
シャッタースピード 1/6秒、F2.0、ISO100。

オート
シャッタースピード 1/80秒、F2.8、ISO100

オート
シャッタースピード 1/640秒、F2.8、ISO160。
オート
シャッタースピード 1/640秒、F2.8、ISO250。

シーンモード [ジオラマ風]
シャッタースピード 1/100秒、F4.5、ISO200

オート
シャッタースピード 1/320秒、F2.8、ISO100。
オート
シャッタースピード 1/125秒、F2.8、ISO160。
ムービー サンプル(MOV形式)
 
フルハイビジョンムービー
画像サイズ 1920×1080(ファイルサイズ:50.35MB)
ハイスピード動画
画像サイズ 320×240(ファイルサイズ:10.6MB)
 
※動画再生環境に関する質問にはお答えできません。

タッチ操作が活かせる再生モード

このページのコンテンツには、Adobe Flash Player の最新バージョンが必要です。

Adobe Flash Player を取得

再生モードでもタッチ操作は活用できる。電源オフの状態から、背面の再生ボタンを押して再生モードとして起動できる。再生モードでは画面にタッチすると、その部分が拡大表示され、さらに続けてタッチすると拡大表示が繰り返される。左右へ指を滑らせると次の画像を表示できるが、タッチの具合によっては拡大表示と判断されることもあり、少々の慣れが必要だ。それとは別にボディの右側面を指でトンッと叩くことでも次の画像へ切り替えることができる。
サムネール表示の切替もタッチ操作で可能で、表示のレスポンスは高速でストレスがない。サムネールの一覧表示は3×2、4×3、8×6、13×10と多段階で切りかができる。

フル充電で約180枚の撮影が可能

IXY 32Sには専用リチウムイオンバッテリーNB-6L と、コンセント直結タイプのバッテリーチャージャーCB-2LYが付属する。バッテリーは約115分でフル充電可能で、フル充電の状態から約180枚(CIPA準拠※)の撮影ができる。スペック的には前モデルのIXY 31Sとほぼ同じだ。タッチパネル非搭載の二世代前のIXY 30Sに比べると、撮影枚数が約250枚から大きく減っている。タッチパネルの採用や「主役フォーカス」により被写体にピントを合わせ続けるとレンズ駆動が常に行われるため、消費電力が大きくなると思われる。
※CIPA規格:カメラ映像機器工業会(Camera & Imaging Products Association)が定める電池寿命測定方法についての統一規格。

総論:新しい撮影体験を提供してくれる「タッチシャッター」が秀逸

ここ2年ほどの間にコンパクトデジタルカメラでも、タッチパネルを採用するモデルが徐々に増えてきた。登場した当初は各社とも取り入れては見たものの、指先の反応がイマイチであったり、メニュー操作の一貫性が保たれていなかったりと、中途半端に感じられるものも少なくなかった。それがここにきて、タッチ操作の良さを引き出せるほどに充実してきたモデルも増えてきた。

IXY 32Sに関して言うならタッチでシャッターが切れる他社のデジカメとは異なり、タッチパネルから指をリリースした際にシャッターが切れるところは独特で、ほかにはないシステムだ。単にリリースしてシャッターが切れるだけでなく、指を離さなければピントと露出を合わせ続けるため、シャッターチャンスを「狙う」意識がとても強く働く。例えば子供の表情を狙っているときは、指でモニターをタッチして「狙って〜、狙って〜、パッと離す!」という感じで、従来とは違った撮影体験が新鮮で面白い。特に子供やペットを撮影することが多いユーザーなら、「タッチシャッター」のメリットを感じられるだろう。

タッチパネル以外でも32シーンに対応する「こだわりオート」やカメラが目的の被写体を判断する「主役フォーカス」など、シャッターチャンスを逃さないための、技術的なことを考える必要がほとんどない。本当の意味でフルオートと呼べるレベルまで進化しているし、その分、被写体となる人やペットに声をかけることで、これまでにない表情を引き出すことができる余裕を手にすることもできる。

このように最新のデジカメ技術が凝縮されているIXY 32Sだが、タッチパネルに象徴されるように機械が苦手な女性にも難しくなく、指先でスマートに扱うことができるデジタルカメラだ。

H-lab:山地啓之)
 キヤノン [ http://canon.jp/ ]
 IXY 32S
 価格:オープンプライス 最新価格を調べる >>
 発売日:2011年8月4日
  1 / 2
ページのトップへ▲
デジカメの基本から撮影転送編集プリント活用法を幅広くご提供する“カシャリ!”