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シーンモードはデジタルマクロ、ポートレート、ナイトスナップ、キッズ&ペット、パーティ、新緑/紅葉、スノー、ビーチ、打上げ花火、水中が用意されている。15〜20数種類が用意されている他社のデジカメに比べると、モード数が控えめなのと季節感を重視したモードが多い。それら季節感のあるモードを除けば、日常的に使えるモードが少なく物足りない印象を受ける。 |
それらモードを利用する場合でも、キッズ&ペットモードを選択して、さらにメニュー操作が必要で少し面倒だ。人によっては、キッズ&ペットモードの奥にさらにモードがあることに気付かないユーザーもいるかもしれないので、できればシーンモードが一覧できるか、スクロールされると判りやすい。
撮影モードの中でもユニークなのが、マイカラー機能だ。これは色彩の表現を自分好みに変換できる機能で、モノクロやセピアのように画面全体を変えてしまうのではなく、ある色彩に対してだけ影響を与えることができるものだ。設定には人物の肌を色白にする
[色白肌] 、空や海などの青を鮮やかにする [あざやかブルー]、さらに特定の色を違う色に置き換える [スイッチカラー] や特定の色以外をモノクロにする
[ワンポイントカラー] などもある。
これらは撮影後の画像に対して処理するのではなく、変換を施した状態で撮影するもので、撮影前にはモニター上で変換の様子を確認することができる。
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マイカラー機能、[あざやかブルー]によって、空の青さを鮮やかにして撮影。一緒に映っている壁は影響を受けずに、くすんだ空がヌケのよい青色で撮影できた。(写真右) |
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マイカラー機能、[ワンポイントカラー]によって、特定の色以外をモノクロにして撮影。(写真右) |
シーンモードは他社でもモードを変えたとしても内部的な設定は大きく変わらない場合もあって、モード数が多ければよいというわけでもないが、15、20数種類のモードがあると「いろんなシーンに使えて、撮影する機会も増えそう」と楽しさを感じさせる。IXY
DIGITAL 60 にも、もう少し手軽さや使う楽しさを感じさせる部分が前面に出てきてもよいと思う。
いっそのこと、これらマイカラー機能ももっと前面に出してもよいのではないか。現状では [色白肌]
を使おうと思えば、マイカラーモードからさらに操作が必要なので、使って貰える機会も少ないように思う。シーンモード一覧に追加すれば見つけやすく、使う機会も増えるのではないだろうか。
通常の撮影モードでの最短撮影距離は30cmだが、マクロモード時は3cmまで近づくことができる。さらにデジタルマクロを利用することで、より近づいての撮影も可能だ。これはデジタルズームに似ていて、画面の中央部分を拡大処理するもので若干の画像の劣化を伴う。撮影時に液晶モニターに映し出されるプレビュー状態は劣化が激しいが、撮影した画像はそこまでの劣化は起きないので、ホームページなど用途によっては十分利用できる。
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また、最大で15秒までの長時間露光も可能だ。他社デジカメでも夜景モードを備えるのは多いが、10秒以上の露光が可能な機種はそれほど多くはない。
IXY DIGITAL 60 の場合は夜景モードであるナイトスナップモードとは別に、マニュアル撮影の設定画面で [長秒時撮影] をオンにしておくことで、1〜15秒までの設定が可能だ。
1.3秒以上の撮影では暗部のノイズを抑えるノイズリダクションが働く。 |
[長秒時撮影] で、2.5秒に設定。 |
IXY DIGITAL 60 の画素数は、前モデルである IXY
DIGITAL 55 から変わらず、1/2.5型で有効500万画素のままだ。すでに500万画素でも不満がないレベルに達していることは多くのユーザーも理解しているし、より高画素を求めるなら上位機種で1/1.8型で有効710画素CCDを搭載する
IXY DIGITAL 700 をどうぞ、ということなのだろう。
600万画素のデジカメに比べると数値的なピクセル数の違いがあるので、画像の細かさでは負けるかもしれないが、素材感の違いや遠近のボケによる位置関係の違いも表現できる描写力を持っている。ノイズの発生も少なく、色の再現性においても特定の色が強調されるような傾向もない。このクラスのコンパクトデジカメでは、画質に関して申し分のない力を持っているといえる。
注意すべき点として IXY DIGITAL 60 は手ぶれ補正機能を持たないので、光が不十分な室内や日暮れ時では手ぶれしやすい傾向にある。液晶モニターには手ぶれ警告が表示されるので、ISO感度をアップしたりストロボを使うことでの対処が必要だ。
※CIPA規格:カメラ映像機器工業会(Camera & Imaging
Products Association)が定める電池寿命測定方法についての統一規格。
今回、液晶モニターが2.5型に拡大されたことで、液晶サイズでは他社と肩を並べたと言って良いだろう。気になるのはバッテリーと手ぶれ補正だ。
バッテリーに関してはフル充電で約150枚の撮影枚数で、実用上不便を感じることは少ないかもしれないが、他社が200枚を超えて長寿命をアピールしている現在では心細く感じる。泊まりがけの旅行なら予備のバッテリーを用意すべきか迷うところだ。4,000円前後のバッテリーを購入すると出費も増えるので、電源容量をアップして本体価格が少しアップするするくらいならその方が携帯の面でもよいのではないか。
手ぶれ補正に関して、キヤノンでは
PowerShot
S2 IS がレンズシフト式による手ぶれ補正を搭載しているが、他のモデルにはなかなか採用を広げず、上位モデルの
IXY DIGITAL 700 でも搭載していない。本体サイズがコンパクトな IXY DIGITAL シリーズではレンズシフト式を搭載するには時間がかかるのかもしれない。かといって、ISO感度アップによる手ぶれ補正ではノイズの発生を伴うので、画質へのこだわりから採用を見送っているようにも思われる。
などと見ていくとバッテリーや手ぶれ補正、シーンモードなど他社のデジカメに比べると機能面で物足りない部分がいくつかあり、液晶モニターのサイズも含め搭載してくるタイミングが少し遅れ気味な印象も受ける。IXY DIGITAL 60 の高い描写力にそれら機能が搭載されれば、かなり強力なモデルとなるので今後に期待したい。現状では店頭価格が3万円台半ばと、他社のそれら機能を搭載する機種と比較すると約1万円ほど低くなっているので納得できるところか。逆に画質面では他社をリードしているので、デザインと携帯性、画質へのこだわりを重視するならオススメだ。