キヤノン IXY DIGITAL 910 IS レビュー

撮影モード、再生モードで活かされる顔検出機能、フェイスキャッチテクノロジー

IXY DIGITAL 910 IS には撮影および、再生時に人物の顔を検出してくれる「フェイスキャッチテクノロジー」が搭載されている。撮影時には顔にピントを合わせる「顔優先AF」、顔が最適な明るさになるよう明るさを調整する「顔優先AE」、ストロボ発光時に明るすぎて顔が白くならないよう発光量を調整する「顔優先FE」が働く。
顔検出機能の利用は、設定メニューから [AFフレーム] で、[顔優先] を選ぶと働き、カメラを向けるだけで、顔を検出して白い枠が表示される。
このとき人物が動いたり、構図を変えようとカメラを動かしても白い枠はスッと顔に吸い寄せられるように追随する。そしてシャッターの半押しで、グリーンの枠に変わり撮影となる。フェイスキャッチテクノロジーでは、最大で同時に9つまでの顔を検出可能だ。
他社でも顔検出機能を搭載するデジタルカメラは多いが、常に枠が吸い寄せられるように顔へ追随するのは IXY シリーズの特徴で、その動きを見ていても面白い。
AFフレームを顔優先に設定していても、物や風景など人物以外を撮影する場合は、9つのフォーカスポイントから自動でピントを合わせる、9点測距 AiAF が働く。
再生モードでは画像内の任意の場所を拡大して確認できる「フォーカスチェッカー」が搭載されており、人物の場合は顔を検出し拡大表示してくれる。
複数の人物が写っている場合は、それぞれの顔に枠が表示されるので、[SET] ボタンを押すと拡大表示させる顔を順番に切り替えることができる。目つぶりや表情の確認のために、ズームや画面移動の操作にキーを何度も押す必要がない。
ストロボ発光による赤目への対応としては、撮影時にレンズ上部のオートフォーカス補助光のランプが赤く点灯して目を慣れさせる「赤目緩和機能」と、再生モードの画像補正として「赤目補正機能」がある。

レンズシフト式手ぶれ補正、最高感度 ISO1600でブレを防ぐ

IXY DIGITAL 910 IS は手ぶれへの対応として、レンズシフト式の手ぶれ補正機能を搭載している。レンズシフト式は、撮影時のぶれ幅をセンサーが感知し、レンズ駆動によりぶれ幅を相殺する手ぶれ補正機能で、画質に影響を与えないのが特徴だ。

[手ぶれ補正:切]

[手ぶれ補正:入]

[ISO感度:1600]
被写体ぶれには、最高感度 ISO1600 の利用が可能で、速いシャッタースピードでの撮影を可能とし、被写体のぶれを防ぐ。こちらはISO感度のアップに伴いノイズが発生する。
ノイズの発生を踏まえると、日常的に利用できるのは ISO400 までで、ペットや子供の動きを静止した状態で撮影したい場合に ISO800 を利用。ISO1600 ではかなりノイズが多くなるため、ノイズが目立たないよう縮小してブログに載せるなど、特別な目的での利用と考えた方がよいだろう。
また、撮影モードで ISO 感度を[AUTO] もしくは [80] [100] [200] [400] に設定していると、「ISOブースター」が利用できる。これはシャッター半押しの際に、手ぶれしそうな環境であれば、自動的にISO感度をアップする機能だ。アップする感度は ISO125、320、500 など、任意で選べる設定よりも段階が細かく、画質への影響はできるだけ抑えられている。ISOブースターは、ISO800 以上に設定している時や、シーンモードでは利用できない。

IXY シリーズ唯一の、広角28mmを搭載

カメラのレンズには「焦点距離」というのがある。これはレンズの中心点からレンズが像を結ぶ点(焦点)までの距離をことを指し、「mm」で表す。この距離が長いほど被写体は大きく写り(望遠)、短いほど小さく写る(広角)。デジタルカメラはCCDのサイズによって焦点距離が異なるので、35mmフィルムの焦点距離に換算して表す。
一般的なコンパクトデジタルカメラの焦点距離は35mmだ。IXY DIGITAL 910 IS が採用する 28mm は 35mm と比較すると、被写体に対して距離を取れない狭い室内や、風景写真でもワイドで広がりのある撮影が可能だ。広角での撮影に慣れると、標準的な 35mm での撮影は物足りなくなる不思議な魅力がある。

[光学1倍:広角28mm(35mmカメラ換算)]

[光学1倍:35mm(35mmカメラ換算)]
広角 28mm はコンパクトデジタルカメラでは、パナソニック LUMIX シリーズでの採用が話題を呼んだが、現在でも採用しているコンパクトデジタルカメラはさほど多くなく、IXY DIGITAL 910 IS も現在の IXY シリーズでは唯一の広角モデルとなる。
ズームはレンズ駆動による画質劣化のない光学3.8倍を採用し、画像を拡大処理して望遠効果が得られるデジタルズームとの併用で、最大約15倍に対応する。ただしデジタルズームは、拡大処理によって画質に劣化が伴う。

[光学3.8倍:105mm(35mmカメラ換算)]
また、記録サイズは小さくなるものの、CCDの中央部分を切り抜き、高画質な望遠効果が得られるズームも利用可能だ。これは画像編集ソフトで画像の中心部分を切り抜くのと同じで、画像サイズが小さくなるだけで、極端に画質が落ちるわけではない。
これら3つを併用する場合は光学ズーム域から画像の切り抜きによるズーム域と、劣化を伴うデジタルズーム域とでは一旦ズームの動きが停止する「セーフティーズーム」を採用している。
つまりズーム操作の際に、ここから先の望遠は極端に画質へ影響がでますよ、という範囲を教えてくれるわけだ。
さらに、レンズに装着することで望遠効果が得られる、テレコンバーターをデジタルで再現した「デジタルテレコン 1.6x」「2.0x」も搭載されている。本来のテレコンバーターはレンズに装着するため、レンズの明るさが落ちるが、デジタルテレコンはデジタルズームの倍率を、1.6 または 2.0 に固定して、CCDの中央部分を切り抜くことで望遠効果を得ているので、レンズの明るさが低下せず、手ぶれしにくい特徴がある。
ただ、「テレコン」という言葉自体、一般ユーザーには馴染みが薄いので、その用途と特徴が伝わりにくいかもしれない。「○○ズーム」といった、特別なネーミングを与えた方が理解しやすいように思う。

撮影サンプル

マニュアル [遠景モード]
シャッタースピード 1/160秒、F9.0、ISO80

マニュアル [マクロモード]
シャッタースピード 1/200秒、F2.8、ISO80。
マニュアル [マクロモード]
シャッタースピード 1/320秒、F8.0、ISO80。

カテゴリーやフォルダ分類、検索が可能な再生モード

電源オフ時でも、背面の再生ボタンを押すことで再生モードとして起動することができる。

再生モードでは、3.0型液晶モニターの大きさを活かし、詳細な撮影データの表示が可能だ。
[DISP.] ボタンを押すと、中心部分を拡大表示する、「フォーカスチェッカー」に切り替えることができる。

再生モードではズームレバーの操作により、9枚までのマルチ表示が可能だが、せっかくの大型液晶モニターを活かして、16、20枚などより多くのマルチ表示があってもよいと思う。

画像は日付単位やフォルダ単位で検索することが可能で、あらかじめカテゴリーで分類することもできる。「自動カテゴリー」機能は撮影モードの種類によって、自動で分類してくれる機能だ。例えばポートレート、ナイトスナップ、キッズ&ペット、もしくは顔検出された画像は人物カテゴリーに登録、というようにスペシャルシーンモードの種類によって自動で振り分けてくれる。
画像指定、ファイル番号の範囲指定で任意にカテゴリー登録することも可能だ。
スライドショーでは、日付、カテゴリ、フォルダ単位で再生することができる。
編集機能は、赤目補正、リサイズのほか、撮影時のマイカラー機能と同様に、セピアやモノクロ、コントラストの強調など色調を変化できる [レタッチマイカラー] が利用可能だ。

画素数、液晶モニターサイズアップでも、撮影可能枚数270枚は変わらず

IXY DIGITAL 910 IS には専用のバッテリー NB-5L と、コンセントに直結するコンパクトなバッテリーチャージャーが付属する。
約2時間5分でフル充電が可能で、約270枚(CIPA準拠※)の撮影ができる。画素数がアップし、液晶サイズが大きくなったが、前モデルと撮影可能枚数に変更がないのは嬉しい。
メモリーカードは32MBのSDカードが付属するが、携帯しないことも多いので、できれば内蔵メモリの方が利用する機会はあるように思う。
IXY DIGITAL 910 IS は、光学ファインダーを搭載しないので、液晶非表示での撮影はできないが、プリンターマークのイージーダイレクトボタンに節電のためのディスプレイオフ機能を割り当てて、電源オフではなく一時的に非表示にすることができる。
このようにイージーダイレクトボタンには、露出補正やホワイトバランスなどをワンタッチで呼び出せるよう、機能を割り当てることができる。
本体の他に、32MB SDメモリーカード、USBケーブル、バッテリー、バッテリーケース、バッテリーチャージャー、AVケーブル、ストラップ、ソフトウェア、説明書が付属する。
※CIPA規格:カメラ映像機器工業会(Camera & Imaging Products Association)が定める電池寿命測定方法についての統一規格。

総論:全部入りと言えるほど、満足度が高い一台

IXY DIGITAL 910 IS の特徴的な機能を中心に紹介してきたが、広角28mm、大型液晶モニター、顔検出機能、手ぶれ・被写体ぶれ補正など、全部入りと言えるほど機能面での満足度は高い。
前モデルから見た目はガラッと変わったが、内容的には正統な進化を遂げたといえる。

もともと画質面でも評価が高い IXY シリーズだが、IXY DIGITAL 910 IS でもキヤノンらしいクリアな画質は健在だ。画像処理エンジンは DIGIC III を搭載し、発色もナチュラルで描写もシッカリしている。IXY DIGITAL 910 IS は、前モデルから CCD サイズはそのままで、画素数が約100万画素アップしているため、ノイズの発生を気にするかもしれない。全く同一条件で撮り比べたわけではないので厳密ではないが、日常的な利用で気になるほどの差はないだろう。

今回のモデルチェンジで IXY シリーズのラインアップも判りやすくなった。光学手ぶれ補正を搭載するモデルの中なら、CCDサイズが大きく高画質な IXY DIGITAL 2000 IS、光学ズーム4倍の IXY DIGITAL 810 IS、そして広角28mmで液晶サイズが大きい IXY DIGITAL 910 IS という具合だ。
購入に際しては、数ヶ月先に発表され価格がこなれてきている IXY DIGITAL 810 IS と迷うところで、広角か望遠か、液晶のサイズ、デザインの違いが決め手になるだろう。

もう少し望遠側が長ければと欲を言えばキリがないが、それ以上に満足できる部分が多く、IXY DIGITAL 910 IS は、現在のコンパクトデジタルカメラの中でも完成度が高い一台だ。
H-lab:山地啓之)
 キヤノン [ http://canon.jp/ ]
 IXY DIGITAL 910 IS
 価格:オープンプライス 最新価格を調べる >>
 発売日:2007年9月
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