キヤノン PowerShot G10 レビュー

フェイスキャッチテクノロジー、サーボAFなど多彩なフォーカス機能

昨今のコンパクトデジタルカメラで必須の機能と言えば、顔検出機能だろう。PowerShot Gシリーズでも以前から「フェイスキャッチテクノロジー」として顔検出機能が搭載されていたが、PowerShot G10 では画像処理エンジンが「DIGIC III」から「DIGIC 4」に進化したことで、顔検出スピードが向上し機能強化が図られている。
特に実感できるのが検出できる顔の向きで、従来では検出が難しかった斜め・横顔でもなんなく検出することが可能だった。
またセルフタイマーと顔検出機能を組み合わせた「顔セルフタイマー」が搭載されている。これはセルフタイマー機能のひとつで、シャッターを押して以降、画面内に新しい顔を検出すると2秒後に撮影される機能だ。例えば集合写真でカメラを固定・セッティングした段階で一旦は顔検出を行い、シャッターを押した本人も集合に加わると新しい顔と判断し撮影するというような、全員揃った撮影が可能だ。その場合、目つぶりなどによる失敗を防ぐため、最大10枚まで自動撮影することも可能だ。
他社で採用されている笑顔でシャッターが切れる、笑顔検出機能などは搭載しない。
顔検出以外のAF機能も充実しており、9つのAFフレームから自動的に被写体にピントを合わせる「AiAF」に加え、AFフレームサイズの変更や、画面内の任意の位置にAFフレームを移動することができる「アクティブフレームコントロール」を搭載する。AFフレームの移動は、本体背面のコントロールホイールの回転操作で行える。
またシャッターボタン半押し状態でピントを合わせた被写体を、被写体が動いたり構図が変わっても追尾しピントを合わせ続ける「サーボAF」も搭載する。これは顔優先で検出した顔に、ピントを合わせ続けることも可能だ。

広角28o&光学5倍ズーム搭載、オプションのテレコンで7倍相当のズームに対応

コンパクトデジタルカメラでも数多く見られるようになってきたのが広角レンズの採用で、PowerShot G10 も満を持して広角28mmが搭載された。おそらく広角の採用を心待ちにしていたユーザーも多いのではないだろうか。
その代わりと言ってはなんだがズーム域が広角寄りにシフトしたため、望遠側は140mm相当の光学5倍とやや物足りない印象だ。望遠を多用するのであれば、オプションでラインナップされているテレコンバーター TC-DC58D の導入を考えよう。TC-DC58D を用いることで、約1.4倍の196mm相当までカバーすることができる。

[光学1倍:広角28mm(35mmカメラ換算)]

[光学5倍:140mm]

[光学140mm+TC-DC58D(196mm相当)]

デジタルズーム(560mm相当)

テレコンバーター TC-DC58Dとアダプター LA-DC58K(写真左)、本体に装着した状態(写真右)

テレコンバーターの取付には、コンバージョンレンズアダプター LA-DC58K が必須となる。テレコンバーター、アダプター共に旧モデルとの互換性はないので、過去のGシリーズからの買い換えユーザーにはツライところだ。

記録サイズは小さくなるが、CCDの中央部分を切り抜き、高画質な望遠効果が得られるズームも利用可能だ。デジタルズームと併用する場合、光学ズーム域から画像の切り抜きによるズーム域、、さらにデジタルズーム域とで一旦ズームの動きが停止する「セーフティーズーム」を採用している。そのためどこから画像に影響が出てくるのか、ズーム操作中にも判断しやすい。

デジタルズームの倍率を固定し、テレコンバーターを装着したのと同様の望遠効果が得られる「デジタルテレコン 1.7x」「2.2x」も搭載する。実際のテレコンバーターはレンズに装着するため、レンズの明るさが落ちるが、デジタルテレコンはデジタルズームを用いるため、レンズの明るさが低下せず手ぶれしにくい。

また最大記録サイズ4416 × 3312ピクセルで撮影しておくことで、あとから画像編集ソフトを使って必要な範囲にトリミングしてもサイズによっては充分利用できる画質(ピクセル数)を保持しつつ、望遠効果も得られるケースもある。

広角側はワイドコンバーターはラインナップされず、PowerShot G9用のワイドコンバーターにも対応していない。おそらく本体のみで28mmまで対応したためだろうが、19〜20mmといったさらなる広角の手段も残して欲しかった。

レンズシフト式手ぶれ補正搭載、最高感度ISO3200に対応

PowerShot G10は手ぶれへの対策として、撮影時のぶれ幅をレンズ駆動で相殺する「光学手ブレ補正(IS)」を採用している。ちなみにPowerShot G10と同時期に発表された他のPowerShotシリーズと、IXY DIGITAL シリーズののほとんどで光学手ブレ補正機能が搭載された。

被写体ぶれ対策としては、最高感度ISO1600で対応する。ISO感度設定を「ISO HI」にしておくと被写体の動きを検知して感度が高めに設定され被写体ぶれを軽減することができる。
本体上部のISOダイヤルで設定できるのはISO1600までだが、スペシャルシーンモード(SCN)では最高感度ISO3200を利用することができる。
ただしこの場合は画像記録サイズが、M3(1600 × 1200ピクセル)固定になる。

撮影サンプル

プログラム
シャッタースピード 1/1000秒、F4.0、ISO100

プログラム [マクロモード]
シャッタースピード 1/5秒、F2.8、ISO100。
プログラム [マクロモード]
シャッタースピード 1/320秒、F4.0、ISO100。

拡大表示でフォーカスチェックや、カテゴリー分類・検索が可能な再生モード

PowerShot G10は電源オフの状態でも、背面の再生ボタンを押すことで再生モードとして起動することができる。

再生モードではズームレバーの操作により、9枚までのマルチ表示が可能だ。しかし、せっかくの大型液晶モニターを活かしきっておらず物足りない。16、20枚などより多くのマルチ表示があってもよいと思う。

反対に3.0型液晶モニターの大きさを活かした表示モードもあり、撮影データの詳細な表示が可能で、[DISP.] ボタンを押すと、中心部分を拡大表示する、「フォーカスチェッカー」に切り替えることもできる。

再生モードで背面のコントローラーホイールを回転すると、画像が上下方向にスクロールできる検索モードに切り替わる。コントローラーホイールの回転スピードに応じて表示スピードも可変するので、大量の画像が記録されている場合には素早い検索が可能だ。

スライドショーでは、日付、カテゴリ、フォルダ単位で再生することができる。画像の編集機能は赤目補正、リサイズのほか、撮影時のマイカラー機能と同様に、セピアやモノクロ、コントラストの強調など色調を変化できる [レタッチマイカラー] が利用可能だ。また暗部補正機能は、撮影済みの画像に対しても編集機能で利用することができる。
PowerShot G10にはRAW現像ソフトとして、デジタル一眼レフ EOS シリーズと同じ「Digital Photo Professional」が同梱されており、色調補正やシャープネスなど細かな調整を行い現像が可能となる。

約400枚の撮影に対応する、大型バッテリーが付属

PowerShot G10 には専用リチウムイオンバッテリー NB-7L と、コンセントに直結できるバッテリーチャージャーCB-2LZが付属する。

バッテリーはフル充電で約400枚の撮影が可能で、前モデルPowerShot G9の約240枚から大幅にアップした。液晶モニターをオフにして、光学ファインダーを利用すれば約1000枚の撮影に対応する。(CIPA準拠、カタログ値※)
バッテリーは約2時間20分でフル充電が可能で、バッテリー寿命を踏まえれば高速充電と言って良いだろう。
メモリーカードは付属せず、本体内にもメモリーは搭載していない。

本体の他にバッテリー、バッテリーケース、バッテリーチャージャー、USBケーブル、AVケーブル、ネックストラップ、ソフトウェア、説明書が付属する。
※CIPA規格:カメラ映像機器工業会(Camera & Imaging Products Association)が定める電池寿命測定方法についての統一規格。

総論:ハイエンドコンパクトの名にふさわしい、長く付き合える完成度の高い一台

PowerShot G10の特徴的な機能を中心にレビューしてきたが、全体の印象を簡単にまとめると、クラシカルなデザインに先端のデジタル技術が詰め込まれ、さらに磨きがかかったと言える。特に2段ダイヤルの採用や、広角28mmを採用したことで撮影の面白さもグッと広まり、デザイン的にも中身的にも満足度は高い。

本編では画質に関してほとんど触れていないが、従来から画質面では定評のあるキヤノンのデジタルカメラにおいて、PowerShot G10も期待を裏切らない高画質な画像が得られる。詳細は本編のサンプル画像を参照して欲しい。

PowerShot G10は非常に魅力的なカメラであることに間違いはないが、気になるのは価格だ。
ネット上ではすでに価格もこなれており4万円台前半で購入可能だが、デジタル一眼レフのエントリーモデル、例えば同じキヤノンのEOS Kiss Fでもレンズキットで4万円台半ばで販売されているところもあり、その差は数千円程度にとどまる。

もちろん両者は性格が全く異なるがPowerShot G10を選ぶユーザーは、ジックリと写真と向き合いたいユーザーが多いはずだ。であればいっそのことデジタル一眼でも、と考えても不思議ではない。これはPowerShot G10に限ったことではなく、他社も含めハイエンドコンパクトに位置するモデルに共通して言える状況だ。

また同時発表されたアクセサリー、テレコンバーターやアダプターが旧モデルとは互換性がないため、従来のPowerShot Gシリーズユーザーが買い換えるには、それらアクセサリー類も新たに購入する必要がある。本体のみではズーム域が5倍と物足りないので、それら購入まで考えると価格的にはデジタル一眼と逆転してしまうケースもある。

もっとも、価格面が気になるのはあくまでもデジタル一眼と比較した場合だ。より高画質なデジカメは欲しいが、レンズ交換までは必要なく持ち歩きにデジタル一眼では躊躇してしまうようなユーザー、もしくはすでにデジタル一眼を所有しサブで高画質なデジカメが欲しいなら、PowerShot G10は間違いなくオススメできる。

PowerShot G10は完成度の高いハイエンドコンパクトデジカメとして、長く付き合っていくことができるだろうし、持っているだけでいい写真が撮れそうな気にさせてくれる、不思議な魅力を持ったデジタルカメラだ。
H-lab:山地啓之)
 キヤノン [ http://canon.jp/ ]
 PowerShot G10
 価格:オープンプライス 最新価格を調べる >>
 発売日:2008年10月7日
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