カシオ EXILIM EX-FC150 レビュー

最高40枚/秒の撮影でシャッターチャンスを逃さない、高速連写機能

EX-FC150は高度な連写機能を搭載する。連写機能には2つ、「通常連写」と「高速連写」があり、どちらを利用するかは、あらかじめ撮影設定メニューから選択しておき、1枚撮影モードと連写モードの切替は上部の「HS」ボタンで行う。
「通常連写」は、シャッターボタンを押し続けるとメモリーカードの容量が許す限り連続撮影が行われる、一般的な連写モードだ。連写スピードを変更することはできず、1枚撮影毎に保存する。そのためメモリーカードの種類によって連写スピードが変化するので、連写だが特に高速なわけではない。
もうひとつの「高速連写」はEX-FC150ならではの機能で、最高40枚/秒のスピードで最大30枚を撮影できる高速連写モードだ。連写スピードは1枚/秒、3枚/秒、5枚/秒、10枚/秒、15枚/秒、30枚/秒、40枚/秒から選択できる。
最大連写30枚なので設定が3枚/秒なら10秒間、10枚/秒なら3秒間、30枚/秒なら1秒間の連写が可能だ。1秒あたりの撮影枚数が多いほどシャッターチャンスを逃しにくく感じるが、逆に撮影できる秒数は短くなるので、シャッターボタンを押すタイミングが少しでもずれてしまうとチャンスを逃す可能性もある。逆に1秒あたりの撮影枚数を落として長い秒数撮る方が、タイミングを逃しにくい場合もあるだろう。このあたりは被写体の動きを考慮しながら、吟味する必要がある。
もし、シャッターボタンを押す場合にシビアなタイミングが求められる場合には、「パスト連写」を利用すればよいだろう。 これはシャッターボタンの半押し状態から一時的に撮影し続ける機能で、シャッターボタンを全押した時には、既にその手前から撮影されているのだ。シャッターボタン全押しの前後で合わせて最大30枚撮影することが可能で、その前後で撮影枚数を割り当てることができる。例えば連写スピードが3枚/秒の場合だと10秒の連写ができるので、「パスト連写」の設定でシャッターボタン全押しの前後で15枚ずつ撮影するように割り当てれば、前後を5秒ずつ連写撮影できることになる。
高速連写された画像は、2つ保存方法が用意されている。撮影した画像全てを保存する「通常(一括)保存」と、撮影された複数の画像がゆっくり自動再生され、保存したい画像を選択できる「選択保存」がある。どちらかというと撮影時は「通常(一括)保存」を選んでおき、後から再生モードで気に入った1枚をじっくり探す方が現実的だろう。ただ、最大で一度に30枚の画像が撮影・保存されるので、高速連写を多用すると、あっと言う間にメモリーカードの容量を消費する可能性がある。
また、1回の高速連写で撮影された複数の画像は、EX-FC150内では1つのグループとして管理される。例えば30枚/秒の高速連写を利用した場合には、30枚の画像が1つのグループになっているが、パソコンに読み込むとグループは解除され、それぞれは単独のファイルとなる。そのためパソコン内の画像枚数が、数十〜数百枚単位で一気に増えるケースもあるので注意が必要だ。

ハイスピード、ハイビジョンムービー、YouTubeなど充実の動画撮影機能

EX-FC150の動画撮影は手軽で、背面の丸いムービーボタンを押すだけで、撮影がスタートする。
では、動画撮影の一つ、ハイスピードムービーから見ていこう。ハイスピードムービーは最高1000コマ/秒のスーパースロー撮影ができる超高速動画撮影機能だ。
ここでハイスピードムービーの仕組みを簡単におさらいしておこう。動画はパラパラマンガのような静止画の連続で、1秒間のコマ数を増やせば、細かな動きの変化を表現できるパラパラマンガになる。
これと同様にEX-FC150では、1秒間に撮影できるコマ数を増やして記録している。例えば240fps(fps:フレームレート)の場合、1秒を240コマの連続する静止画として記録するが、それを再生時には1秒30コマとして再生すると、1秒の出来事を8秒に引き延ばしたかのような世界、つまりスーパースローな世界を見ることができるのだ。
EX-FC150で利用できるハイスピードムービーのフレームレートは120fps〜1000fpsで、撮影中にスピードを変化させることもできる。また、フレームレートによって画像サイズが変わり、[120fps] で640×480ピクセル、[240fps] で448×336ピクセル、[420fps] で224×168ピクセル、[1000fps] で224×64ピクセルと、フレームレートがアップするほど小さくなるが、鑑賞するには充分なサイズが保たれている。
試しにいろいろな被写体をハイスピード撮影したところ、肉眼では見ることができない非常に面白い世界を記録することができた。そのサンプルは下記を参照して欲しい。
ここの過去のレビューでは、同じくハイスピードムービーが撮影できるネオ一眼と称される、カシオのEXILIM PRO EX-F1を取り上げたが、細かなスペックの違いはあるもののスリムでコンパクトなEX-FC150でも、手軽にハイスピードムービーが利用できるのは驚きだ。
またEX-FC150は画像サイズ1280×720ピクセル、フレームレート30fpsのハイビジョンムービーの撮影もできる。スペック的にはフルハイビジョンではないが、ビデオカメラを持ち出すほどではないが、できるだけ高画質で残したい手軽な用途に重宝するだろう。
撮影した動画はAVI形式で記録され、パソコン上でもWindows Media PlayerなどAVI形式に対応するソフトウェアで再生することができる。
さらに、ハイスピードムービー、ハイビジョンムービー、通常のムービーのいずれも動画共有サイト YouTube に載せることが可能だ。シーンに応じた最適な設定を手軽に選択できるシーンモード「BS(ベストショット)」に含まれる「YouTube」モードで撮影し、パソコンに読み込んで「YouTube Uploader for CASIO」(付属ソフトウェア)を利用することで YouTube へ手軽にムービーを投稿することができる。

撮影サンプル

ベストショット [風景を写す]、シャッタースピード 1/160秒、F7.0、ISO100。 オートベストショット [近くを写す]、シャッタースピード 1/60秒、F2.6、ISO100。 ベストショット [夜景を写す]、シャッタースピード 1/10秒、F2.6、ISO64。
オートベストショット [近くを写す]、シャッタースピード 1/60秒、F2.6、ISO80。 オートベストショット [オート]、シャッタースピード 1/60秒、F2.6、ISO64。 オートベストショット [オート]、シャッタースピード 1/40秒、F3.6、ISO250。
ムービー サンプル(AVI形式)
ハイビジョンムービー
画像サイズ 1280×720(ファイルサイズ:40.16MB)
ハイスピードムービー
画像サイズ 448×336(240fps、ファイルサイズ:19MB
ハイスピードムービー(可変)
画像サイズ 448×336(30 - 240fps、ファイルサイズ:37.85MB)
※動画再生環境に関する質問にはお答えできません。

フル充電で約300枚の撮影が可能な、長寿命バッテリーが付属

EX-FC150には専用リチウムイオンバッテリー NP-40 と、バッテリーチャージャーBC-30Lが付属する。約2時間30分でフル充電可能で、約300枚の静止画撮影が可能だ。また、ハイビジョンムービーの連続撮影で約2時間20分、ハイスピードムービーの撮影で約2時間の撮影が可能だ。
バッテリーチャージャーBC-30Lの本体はコンパクトだが、ACケーブルを接続するタイプで、携帯性はやや劣る。
※CIPA規格:カメラ映像機器工業会(Camera & Imaging Products Association)が定める電池寿命測定方法についての統一規格。

総論:画質面での基本を抑えつつ、遊び心をくすぐるデジカメ

EX-FC150の特長的な機能に絞ってレビューしてきたが、モデルチェンジの目玉でもある「裏面照射型CMOSセンサー」の搭載は、これまでEXILIMシリーズに搭載されてきた、いわゆる派手な機能とは異なり画質面での向上が図られた地味なバージョンアップと受け止められるかもしれない。しかし、最近のコンパクトデジタルカメラでは一時の画素数競争はなりを潜め、画質を重視する傾向にある。携帯電話のカメラも格段に画素数がアップしていることもあり、コンパクトデジカメならではの違う面で、差別化を図る必要性が出てきているのだろう。

そのような状況を踏まえると、画質に差が出る「裏面照射型CMOSセンサー」の搭載は納得のいく機能強化だ。特殊な撮影機能は楽しいが常用するかどうかで考えると、暗い環境での撮影などで画質が向上する方がメリットを感じるユーザーは多いはずだ。その中で、いざという時に特殊な撮影方法が利用できるEX-FC150なら、日常から特別なときまで幅広く対応することができる。

ただEX-FC150には、コンパクトサイズに沢山の機能が凝縮されているため、機能の全容を把握するのには時間がかかりそうだ。ヘタをするとせっかくの便利な機能が、気が付かれないまま使い続けられるケースもあるかもしれない。モデルチェンジ毎にどんどん追加される新機能によって、既にあった優れた機能が埋もれてしまうのではないかとの危惧さえ覚えてしまう。その点では入門者よりも、この手の最新デジタル機器を好み、機能を使いこなしていくことに喜びが感じられるヘビーユーザーにオススメしたい。

高速連写とハイスピードムービー機能を搭載するEXILIMシリーズをレビューすると、「もっといろんなものを撮影してみたい!」と、これらの機能を利用の為だけでも良いので、EXILIMが欲しいと毎回感じてしまう。EX-FC150も、そんな遊び心をくすぐるデジカメだ。
H-lab:山地啓之)
 カシオ [ http://dc.casio.jp/ ]
 EXILIM EX-FC150
 価格:オープンプライス 最新価格を調べる
 発売日:2009年11月27日

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