カシオ EX-Z1080 レビュー

ネットでの動画共有が容易に行える、「YouTube」モード

EX-Z1080 は、YouTube の動画形式に対応する動画モード、「YouTube」モードを搭載する。
動画投稿サイト YouTube は、既にご存じのユーザーも多いだろう。ユーザー登録さえすれば、無料で誰でも自由に動画ファイルを投稿・公開できるサービスで、動画共有の手段として急速に広まっている。閲覧するだけならユーザー登録も不要で、投稿した動画は特定の仲間だけに公開したり、外部のブログの本文に埋め込んで再生することもできる。

EX-Z1080 の YouTubeモードはベストショットモードの動画モードの1つとして利用可能で、画像サイズは 640 × 480 ピクセル、画質はノーマルに固定、記録される動画ファイルは MOV 形式になる。
現在 YouTube に投稿できる動画は 10分以内、100MB以下となっており、これは YouTube 側で規定されている。そのため YouTube モードで撮影できる動画も、最大10分までだ。
ちなみに YouTube では他にも WMV、AVI、MPEG 形式もアップロード可能で、FLV(Flash Video)形式に変換し配信される。
YouTube モードと聞くと、動画ファイルを EX-Z1080 から、直接 YouTube へ投稿できるのかと思いがちだが、EX-Z1080 自体にはネットに接続できる機能を持たないので、それはできない。
インターネットに接続できるパソコンにUSBで接続、付属の専用アップロードソフトウェア「YouTube Uploader for CASIO」 を使って、パソコンを経由してアップロード作業を行う。 投稿には YouTube へのユーザー登録が必要だ。
YouTube Uploader for CASIO がインストールされているパソコンに、YouTube モードで撮影した動画ファイルを含む EX-Z1080 を接続し電源を入れると、自動的に YouTube Uploader for CASIO が起動して、アップロード可能なファイル一覧が表示される。MOV形式が再生可能なパソコン環境であれば、一覧からファイル名をダブルクリックして、動画のプレビューが可能だ。
アップロードしたい動画ファイルにチェックを入れ、タイトル、説明、タグ(キーワード)などを入力する。
そして、[アップロード] をクリックすると EX-Z1080 からパソコンへ動画が一旦読み込まれ、YouTube サイトへのアップロードが実行される。初回投稿時のみ、YouTube で登録したユーザーIDと、パスワードの入力を求められる。アップロード完了後には、自動でWebブラウザが起動してマイアカウントページへ接続、動画を確認することも可能だ。

YouTube モードで撮影した動画ファイルはメモリーカード内の「100YOUTB」フォルダ(撮影単位によって 101YOUTB、102YOUTBと続く)に収められ、他の動画モードで撮影したファイルとは区別されている。そのため YouTube モード以外の高画質やワイドモードなどで撮影した動画ファイルは、YouTube Uploader for CASIO 上では認識されない。
これら操作の流れをみると、YouTube への動画投稿のほとんどはパソコンにインストールされたソフトウェアが担っており、EX-Z1080 本体側では動画ファイルの設定に留まっている。そのためYouTube モードというのは少しオーバーにも感じるが、投稿に必要な作業のほとんどが自動化されているのは事実だ。YouTube への投稿方法に不慣れであったり、一度にたくさんの動画を投稿する場合には重宝する。

それと無線LAN内蔵で、直接 YouTube へ動画投稿できる EXILIM シリーズへの期待もあるかもしれない。しかし、投稿した状態を確認をするには、やはりパソコンなどからブラウザ閲覧する必要があるので、パソコンを介してアップロードする現状のやり方が現実的だろう。

顔認識の優先順位まで決めることができる、ファミリー優先認識モード

デジカメの世界ではすでに一般的な機能となった顔認識機能だが、横顔認識や笑顔認識など各メーカーとも一歩進んだ顔認識機能を搭載しつつある。EX-Z1080 も例外ではなく、ユニークな顔認識機能が利用できる。
EX-Z1080 の顔認識機能には大きく分けて2つある。
ひとつは画面中央にいる人物の顔を優先的に認識する [通常認識] モードと、もうひとつは複数の人物の中から、あらかじめ登録している特定の人物の顔を優先的に認識する [ファミリー優先認識モード] だ。

ファミリー優先認識モードの顔登録はとても簡単で、顔の輪郭、目と口の位置を合わせるためのフレームを、登録したい人物の顔に真正面から合わせてシャッターを切るだけだ。 そしてあらかじめ用意されている [パパ] [ママ] [こども] といった名前を付けて登録する。その際、星の数によって認識する優先順位も決めることも可能だ。登録は最大6人までできる。

実際に顔を登録し、ファミリー優先認識モードを2〜3人の撮影で試してみた。すると、登録した環境と似た環境(光の当たり具合や光の色など)であれば優先認識されやすかったが、登録時と異なる環境では優先されないこともあった。期待した結果にはもう一歩といった印象で、さらなる精度のアップを期待したい。
登録した顔情報は内蔵メモリーに記録されるため、フォーマットすると消えてしまうので注意が必要だ。

撮影サンプル

ベストショット [風景を写す]、シャッタースピード 1/800秒、F4.0、ISO80。 オート [マクロ]、シャッタースピード 1/60秒、F2.8、ISO80。 ベストショット [料理を写す]、シャッタースピード 1/10秒、F2.8、ISO400。

明るさ補正や動画編集が可能な再生モード

再生モードでは、ズームレバーの操作により、1枚、12枚、カレンダー表示が可能だ。

また、スライドショーや編集機能も充実している。
スライドショーでは画像の切替エフェクトは2種類しかないが、BGMは5種類、内蔵メモリーまたはメモリーカードの所定のフォルダにWAV形式の音楽ファイル入れることで、自分の好きなBGMで再生することができる。
編集機能ではBSモードのレイアウトショットと同様に複数画像を1枚の画像に組み合わせられる [レイアウトプリント] や、[ダイナミックレンジ] [ホワイトバランス] [明るさ編集] などの色調補正が可能だ。
動画関連では撮影時の手ぶれを補正する [手ぶれ補正]、不要部分をカットする [ムービーカット]、動画から1コマを静止画で切り出せる [モーションプリント] などがある。

フル充電で約370枚の撮影が可能な、長寿命バッテリーが付属

EX-Z1080 には、少し厚みのある専用リチウムイオン充電池 NP-40 が付属し、同梱のバッテリーチャージャーを利用して約2時間30分でフル充電が可能だ。 フル充電で撮影枚数約370枚(CIPA準拠※)の長寿命を達成している。
充電にかかる時間は特に早いわけではないが、撮影枚数を考えれば納得できる時間で、それほどマメな充電は必要ないだろう。
本体の他に、クレードル、USBケーブル、バッテリー、ACケーブル、AVケーブル、ストラップ、ソフトウェア、説明書が付属する。

総論:基本機能に不満なし、動画共有を活かせるシーンが思い浮かべばオススメ

EX-Z1080 の特長となる機能を中心に見てきたが、コンパクトデジタルカメラとしては一通りの機能が揃い、全41種類のシーンモードの搭載など、他社と比較しても大きくリードしている部分もある。贅沢を言えば、レンズシフトかCCDシフトなど、光学式手ぶれ軽減機能を搭載していればとも思うが、これは上位モデルとの差別化によるものだろう。

その他の見どころは、やはり YouTube モードだ。
コンパクトデジタルカメラに動画モードが搭載されていることを、今さら疑問に思うユーザーは少ないだろうが、撮影後の動画を活用できているユーザーもそれほど多くないだろう。動画は静止画と違って手軽に配布することができないため、利用する機会が少なかったり、撮影しても撮りっぱなしになりがちだ。

子供の成長など半永久的に残したい動画撮影なら、やはりビデオカメラの登場となる。
しかし、動画投稿サイトの登場によって状況は変化しつつあり、動画も写真の配布のように手軽に、仲間内で一時の盛り上がりのためのツールとして利用される機会も増えている。YouTube モードの搭載は、現状と今後を踏まえたメーカーからの新しい提案と言えるだろう。

EX-Z1080 でなくとも、手順さえ理解できれば撮影した動画を YouTube に投稿するのはそれほど難しくはない。しかし、パソコンやデジタルカメラに詳しくないユーザーにとっては、「ネットで動画共有」と聞いただけで難しく感じてしまうユーザーも少なくない。

しかし、実はそういった一般的なユーザーほど、子供やペットなどの動画をネット上で公開して、離れている親類や友達と共有したいというニーズはあるのではないか。そして専用のYouTubeモードと、簡単な手順でアップロードできるソフトが敷居を下げてくれるだろう。

これまで YouTube という名前は聞いたことがあったが利用したことがないユーザーや、子供やペット、仲間との活動を動画に収めて手軽にネット上で共有したいと考えているなら、YouTube モードを搭載する EX-Z1080 が、よいきっかけになるかもしれない。
H-lab:山地啓之)
 カシオ [ http://dc.casio.jp/ ]
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 発売日:2007年9月

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