富士フイルム FinePix Z300 レビュー

シーンぴったりナビ、精度の高い顔検出など多彩な撮影機能を搭載

タッチショット以外にもFinePix Z300の撮影機能は充実している。まず、すでにコンパクトデジタルカメラでは必須機能となった、カメラを向けるだけで被写体に応じて最適な設定を自動で行うシーン自動判別機能は、「シーンぴったりナビ」として搭載する。
対応する被写体は [人物] [風景] [夜景] [マクロ] [夜景&人物] [逆光&人物] を自動判別し、ピント・明るさ・感度・絞り・シャッタースピードを自動設定する。また、被写体が人物の場合には顔検出機能や赤目補正が働く「顔キレイナビ」で人物に最適な設定で撮影することが可能だ。特にFinePixシリーズの顔検出機能は定評があり、横顔・斜め顔・上下逆向きの顔も検出することができる。
さらに自動的に高感度設定になり、暗い場面でもストロボ無しで目で見たままの雰囲気で撮影できる [ナチュラルフォト] や 、ストロボ無し・有りを連続撮影する [高感度2枚撮り] も装備する。ただしFinePix Z300は高感度撮影に強いとされるスーパーCCDハニカムは採用していないので、状況によっては高感度によりノイズが激しくなるケースもあった。
ユニークな撮影機能として、セルフタイマーが充実している。
[恋するタイマー] はカップルに最適なセルフタイマーで、人物二人の顔が近づくとセルフタイマーが作動するモードで、あらかじめ設定しているラブ度(ハートマークのインジケーター)が大きいほど、二人の距離が近くならなければカウントダウンしないようになっている。
[みんなでタイマー] は、あらかじめ設定した人数が揃うと作動するセルフタイマーで、被写体が一人の時はタイマーが1秒、2〜4人の時は2秒のカウントダウンでシャッターが切れる。
これらセルフタイマーはお遊び的要素が強いが、カメラが場の盛り上がりに一役買ってくれ、コミュニケーションの楽しさを再認識させてくれるユニークな機能だ。

スリムボディで光学5倍ズームを搭載

FinePix Z300は35mmフイルム換算で 36mm〜180mm 相当の、光学5倍ズームを搭載する。できればもう少し広角側が欲しい気もするが、スリムボディにもかかわらず望遠にシッカリ対応しているのは嬉しい。デジタルズームとの併用で最大約27倍のズームが可能で、画像の中央部分を切り抜く擬似的なズーム機能は搭載しない。

光学1倍

光学5倍

撮影サンプル

シーンぴったりナビ [風景]
シャッタースピード 1/350秒、F6.4、ISO100。

マニュアル [マクロ]
シャッタースピード 1/15秒、F3.9、ISO100。
シーンぴったりナビ [風景]
シャッタースピード 1/320秒、F8.0、ISO400。

シーンぴったりナビ [マクロ]
シャッタースピード 1/160秒、F6.4、ISO100。

オート
シャッタースピード 1/75秒、F3.9、ISO400。
マニュアル
シャッタースピード 1/13秒、F3.9、ISO400。

画像検索や編集でもタッチ操作が活かせる再生モード

再生モードでもタッチ操作の利便性は活かされている。再生モードでは編集や検索機能、削除などが画面の下にボタンアイコンとして表示され、タッチして各機能を切り替えることができる。撮影済みの画像を順次閲覧したい場合は、1コマ再生時には左右移動の三角ボタンをタッチ、3コマ再生時(下写真)では指先で横方向に滑らせるようにタッチすると、スクロールして前後の画像を表示することができる。
拡大表示したい場合はズームアイコンをタッチするか、ズームレバーを操作すると拡大表示モードになる。拡大表示状態には指先で画像をドラッグして、見たい範囲を移動することができる。これらタッチ操作はタッチパネルを採用するデジカメ、モバイル機器と同じような操作感なので、それら機器を扱った経験があれば戸惑うことなく利用することができるだろう。
画像検索機能はいくつかのアプローチの仕方があり、日付・撮影シーンなどで検索できるほか、クローズアップ・カップル・集合写真といった顔検出を利用した検索も可能だ。
検索中は画面下に表示されるサムネイル移動ダイヤル(左写真)を左右にドラッグしてサムネイル一覧を移動することができる。視覚的・感覚的に検索できるが、反応が若干もたつく感じがあるので目的の画像よりも行き過ぎてしまうこともあった。画像をフォルダに分類することも可能で、サムネイルを目的のフォルダにドラッグ&ドロップして分けることが可能だ。
タッチ操作を活かした編集機能として「レイアウトフォト」がある。これはあらかじめ用意されているレイアウト用のテンプレートに複数の画像を組み合わせ、1枚の画像を作成できる機能だ。テンプレートは4種類あり、画像のはめ込みはサムネイルをレイアウトの枠内へドラッグ&ドロップで行える。レイアウト中の画像を回転することも可能だ。
作成後の画像は640サイズ(640×480ピクセル)または3Mサイズ(2048×1536ピクセル)を選択して、撮影画像とは別のファイルとして保存される。サイズとしてはブログ掲載やA4用紙へのプリントに対応できる大きさで、いろいろな用途に使えそうだ。

フル充電で約170枚の撮影に対応

バッテリーは薄型の NP-45 を利用する。コンセント直結型のバッテリーチャージャーがBC-45W付属し、フル充電で約170枚(※CIPA規格準拠)の撮影が可能だ。枚数的には少し物足りない数値で、タッチ操作でいろいろ試していると撮影枚数はより少なくなるだろう。
本体の他に、充電式バッテリーNP-45、バッテリーチャージャーBC-45W、ストラップ、タッチペン、専用USBケーブル、CD-ROM、使用説明書が付属する。
※CIPA規格:カメラ映像機器工業会(Camera & Imaging Products Association)が定める電池寿命測定方法についての統一規格。

総論:基本はシッカリ、タッチ操作で軽快、カジュアルに遊べるデジカメ

タッチパネルを搭載する機器のイメージとしては高機能で先進的なハイエンドモデルである印象が強いが、本当はFinePix Z300のような、カジュアルユーザーをターゲットした機器にこそ必要ではないだろうか。

タッチパネルの目的のひとつには、操作を直感的・感覚的に行えるというのがある。それは本来、ハイエンドモデルを好むデジタル機器に詳しいユーザーではなく、操作に不慣れなユーザーにこそ必要だ。その意味ではハイエンドモデルではないカジュアルユーザー向けで、特に女性をターゲットにしたFinePix Z300でのタッチパネル採用は理にかなっている。

FinePix Z300ではタッチショットや再生モードでの画像検索、編集機能などタッチパネルの特性を利用し、機能を覚えるというよりも楽しみながら操作できる感覚に近い。

その反面、タッチパネルは選択している画面以外からの情報が得られにくく、次に全く異なる操作に移行する際に戸惑うことも少なくない。FinePix Z300にも撮影メニューを即座に呼び出せるHOMEボタンが上部に用意されているが、説明書を見るまでそのボタンがHOMEボタンだとは判らず、直感的・感覚的な操作を求めたタッチパネルとの連動にチグハグな印象を持った。その点では本体のボタン類を含め、ユーザーインターフェイスの練り上げが必要だろう。

それら気になる点はあるものの全体を通じては光学5倍ズームや顔検出、手ブレ補正、シーン自動判別などタッチパネル以外の基本機能もシッカリ押さえ、ユニークなセルフタイマーや編集機能など付加価値もありカジュアルに楽しむことができるデジタルカメラだ。
H-lab:山地啓之)
富士フイルム [ http://fujifilm.jp/ ]
FinePix Z300
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発売日:2009年6月20日
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