続くZ700EXRのポイントは、スーパーCCDハニカムEXRの採用だ。一部の例外はあるが、富士フイルムのデジタルカメラの特長といえば、独自開発の撮像素子CCDハニカムセンサーがある。CCDハニカムセンサーは、方眼のように画素が並ぶ一般的なCCD構造とは異なり、画素が蜂の巣のようなハニカム状に画素が並んでいる。画素がハニカム状に並ぶことで同じ面積の撮像素子でも画素の密度が増し、高画質・高感度を実現している。
この従来からのCCDハニカムセンサーに、新配列のカラーフィルターと3つの電荷制御技術により高解像度、ワイドダイナミックレンジ、高感度・低ノイズを実現したのが「スーパー CCD ハニカム EXR」だ。
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そしてZ700EXRでは被写体に応じたシーンモードを自動判別する「自動シーン認識機能」と、EXR技術を組み合わせた「EXR AUTO」を搭載する。これはシーン判別に加え、充分な光量がある場合は「高解像度優先モード(HR)」、被写体に明暗差がある場合は「ダイナミックレンジ優先モード(DR)」、暗い状況では「高感度・低ノイズ優先モード(SN)」に自動設定される。そのため日常の利用としては、「EXR AUTO」でほとんど問題はない。 |
ダイナミックレンジ優先:ISO100・DR100%
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このうち「ダイナミックレンジ優先モード」は隣り合う2つの画素で高感度と低感度の異なる感度で撮影を行い、1つの画像を生成することで明暗の階調が豊かな画像を実現する。特にハイライト部の階調(画像の明るい部分の明暗差)が滑らかになり、白飛びを押さえることができる。
ただし、ダイナミックレンジとISOは連動するので、意図せず高感度になり画質に影響を与える場合もあるので、必要に応じて使い分けられるようにしておいたほうが良いだろう。 |
ダイナミックレンジ優先:ISO200・DR200%
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ダイナミックレンジ優先:ISO400・DR400% |
マニュアルモード
シャッタースピード
1/4秒、F3.9、ISO400。 |
「高感度・低ノイズ優先モード」は隣り合う2つの画素を、1つの画素として扱い受光量をアップすることで、1つの画素の受光量を電気的にアップするよりもノイズを抑えることができる。
FinePix シリーズはもともと高感度に強いスーパーCCDハニカムを搭載してきたので、過去のモデルでも夜景や暗いシーンに対応する撮影モードをいくつか搭載してきた。今回はそれらモードによって、画質やノイズにどの程度の違いがあるのか撮り比べてみた。撮影の仕組み上、「高感度・低ノイズ優先モード」のみ画像サイズがMサイズ(2816×2112ピクセル)で、その他はL(4000×3000ピクセル)になっている。そのため単純に画質の比較はできないが、ノイズの発生を見るとISO800の「高感度・低ノイズ優先モード」でも、ISO400の「マニュアルモード」と遜色なく、感度が高いぶん明るく良好な撮影結果が得られた。 |
高感度・低ノイズ優先モード
シャッタースピード
1/4秒、F3.9、ISO800。 |
ナチュラルフォトモード
シャッタースピード
1/4秒、F3.9、ISO1600。
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シーンポジション [夜景]
シャッタースピード
1/4秒、F3.9、ISO800。 |
これら隣り合う2つの画素を1つの画素として扱う「ダイナミックレンジ優先モード(DR)」と「高感度・低ノイズ優先モード(SN)」は、撮影できる画像サイズは Mサイズ(2816×2112ピクセル)以下となる。
Z700EXRには、世界初(2010年1月現在 コンパクトデジタルカメラにおいて)となるペット自動検出機能を搭載する。撮影モードには「いぬ」「ねこ」モードがあり、それぞれの顔を真正面であれば上下逆さ、斜めの360度検出して自動撮影することができる。
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Z700EXRでは人の顔は横顔まで検出することができるが、犬猫は真正面のみ対応する。これを不便と感じるかもしれないが、実際に試してみるとキョロキョロ顔の向きが変わる状態でも、真正面に来たときに自動撮影されてシャッターチャンスを逃しにくい。ただし、動きが速い場合は追いつくことができず、ピントがずれたり被写体ぶれを起こしてしまうケースもある。そのため、比較的ペットが平常心の時に使う方が良いだろう。また、「いぬ」「ねこ」モードで撮影しておくと、再生モードではそれらカテゴリーで検索することができる。 |
人の顔検出ではあらかじめ個人を登録しておき、優先的にピントを合わせる「個人認識」が可能だ。撮影回数の多い顔を認識して、新規登録することもできる。こちらも再生モードでは、登録している個人の顔で、検索を絞り込むことができる。
Z700EXRは、ハイビジョンサイズ(1280×720ピクセル、24フレーム/秒)による動画撮影に対応する。動画撮影は撮影モードから「動画」を選択し、シャッターボタンでスタート/ストップを行う。動画ファイルはAVI形式で記録され、同形式に対応するソフトがあればハイビジョンムービーをパソコン上でも鑑賞することができる。また、同梱されているソフト「MyFinePix Studio」のアップローダーを利用すれば、パソコンを経由して動画共有サイト「YouTube」へ手軽に動画を投稿することができる。
ハイビジョンテレビやモニターなどへ、Z700EXR本体から直接テレビなどへ出力することはできない。その場合は、SDメモリーカードを経由してオプションのメディアプレーヤー「
ファインピックス HDプレーヤー FinePix HDP-L1」で行う。「FinePix HDP-L1」の利用はHDMI端子を備えるハイビジョンテレビと、市販のHDMIケーブルが別途必要になる。そのため旅行先や出張先で思い立った時に、大画面で手軽に楽しめないのは残念だ。
ムービー サンプル(AVI形式) |
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ハイビジョンムービー
画像サイズ 1280×720(ファイルサイズ:40.08MB) |
※動画再生環境に関する質問にはお答えできません。 |
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バッテリーは薄型のNP-45が付属する。充電にはコンセント直結タイプのバッテリーチャージャーBC-45Wが付属し、約2時間フル充電が可能だ。BC-45は挿入方向の違いにより、同社のバッテリーNP-50も使える共用タイプになっている。フル充電では約170枚(※CIPA規格準拠)撮影することができるが、大型液晶モニターを搭載した影響からか枚数的には心許ない。ハイビジョンムービーの撮影や、タッチパネルを利用して画像を検索・鑑賞していると撮影枚数はさらに少なくなると思われるので、マメに充電しておくか予備のバッテリーを用意しよう。 |
※CIPA規格:カメラ映像機器工業会(Camera & Imaging
Products Association)が定める電池寿命測定方法についての統一規格。
富士フイルムのタッチパネル採用デジカメとしては、過去に
FinePix Z300をレビューしているが、特に再生モードの画像検索・鑑賞において大きく進化している。3.5インチの大型モニターは画像を大きく表示できるだけでなく、カメラの縦横の向きを自動で判断して表示内容が対応する「タテヨコオート」のおかげで写真の鑑賞が楽しくなる。
画像検索も便利で、メインの画像とその他の画像を一覧表示することで、目的の画像を見つけやすい。最近ではメモリーカーの記憶容量が大きくなったこともあり、パソコンに画像を転送した後もカードから画像は削除せず、カメラ側でも大量の画像を持ち歩くユーザーもいる。そのためデジタルカメラ上で数十〜数百枚の画像を検索することもあり、そんな時にZ700EXRのカテゴリーや日付による検索はとても重宝する。
タッチパネルの使用感としては、タッチパネルの火付け役となったiPhone/iPod touchと、どうしても比べてしまう。その上で、Z700EXRから感じられるのは、気持ちよさや軽快感という面においては、残念ながらもう一歩といった印象を受ける。従来のボタンやキーを押す動作に比べ、タッチパネルの操作は指の動かし方に個人差がある。Z700EXRのタッチ操作の感覚はその個人差をフォローしてくれると言うよりは、カメラ側の反応にユーザー側が合わせに行く感じで、それが軽快に感じられない部分に繋がっている。今後はより人の感覚、それも普段は意識しないような何気ない感覚にチューニングする必要があるだろう。それは曖昧さを含むとても難しいところでもあるが、タッチパネルを採用する機器が溢れる現在では、その操作性に求められるレベルも高くなっている。今後も是非とも頑張って欲しい。
タッチパネル以外では「スーパーCCDハニカムEXR」採用による機能の中でも、特に「高感度・低ノイズ優先モード」は優秀だ。ISO800設定時でもISO400と同程度にノイズが抑えられ、使い甲斐がある機能だ。夜景や暗い状況の撮影は撮影結果と実際に「なんか違う」と感じやすいが、「高感度・低ノイズ優先モード」であれば違和感を感じにくい。また、EXR AUTOとシーン自動判別機能と相まって、ユーザーが状況が異なる被写体でも気にすることなく手軽に撮影することができる。
Z700EXRは、高度な機能が高度な処理を行いつつも、ユーザーにそれを意識させず扱える満足度の高いデジカメだ。最先端の機能が欲しいが、難しいことはカメラに任せたい。でも、見た目のオシャレさも外せない、そんな女性にピッタリのデジタルカメラだ。