今回のモデルチェンジのポイントの1つは、無線 LAN への対応だ。無線 LAN は同じ COOLPIX
でも P シリーズとなる、
P1、
P2 がすでに対応しており、COOLPIX
S6 と同時発表された
P3 にも搭載されている。無線規格は
IEEE 802.11b/g 準拠(Wi-Fi)で、家庭や会社などで広く普及している無線 LAN 対応のノートパソコンや、ワイヤレスルーターを介したやりとりが可能だ。
ワイヤレスでできることは画像の転送と、専用アダプターを利用したプリンターへのダイレクトプリントだ。
ワイヤレスに必要な設定を行うためのソフトウェアをインストール |
それらを利用するには、COOLPIX
S6 と転送先となるパソコンの両方に設定が必要だ。まず、付属するソフトウェアをパソコンにインストールする。そして、COOLPIX
S6 を USB(クレードル経由)を使ってパソコンと接続し、インストールしたソフトウェアを使って設定を行い、その設定をカメラ側へ転送する。その際、パソコンと1対1で直接やりとりする(アドホックモード)、アクセスポイント経由でやりとりをする(インフラストラクチャモード)かを選択できる。
今回はワイヤレスルーターを介した接続、インフラストラクチャモードで設定を行った。パソコン側はルーターに有線で繋がっている。
設定は画面の指示に従うウィザード画面で進んでいき、設定すべき項目はネットワーク機器としては一般的なものだが、ネットワーク機器を自分で設定した経験がないと戸惑うかもしれない。
ネットワーク機器メーカーも多いので対応は難しいと思うが、ボタン1つで完了とは言わないものの、ブラウザ上だけで設定や確認ができるなど導入に手軽さが欲しい。女性を意識していると思われるボディデザインのわりに、このへんの設定はとても男性的に思える。 |
付属ソフトウェア「Wireless Camera Setup Utility」の設定画面 |
設定さえ完了すれば画像の転送は簡単で、パソコン側の電源が入っていれば
COOLPIX S6 側の操作だけで画像を転送できる。COOLPIX S6 を [ワイヤレス転送] モードにして、接続先(あらかじめ設定していたパソコン)を選択すると、ネットワーク上にあるパソコンを検索してくれる。うまく接続できれば、本体横のアクセスランプが点灯するので、次に画像の転送方法を選ぶ。全ての画像を一括転送、撮影日単位、任意に選択した画像のみの転送など数種類の転送が可能だ。 |
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画像の転送中、
Windows の場合は見た目に変化はないが、Macintosh の場合は画面に転送中であるメッセージが表示される。
転送が完了すると画像管理ソフト「PictureProject」が起動、転送した画像が表示される。
転送にかかる時間は、最大サイズの
[6M:高画質(2816 × 2112)] で、1枚あたり約5秒程度、10枚で1分弱であった。転送中に画像の閲覧など他の操作はできない。 |
オプションで用意されている
ワイヤレスプリンターアダプターPD-10を利用すれば、PictBridge
対応のプリンターにワイヤレスで直接プリントが可能だ。今回は転送枚数とバッテリーの関係までは検証できなかったが、USB接続による転送よりは電力を消耗すると思われるので、
1日遠出して撮影し、 数十枚にのぼる画像の転送となるとバッテリーの消耗が気になるところではある。
パソコンとの初期設定では、転送先に複数のパソコンを設定できる。そのため COOLPIX
S6 で転送先のパソコンを切り替えながら、選択した画像だけを指定したパソコンだけに転送できる。そのため会社や学校などでネットワークは構築されているが、1台のデジタルカメラを共有しているような環境なら重宝するだろう。
カードを取り出したり、ケーブルの抜き差しなしに転送ができるのは、理屈としてわかっていても不思議な感覚だ。できれば店頭でもワイヤレスによる転送をデモンストレーションして欲しい。理屈で説明されるよりも、体験してみるとその快適さはストレートに伝わるだろう。
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再生する画像はあらかじめ指定することが可能で、動画効果には
[モーション][ムーディー][スロー][ファースト][セピア] があり雰囲気が異なる動きが楽しめる。利用できる BGM は[威風堂々][トルコ行進曲][大きな古時計][カノン][スカボロフェア]
が内蔵されていて、パソコンに接続して、自分の好きな曲を転送して利用することもできる。転送できるのは、1曲当たり3分までで3曲までだ。(Windows
のみ)
「Pictmotion」の利用には
SDカードが必要で、作成した動画を保存してパソコン上へコピーして再生することも可能だ。(Windows
のみ)
少し気になったのは、「Pictmotion」とは別に従来からのスライドショー機能もあることだ。あるのは別に構わないのだが、「Pictmotion」が再生モードの1つに組み込まれているのに対して、スライドショーは再生モードでさらに
[MENU] ボタンを押さないと出てこない。機能的には似ているので、同レベルで扱ってもよいのではないか。 |
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それと「Pictmotion」再生時に、BGMの音量を変えることができないのは不便だ。初期設定のボリュームはそれなりにあるので、人が集まる場所での再生は躊躇してしまうだろう。それに動画作成時には画像を選びなおしたり、何度か再生を確認することとなるので音量が一定のままというは使いにくい。
COOLPIX S6 は見やすい3型液晶モニターを搭載していることもあって、メディアプレーヤー的な楽しみができるのはユニークだが、もう少し柔軟な操作性が必要だろう。
画素数は COOLPIX S3 から変更はなく、1/2.5型CCDで有効600万画素を搭載している。ノイズの発生もほとんどなく、日常の撮影において画質の面で不満を感じることはないだろう。周辺光量の不足が見られることもあるが、色のにじみなどはほとんど無くニッコール
EDレンズの性能の高さを感じさせる。
撮影時に気になった点として、COOLPIX
S6 は大型の3型液晶モニターを搭載しているのでボディサイズも大ぶりなため、ホールドが不安定になることがある。構え方に慣れていないせいもあると思うが、手ぶれすることが何度かあった。
撮影時に手ぶれすると、液晶モニター上に手ぶれ警告が表示され、撮影画像を保存するか否かを聞いてくる。失敗画像でメモリー容量をムダにしなくてすむが、どうやってもぶれてしまうときはあるので、カメラ側でぶれ補正のフォローが欲しい。
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シーンモード [風景]
シャッタースピード
1/100秒、F8.5。若干、周辺部分で光量不足がみられるが、春の爽やかな風景となった。 |
シーンモード [クローズアップ]
シャッタースピード
1/13秒、F4。子供やペットの顔へのアップは、手ぶれしやすいので注意が必要だ。 |
シーンモード [オート]
シャッタースピード
1/190秒、F4。
高い位置の枝に咲いていたので、少しズームして撮影。 |
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COOLPIX S6
には充電とパソコンへの画像転送が可能なクレードル「COOL STATION」が付属する。クレードルから付属のAVケーブルで、テレビに繋いでスライドショーが楽しめる。また、PictBridge
に対応しているので、対応するプリンターとクレードルに乗せてUSBケーブルで接続すれば COOLPIX
S6 側の操作でプリントが可能だ。
本体の底面にもマルチコネクター端子があり、付属のACアダプタを繋いで本体充電が可能だ。底面には三脚用の穴もある。
付属するバッテリーは、フル充電で約200枚の撮影が可能だ。このクラスでは平均的だが、ワイヤレス転送や「Pictmotion」など撮影以外の機能が充実しているので、それらの積極的な利用を考えると不安が残る。 |
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パッケージには、イメージリンク対応プリンターアダプター「ドックインサート
PV-11」が含まれる。「イメージリンク」は、対応するデジタルカメラとプリンターをワイヤレスで接続してプリントするための規格で、コダックが提唱している。アダプターを使うことで、コダックのイメージリンク対応プリンタに載せるだけでプリントができる。 |
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説明書は2種類付属し一般的な使用説明書の他に、箱から出して充電、撮影(オート撮影)、パソコンへの転送の手順を簡潔に説明した「簡単操作ガイド」も付属する。 |
本体の他に、クレードル、USBケーブル、バッテリー、ACケーブル、AVケーブル、イメージリンク対応プリンターアダプター「ドックインサート
PV-11」、ストラップ、ソフトウェア、説明書2冊が付属する。 |
※CIPA規格:カメラ映像機器工業会(Camera & Imaging Products
Association)が定める電池寿命測定方法についての統一規格。
COOLPIX S6 は、高精細な3型液晶モニターやロータリーマルチセレクターによる操作性、さらに画像のワイヤレス転送と動画効果が得られるスライドショー「Pictmotion」など、先進的ともいえる機能を数多く搭載している。
特にワイヤレス転送は、カードの抜き差しやクレードルへのセットなど、パソコンの前に座る必要がなく転送できる感覚はとても新鮮だ。個人的には家庭での利用よりも、デジタルカメラを何人かで共有するオフィスや学校、サークルなどでの利用に最適だと思う。
それら見どころはあるが、物足りないのはやはり手ぶれへの対応である。
画素数や CCD
サイズなどで機能的に上位となる
COOLPIX
P3、
P4 は手ぶれに対応しているため、手ぶれへの対応は
S シリーズと P シリーズでの棲み分けなのかもしれない。しかし、ボディデザインに象徴されるように、両者を選択するユーザー層は異なるはずで、S
シリーズの最上位モデルとして搭載しても良かったのではないか。
現状で「スタイリッシュで、手ぶれしないデジタルカメラ」がラインナップに存在しないのは残念。ワイヤレス転送やスライドショーも魅力的ではあるが、ぶれて失敗写真が多くなってしまうと、それら能力も発揮しきれないのではないだろうか。
それら不満なところはあるものの、視野角の広い3型液晶モニターやレンズ性能の高さなどデジタルカメラの基本性能はシッカリとしている。ワイヤレス転送と「Pictmotion」の活用できそうなシーンが思い浮かべば、購入の候補に加えてほしい。