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撮影モードにはオート撮影モードのほか、被写体の状況を自動判別して最適なシーンモードを選択する「おまかせシーンモード」を含むシーンモードが16種類、笑顔でシャッターが自動的にきれ、美肌効果、目つぶり軽減機能が働く「ベストフェイスモード」、動きのある被写体にピントを合わせ続ける「ターゲット追尾モード」と豊富に用意されている。
オート撮影モードでは露出補正や鮮やかさ、色合いを細かくコントロールできる「クリエイティブスライダー」が利用できる。これを利用すればモノクロ写真やセピア調の写真、暖かみのある写真など、色調を自分好みに変化させて撮ることができる。背面のロータリーマルチセレクターの左右キーで、露出補正、鮮やかさ、色合いの項目を選択し、回転操作でスライダーを動かすことができる。同機能は色補正に使えるが、「クリエイティブスライダー」という言葉が表すとおり意図的に色調を変化させてクリエイティブな写真を撮る機能として積極的に楽しむのも良いだろう。設定は電源オフにしても記憶されているが、できれば気に入った設定を複数記憶して、即座に呼び出せるカスタムモードが用意されていれば使い勝手が良くなるだろう。 |
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S8000の謳い文句に「夜撮りキレイテクノロジー」がある。これはある1つの機能を差しているのではなく、「高感度低ノイズ」「レンズシフト方式手ブレ補正(VR)機能」「モーション検知」「新フラッシュ制御」の、4つの機能の総称だ。
「高感度低ノイズ」は新しい画像処理エンジンの搭載により、高感度ISO設定時の低ノイズを実現している。「レンズシフト方式手ブレ補正機能」は撮影時の手ぶれによるブレ幅をCCD駆動により相殺する機能だ。「モーション検知」は手ブレや被写体の動きを検出すると明るさや、手ぶれしやすい望遠時に自動的にISO感度をアップさせシャッタースピードを速めに設定する。「新フラッシュ制御」は被写体までの距離情報や明るさの状況などを判断し、シャッタースピードとISO感度を制御しつつストロボを自動発光する機能だ。
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ISO100
シャッタースピード
3.0秒
F3.5 |
ISO200
シャッタースピード
1.6秒
F3.5 |
ISO400
シャッタースピード
0.8秒
F3.5 |
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ISO800
シャッタースピード
0.4秒
F3.5 |
ISO1600
シャッタースピード
1/5秒
F3.5 |
ISO3200
シャッタースピード
1/10秒
F3.5 |
今回はISO感度を変えながら夜景撮影を行ってみた。感度が上がるにつれエッジや細かなディテールは失われていくが、不自然なカラーノイズの発生はほとんど見られない。ISO800までなら被写体の立体感も保たれているので、常用とは言わないもののシャッタースピードを稼ぎたいときには重宝するだろう。
S8000は720p(1280×720、ビットレート約8.1Mbps)によるハイビジョンムービーの撮影に対応する。ハイビジョンムービーによる撮影は手軽で、背面の動画撮影ボタンを押すだけだ。
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撮影中、光学ズームの利用はできず電子ズーム(最大2倍)のみ利用できる。そのためズーム利用時には画質に劣化が伴うので、画質が気になるならズームは固定と割り切った方が良いだろう。
AFは画面の中心部分で合わせ、AFモードが「シングルAF」の場合は固定、「常時AF」の場合は常に被写体にピントを合わせ続ける。だたし「常時AF」の場合、静かな環境での撮影ではレンズ駆動音が記録されてしまう場合もあるので、気になる場合は「シングルAF」を選択しよう。撮影時には自動的に画面の縦横比が16:9になり、液晶モニターも上下に黒い幕が入る。
撮影時間は利用しているメモリーカードの容量に関係なく最大29分までだ。
これらズームやAF、撮影時間などで制限事項があるので本格的な動画撮影には不向きだが、思い立った時に即撮影できる手軽な機能として利用するのには向いている。 |
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動画はMPEG-4 AVC/H.264のMOV形式で記録される。MOV形式は画像管理・編集ソフトでも対応するものが多く、動画共有サービス「YouTube」にもアップできるなど、パソコン環境での使い勝手がよい。逆にテレビやレコーダーなどAV環境では対応するものはあまり多くないので、撮影後の動画の管理や鑑賞など、どうするか考えておいた方がよいだろう。
ムービー サンプル(MOV形式) |
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ハイビジョンムービー
画像サイズ 1280×720(ファイルサイズ:11MB) |
※動画再生環境に関する質問にはお答えできません。 |
そのレタッチ機能には、コントラストと鮮やかさをアップする「簡単レタッチ」機能、逆光などで暗くなってしまった被写体のシャドウ部分を明るく補正する「D-ライティング」機能、人物の肌を滑らかに補正する「美肌」機能がある。いずれも3.0型の大きな液晶モニターを活かし、実行前と後を見比べながら適用することができる。また、これら実行後はオリジナルのファイルとは別名のファイルとして自動保存されるので、処理の結果が気に入らなければ削除しても大丈夫だ。
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バッテリーは専用リチウムイオン充電池EN-EL12が付属し、S8000にバッテリーをセットしたまま、USBケーブルを介して充電できる。そのためUSB端子を搭載するACアダプターが付属する。外出時でもパソコンのUSB端子からの充電が可能なので、電源コンセントの数が限られるカフェや新幹線内での充電に便利だ。フル充電には約4時間必要で、フル充電での撮影可能枚数は、約210枚(※CIPA規格準拠)となっている。 |
※CIPA規格:カメラ映像機器工業会(Camera & Imaging
Products Association)が定める電池寿命測定方法についての統一規格。
S8000の特長的な機能をピックアップして紹介してきたが、シーン自動判別機能や最大12人まで対応する顔検出、ハイビジョンムービー撮影など、現在のデジタルカメラに望まれる基本機能に加え、光学10倍ズーム、高精細な解像度約92万画素の液晶モニター、「夜撮りキレイテクノロジー」など先を行く機能がバランス良く搭載されている。S8000はこれら機能がスリムなボディに凝縮され、とても満足度の高いデジカメだ。
そんな単体で見ると満足度が高いS8000だが、COOLPIX Sシリーズのラインアップとしてトータルで見ると物足りなく感じる部分もある。それはS8000がSシリーズの最上位モデルにも関わらず、下のモデルと比べた場合に決定的な大きな差が感じられない点だ。光学ズームの倍率や液晶モニターなどS8000が勝っている部分はある。また、店頭価格でもS8000が30,000円前後、1つ下のS6000が28,000円前後でその差は小さく、いっそのことS8000を選ぶユーザーが多いかもしれない。だが、できればS8000は最上位モデルとして、下を大きく引き離す特別なものが欲しいのだ。
例えばデジカメの次のトレンドとなりつつあり、COOLPIX P100でも採用されている高感度撮影に強い裏面照射型CMOSイメージセンサーの採用がそれだ。S8000の「夜撮りキレイテクノロジー」と裏面照射型CMOSイメージセンサーが組み合わされば、さらなる画質向上も期待できるだろう。光学ズームの倍率や液晶モニターなどの機能的な優位性も有り難いが、画質にコダワリを持つユーザーにとっての最上位モデルの登場も望みたい。もっとも技術進歩の激しいデジカメの世界では、優位性もあっと言う間に優位でなくなる可能性もあるのだが…。
それら気になるところは今後のモデルに期待するとして、現在手にすることができるコンパクトデジタルカメラとしてS8000は、テクノロジーのトレンドをうまく取り入れながら、独自の特長も盛り込まれた満足度の高い一台だ。特に高倍率のズームと大きくて綺麗な液晶モニター、高感度に強いデジカメを探しているなら、S8000を是非とも候補に加えて欲しい。