さらに、写真の絵作りとして、もう一歩推し進めた機能が「アートフィルター」だ。これは撮影モードとして選択・撮影するだけで、文字通りアート作品のような印象深い効果が得られるフィルター機能だ。E-P2では新たに「ジオラマ」「クロスプロセス」の2つのアートフィルターが追加されている。「ジオラマ」は風景写真などで、ミニチュア写真のような被写界深度が極端に浅い写真を撮影できる。「クロスプロセス」は通常とは異なり、独特の雰囲気が漂う色合いで撮影される。各フィルターは被写体によって、うまくハマる場合とそうでない場合があるので、被写体を変えながらいろいろと試してみると良いだろう。フィルターによってはシャッターを切った後に、処理の待ち時間が必要となる場合もある。
また、アートフィルターはハイビジョン動画撮影でも利用可能だ。ただし、実際の撮影時間が効果を適用させた動画の再生時間と異なる場合がある。例えば「ジオラマ」の動画撮影では、ミニチュアらしさ、スケール感を演出するため高速再生(
ムービーサンプル参照)される。そのため最終で10秒程度の動画が欲しい場合には、実際には30秒程度の撮影が必要で、その間はカメラを大きく動かさず、できるだけ固定しておいた方が鑑賞しやすい動画になる。
これらの効果はパソコンに取り込んで、後から画像編集ソフトでも施すことができるが、思ったような効果を得るには技術も必要で手間もかかる。それに、撮影しているその時に、目の前の被写体が即座にアートな仕上がりになるのは想像以上に楽しい。
コンパクトデジタルカメラからの買い換えユーザーの中には、撮像素子が大きくなることで、高感度撮影での画質向上に期待する人もいるだろう。E-P2では細かいステップで、最高ISO感度6400まで対応し、高感度撮影時のノイズ低減機能も搭載する。設定の違いは下のサンプルを参照して欲しいが、ISO1000〜1250まででも鑑賞に堪えられる画質が保たれている。それ以上となるとノイズの影響で細かなディテールや質感が失われているが、ブログ掲載用に画像編集ソフトで縮小するなどすればノイズも目立たなくなり、利用範囲も広げることができる。
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ISO100
シャッタースピード
1.6秒
F4.1 |
ISO160
シャッタースピード
0.8秒
F4.1 |
ISO200
シャッタースピード
0.6秒
F4.1 |
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ISO250
シャッタースピード
0.5秒
F4.1 |
ISO400
シャッタースピード
0.3秒
F4.1 |
ISO500
シャッタースピード
1/4秒
F4.1 |
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ISO640
シャッタースピード
1/5秒
F4.1 |
ISO1000
シャッタースピード
1/8秒
F4.1 |
ISO1250
シャッタースピード
1/10秒
F4.1 |
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ISO1600
シャッタースピード
1/13秒
F4.1 |
ISO2500
シャッタースピード
1/20秒
F4.1 |
ISO3200
シャッタースピード
1/25秒
F4.1 |
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ISO4000
シャッタースピード
1/30秒
F4.1 |
ISO6400
シャッタースピード
1/50秒
F4.1 |
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E-P2はハイビジョン動画撮影が可能で、画像サイズは1280×720ドット、AVI形式で記録される。いわゆるフルハイビジョンではないが、気軽に高画質な動画が撮影できる。ただ、最近のハイビジョン撮影が可能なデジタルカメラで増えている、ワンタッチで動画撮影ができる録画ボタンは搭載せず、E-P2の場合はモードダイヤルを動画モードに設定しなければならない。そのため、咄嗟の時には切り替えに少し手間がかかる。また動画撮影中はシーン自動判別機能「iAUTO」は利用できず、顔検出が利用できないのは残念だ。
反対に動画撮影で重宝したのが、デジタル水準器だ。静止画の場合は、画像に傾きがあっても画像編集ソフトなどで容易に補正できるが、動画の場合はそうもいかない。しかも傾きに気が付かないまま延々と撮影された動画の鑑賞は、結構ツライものがある。動画撮影中、常にモニター上で水平が確認できるのは非常に便利だ。
また先にも触れたが、今回お借りした交換レンズM.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8、M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6はAF起動音が大きく、動画撮影時にはジー、ジーと音が記録されてしまった。4月下旬発売予定の広角ズーム
M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mmF4.0-5.6は、AFの高速化と静音化も図られているとのことで、動画利用にも期待できそうだ。
ムービー サンプル(AVI形式) |
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ハイビジョンムービー
iAUTO
M.ZUIKO DIGITAL 17/F2.8、画像サイズ 1280×720(ファイルサイズ:41MB) |
ハイビジョンムービー・
シーンプログラム [ジオラマ]
M.ZUIKO DIGITAL 17/F2.8、画像サイズ 1280×720(ファイルサイズ:19.32MB) |
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※動画再生環境に関する質問にはお答えできません。 |
再生モードではサブダイヤルの操作により、1枚、4枚、9枚、16枚、25枚、49枚、100枚表示、さらにカレンダー表示と、多段階で一覧表示・検索できる。スライドショー機能では、著名なクリエイター制作のBGMを5種類内蔵する。
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また編集機能としては、「階調オート」「鮮やかさ調整」などの色調補正やリサイズ、トリミング機能の他、最大3枚までの画像合成機能を搭載する。動画の編集には対応していない。
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バッテリーは専用リチウムイオン充電池BLS-1を使用する。付属のバッテリーチャージャーで、約3時間30分でフル充電が可能だ。フル充電での撮影可能枚数は、約300枚(※CIPA規格準拠)となっている。 |
※CIPA規格:カメラ映像機器工業会(Camera & Imaging
Products Association)が定める電池寿命測定方法についての統一規格。
E-P1の大ヒットを受け、わずか5ヵ月ほどで登場したE-P2は、デザインや機能の多くを前モデルから踏襲したマイナーチェンジモデルだ。E-P2発売後もE-P1も併売されており、E-P2が上位モデルという位置づけになる。
さらにこのレビュー執筆中に、マイクロフォーサーズ規格のニューモデルとして、OLYMPUS PEN Lite E-PL1が発表された。こちらはストロボ内蔵やカラーバリエーションの展開が図られるなど、より親しみやすくカジュアルな方向に進んだモデルだ。内部の基本スペックの差は僅かなので、デザイン面の違いでクラシカルなE-P2、モダンなE-PL1といったところだ。
同じマイクロフォーサーズ規格のデジタル一眼では、前回レビューを行ったパナソニックDMC-GF1を初めとするLUMIX Gシリーズがある。E-P2(E-P1)とは比較される機会が多く、両者を一緒に取り上げた書籍も出ているほどだ。そこにさらにE-PL1が登場したこともあり、マイクロフォーサーズ一規格が賑わいを見せている。
その中においてE-P2のポジションは、やや微妙になった印象を受ける。E-P2とE-P1の大きな違いはアクセサリーポートの搭載と、アートフィルターの追加が大きなポイントだ。 しかし、よほどのコダワリがなければE-P1からの買い換えは考えにくい。また、同じマイクロフォーサーズ機の中でも、店頭価格が高めなのも気になるところでもある。
ただ、デジタル一眼はボディの基本性能に加えて、交換レンズにより撮影の幅が広がるところが最大の楽しみだ。コンパクトデジタルカメラのように購入した状態が性能の上限ではなく、レンズの交換やアクセサリーによって自分なりに性能を高めることができる。その意味では長い付き合いになる可能性が高く、性能、携帯性、デザインなどデジタル一眼に何を求めるのかハッキリさせておく必要がある。
ニューモデルの発表もあり、これからマイクロフォーサーズ機の購入を考えているユーザーにとっては、嬉しくも悩ましい状況だが、そのスタイリングや質感、操作性を含め、持っているだけでコダワリを感じさせるのは、E-P2の最大の魅力といって良いだろう。