オリンパス E-PL1s レビュー

シーン自動判別機能「iAUTO」と、色調や背景ボケを手軽に調整できる「ライブガイド」

カメラを被写体に向けるだけで自動で最適な撮影モードを設定する「シーン自動判別機能」は、すでに馴染みの機能となったが、E-PL1s では「iAUTO」として利用できる。自動判別するのは [ポートレート] [スポーツ] [風景] [夜景] [マクロ] [夜景&人物] の6種類で、「iAUTO」モード中に本体背面の [START] ボタンを押すと、色調や明るさ、背景のボケなどを調整できる「ライブガイド」が利用できる。
「ライブガイド」では [色の鮮やかさを変える] [色合いを変える] [明るさを変える] [背景をぼかす] [動きを表現する] と、撮影時のちょっとしたコツを参照できる [撮影のヒント] が用意されている。色調や背景ボケをコントロールする場合は、ディスプレイの縦方向にスライダが表示されるので、本体背面の上下キーを使って適用量を調整する。ボケ具合はリアルタイムに変化しモニター上で確認できるので、意図する演出をコントロールしやすい。

ライブガイド:背景までくっきり

ライブガイド:背景をぼかす
撮影のヒントは [子供の撮影ヒント] [ペットの撮影ヒント] [花の撮影ヒント] [料理の撮影ヒント] [構図を工夫して撮影する] を参照できる。例えば [料理の撮影ヒント] では、「斜め45度くらいで撮ると立体的に撮れます」「明るい窓際や照明で、斜め後ろから照らして撮ります」「主題を大きくアップで撮りましょう。縦構図奥行きが出ます」と端的ながらも的確なアドバスが用意されている。これらアドバイスを少し意識するだけで、従来とは違ったワンランク上の写真を撮ることができるだろう。
もうひとつ、意図的な画づくりができる機能として仕上がりモード「i-FINISH」があるが、こちらに関しては過去の E-P2 レビューを参照して欲しい。

何気ない写真を印象的な写真に演出する「アートフィルター」

同じオリンパスのデジタル一眼シリーズでも搭載されているのが、「アートフィルター」機能だ。これは各種のアートフィルターを選択して撮影するだけで、何気ない写真を印象的な写真に仕上げてくれる。それぞれの効果の度合いを細かく調整することはできないが、手軽に印象的な演出をプラスできる。利用できるフィルター数は従来と同じく6種類で、こういった写真の楽しみが広がる機能は、マイナーチェンジとはいえども新たなフィルターの追加が欲しいところだ。
注意が必要なところでは、例えば「ジオラマ」で撮影した画像を、ブログ掲載用として後からパソコンの画像編集ソフトで極端に縮小すると、その効果が薄れてしまうこともあったので、効果と最終目的の画像サイズの関係には注意が必要だ。

ノーマル

アートフィルター:ポップアート

アートフィルター:トイフォト

アートフィルター:ファンタジックフォーカス

アートフィルター:ジオラマ

アートフィルター:ラフモノクローム

アートフィルター:ジェントルセピア
 

ワンタッチで撮影がスタートできる、ハイビジョン動画撮影モードを搭載

E-PL1sは解像度 1280×720ドットによるハイビジョン動画撮影に対応する。記録される形式はAVIで高画質な動画が撮影できる。撮影は背面の動画撮影専用ボタンを押すと、即座に撮影がスタートできる。利用できる撮影モードはプログラム、絞り優先モード、マニュアルモードに加え、上で説明したアートフィルターも利用可能だが、シーン自動判別機能「iAUTO」は利用できない。

今回お借りした交換レンズ M.ZUIKO DIGITAL 14 - 42mm F3.5-5.6 Uと、M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0-5.6は動画撮影に対応したタイプで、動画撮影時も静音性と高速なAFが可能だ。ただ、ズーミングの操作はズームリングを手動で回転させるので、一般的なビデオカメラの電動ズームを利用したスムーズな画角変更は慣れないと難しい。そのため手持ちの動画撮影中にズームリングの操作に気を取られると、カメラが大きくブレてしまうこともある。これは E-PL1s に限った事ではなく、元々が静止画が主体のデジタル一眼カメラなのでやむを得ないところだが、逆に背景をぼかした動画やレンズ交換によるメリットなど、従来のビデオカメラにはできない撮影を探求したほうが面白いだろう。

撮影サンプル

iAUTO
M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 U、シャッタースピード 1/400秒、F9.0、ISO200。

iAUTO
M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 U、シャッタースピード 1/6秒、F3.5、ISO200。
iAUTO
M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 U、シャッタースピード 1/200秒、F9.0、ISO200。

iAUTO
M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 U、シャッタースピード 1/400秒、F9.0、ISO200。

iAUTO
M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0-5.6、シャッタースピード 1/160秒、F5.0、ISO100。
iAUTO
M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 U、シャッタースピード 1/60秒、F4.0、ISO500。

iAUTO
M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 U、シャッタースピード 1/13秒、F3.5、ISO200。

iAUTO
M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 U、シャッタースピード 50秒、F4.1、ISO800。
iAUTO
M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 U、シャッタースピード 1/125秒、F5.0、ISO200。
ムービー サンプル(AVI形式)
 
ハイビジョンムービー
iAUTO
M.ZUIKO DIGITAL 17/F2.8、画像サイズ 1280×720(ファイルサイズ:39.44MB)
ハイビジョンムービー・
シーンプログラム [ジオラマ]
M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0-5.6、画像サイズ 1280×720(ファイルサイズ:50.70MB)
 
※動画再生環境に関する質問にはお答えできません。

約3時間30分でフル充電、約290枚の撮影が可能

バッテリーは専用リチウムイオン充電池BLS-5を使用する。付属のバッテリーチャージャーで、約3時間30分でフル充電が可能だ。フル充電での撮影可能枚数は、約290枚(※CIPA規格準拠)となっている。
※CIPA規格:カメラ映像機器工業会(Camera & Imaging Products Association)が定める電池寿命測定方法についての統一規格。

総論:

前モデルの E-PL1 は、同じペンシリーズの先発モデル E-P1 のマニア指向とは異なるベクトルで、カジュアル向けに舵を切り女性を中心にヒットした。そのヒットを受けて登場した今回の E-PL1s は、大きなトピックでもあるレンズとの組み合わせで世界最軽量の実現や、AFの高速化や静粛性など、レンズキットに含まれる交換レンズによるところが大きく、ボディ本体に目を見張るような変化はない。

そのため、E-PL1 ユーザーはホッと胸をなで下ろしつつ(?)、買い換えを望むユーザーはそれほど多くないだろう。反対に E-PL1 から大きく変更を加えなかったことはユーザーからの支持の大きさと、それに対するメーカーの自信の表れでもある。もちろん将来的には大きなモデルチェンジもあるだろうが、カジュアル路線のデジタル一眼として E-PL1s の存在は大きい。その意味では、これから初めてのデジタル一眼として、E-PL1s を手にしようとするユーザーにとっても安心感がある。

そして、ダブルズームキットに含まれる M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 Uと、M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0-5.6 は「こんなに軽くていいの?」と思ってしまうほどの軽さと小ささに驚かされる。従来は「ダブルレンズキット」といいつつも、その重さのため、いざ外出の際に2本のうちどちらのレンズを持って行くか悩んでいたのが、悩まずに両方持って行ける正に「キット」を実現した。

それはつまり撮影の楽しみを広げることに繋がったことを表している。写真を撮るのは好きでも重い荷物を持ち歩くのはイヤだというユーザーも居る。むしろ一般的なユーザーにはそちらの方が多いくらいで、今回の2本のレンズとE-PL1s の組み合わせが、さらなるデジタル一眼ユーザーの裾野を広げる一因になるかもしれない。

H-lab:山地啓之)
 オリンパス [ http://www.olympus.co.jp/ ]
 E-PL1s
 価格:オープンプライス 最新価格を調べる >>
 発売日:2010年12月4日
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