撮影サンプルから最適な設定ができる「シーンプログラムモード」

さらにμ710 には、「シーンプログラムモード」というのもある。
こちらは「ガイド機能」よりも、もう一歩シチュエーションを絞り込んだモードで、サンプル写真と説明文に従って最適な設定ができる機能だ。

用意されているシーンは23種類あり、 [ポートレート] [風景] [風景&人物] [夜景] [夜景&人物] [スポーツ] [屋内撮影] [キャンドル] [自分撮り] [寝顔] [夕日] [打ち上げ花火] [マナーショット] [料理] [ガラス越し] [文書] [オークション] [ショット&セレクト1] [ショット&セレクト2] [ビーチ&スノー] [水中ワイド1] [水中ワイド2] [水中マクロ] がある。

特徴的なものとして [寝顔] [ キャンドル] では、最高感度 ISO 2500 で撮影することができる。薄暗い場所でもフラッシュを使わずに撮影することが可能で、ロウソクの温かい雰囲気を壊してしまうこともない。
ただしこの場合の画像サイズは、2048 × 1536 ピクセル以下に制限され、ISO 2500 は [寝顔] [ キャンドル] 以外で利用することはできない。

また、 [夜景] [夜景&人物] [打ち上げ花火] は、状況によっては最大4秒のスローシャッターになるので、撮影時には三脚などでの固定が必要だ。

これらシーンごとのプログラムは、シーンが違ってもカメラ自体の設定は似通っているケースもある。しかし、慣れないユーザーにとっては具体的なサンプル写真から最適な設定ができるのは判りやすい。
少し物足りなく感じたのは、本体の生活防水機能を生かしたモードがあってもよいのではないか。薄暗い日中でも明るく撮影できる [雨降り] や、水滴がキラキラと輝いて撮影できる [水しぶきモード] などμ710 ならではのモードがあっても面白いと思う。

最大 ISO 1600により、手ぶれ・被写体ぶれに対応する「ぶれ軽減モード」

μ710 は、感度アップによる「手ぶれ・被写体ぶれ軽減モード」を搭載していて、ISO 感度の設定は状況に応じて自動で設定され、最大で ISO 1600 となっている。
感度アップによるぶれ補正にはノイズの発生は避けられないが、μ710 ではオリンパス独自の画像処理エンジン「TruePic TURBO(トゥルーピックターボ)」の「アドバンストノイズフィルターテクノロジー」により、ノイズと輪郭情報を識別することでノイズを抑えている。
さすがに最大感度 ISO1600 での撮影はノイズが多く(後の夜景サンプルを参照) 、ディティールが失われてしまうが、光量が十分ある屋外での動きが激しい子供・ペットの撮影や、一般家庭での室内での撮影などは ISO800 まででも充分ぶれを軽減してくれるので、常にノイズを気にするほどではない。

プログラムモード、シャッタースピード 0.4秒、F3.4、ISO64、マクロ。
手持ちで撮影のためぶれてしまった。

ぶれモード、シャッタースピード 1/30秒、F3.4、ISO800、マクロ。
ぶれ軽減モードによる ISO 感度アップにより、ぶれを補正できた。ISO800でも十分撮影可能だったため、ノイズも許容範囲内に収まった。

CCDサイズアップにより、高画素化でも満足のいく画質

個人的にはコンパクトデジタルカメラの画素数は、600万画素と800万画素の2派で落ち着くのではないかと考えていた。しかし、μ710 では710万画素となり、さらなる高画素化が計られている。

CCDのサイズはそのままで画素数だけ上げると、1画素あたりの面積が小さくなり、十分な光量を得られなくなる。カメラ内部の電気的な処理で明るくすることもできるが、それだとノイズが発生してしまう。そのためμ710 は700万画素を実現するため、CCDサイズを600万画素クラスの1/2.5型から1/2.33型にアップし、1画素あたりの面積を確保しながら高画素化を実現している。

その意味でも従来の600万画素と比較して驚くほど高画質というよりは、高画素化にともなう画質の低下をCCDサイズのアップで抑えたと思った方が良いだろう。
暗い環境での ISO 1600 撮影は別として、その他のモードではノイズ感も少なく高画質な撮影が可能だ。カラフルな被写体を撮影しても特定の色が強調されるようなこともなく、見た目の印象に近いナチュラルな色合いで撮影できる。

また、オートフォーカスには被写体が中央になくても自動的にピントが合う、iESP(Intelligent Electro Selective Program)オートフォーカスも利用できる。

シーンプログラム [風景]
シャッタースピード 1/250秒、F9。
爽やかな冬の季節感が感じられ良好な結果だ。

プログラム [マクロ]
シャッタースピード 1/200秒、F3.4。
部分的に白飛び気味のところもあるものの、毛の細かさなど710万画素の実力を発揮している。
ぶれ軽減モード
シャッタースピード 1/8秒、F3.4、ISO1600。手持ち。
感度アップによるノイズが見られるが、ぶれずに撮影できた。

お気に入り写真をまとめることができるアルバム機能と、充実の編集機能

再生モードでは、撮影時のモードやヒストグラムも確認可能で、ズームレバーの操作によって、25枚までのマルチ表示、撮影日ごとに表示できるカレンダー表示が可能だ。

xD ピクチャーカード内の写真は、お気に入りとしてアルバムにまとめることができる。パソコンへの転送後にも好きな写真だけ残して、分類しておくことができる。
また、 アルバム単位でのスライドショーにも対応し、BGM のオン・オフ、表示の切り替えスタイルに [フェード] [スライド] [ズーム] から選択できる。

さらにμ710 は編集機能も充実している。 [リサイズ] [赤目補正] をはじめ、[モノクロ] [セピア] への色変更、13種類のデザインから選択できる [フレーム合成] 、[明るさ] [鮮やかさ] の調整もできる。ユニークなのは8種類のテンプレートから作成できる [カレンダー合成] だ。お気に入りの写真を1分とかからずに、最大で2099年12月までのカレンダーに加工することができる。

年賀状作成も可能なソフトウェアの付属は ◎、バッテリーの充電時間には ×

本体側面に電源供給、画像転送・AV出力を兼ねたマルチコネクタ(USB端子)がある。ただし、本体へ直接電源を供給するには別売りのACアダプター(D-7AC)とマルチアダプター(CB-MA1)が必要だ。
PictBridge にも対応しているので、μ710 側の操作でプリンターへの直接出力が可能だ。コネクタカバーも防水のため、ゴムパッキンが施されている。

バッテリーは本体に合わせた薄型で、フル充電で公称約180枚(CIPA準拠※)の撮影が可能。710万画素になり記録時の電力消費がアップしたことを考慮しても、できれば200枚あたりまでがんばって欲しい。画素数のアップか、バッテリー寿命を望むかは意見が分かれるところだろう。

それと、付属するバッテリーチャージャーでのフル充電に約300分(カタログ値)かかるのは残念。外出前に急いで充電というわけには行かず、バッテリーが完全にゼロの場合に本体への電源供給には、別売りのACアダプターが必要なので、できれば1時間程度で急速充電できるバッテリーチャージャーを付属してほしい。もしくはクレードルに載せて充電できれば、普段からセットしておくことで充電時間が長くても気にならないと思う。

付属するソフトウェアは、撮影した画像を撮影日ごとに自動的に整理し、画像編集や年賀状の作成まで可能な「OLYMPUS Master」が同梱されている。機能的には市販のソフトウェアに近いものを持っていて、お得感がある。
さらに CD や DVD への書き込みにも対応する、高機能な「OLYMPUS Master Plus」へアップグレード(5,250円)することも可能だ。
本体の他に、バッテリー、バッテリーチャージャー、ACケーブル、USBケーブル、専用AVケーブル、ストラップ、ソフトウェア「OLYMPUS Master」、説明書が付属する。
※CIPA規格:カメラ映像機器工業会(Camera & Imaging Products Association)が定める電池寿命測定方法についての統一規格。

ぶれ軽減と生活防水で、アクティブな環境で使いたいユーザーにオススメ

μ710 のポイントはやはり手ぶれ・被写体ぶれへの対応と生活防水だろう。このクラスのコンパクトデジタルカメラでは、すでに画素数による競争が重要ではなくなった現在において、防水面での対応は他社にはないアドバンテージだ。

特に子供やペットの水遊びやお風呂など、水をともなうアクティブな環境ではそれら機能のメリットを発揮できるだろう。そんなアクティブさを感じさせない、スタイリッシュなボディデザインも魅力だ。特に子供やペットの撮影が多いユーザーで買い換えを考えているなら、μ710 は有力な候補といえる。

そのような買い換えユーザーにとっても「ガイド機能」や「シーンプログラムモード」など、はじめてμシリーズを触るユーザーや、撮影の知識が豊富ではないユーザーに対してのアプローチも充実していて、具体例を示しながらフォローしてくれてる。

μ710は、スタイリッシュなボディデザインに、手ぶれ・被写体ぶれ補正、判りやすいガイド機能など、今のコンパクトデジタルカメラに望まれる機能のほとんど搭載している。おまけに生活防水対応と守備範囲も広く、屋内外を問わず日常の様々なシーンでアクティブに撮影を楽しみたいユーザーにオススメだ。よりカジュアルに持ち歩きたいなら、ビビッドなカラーラインアップのカリビアンブルーサンシャインオレンジをチョイスしてみよう。
H-lab:山地啓之)
オリンパス [ http://www.olympus.co.jp/ ]
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発売日:2006年2月17日
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