パナソニック LUMIX DMC-FX55 レビュー

光学式手ぶれ補正と、動き認識でぶれを補正するインテリジェント ISO

現在のコンパクトデジタルカメラにおいて、手ぶれ・被写体ぶれ補正機能は補正方式の違いはあるとしても、すでに一般的な機能となった。
特にレンズ駆動による光学式手ぶれ補正に関しては、LUMIX シリーズが老舗と呼べるほど歴史は古く、はじめて採用されたのは2003年に登場した DMC-FX1 にさかのぼることができる。レンズ駆動による手ぶれ補正は、画質に影響を与えないことが大きなアドバンテージだ。

それに対して高感度 ISO による被写体ぶれ補正は、感度アップによるノイズの発生が避けられない。そこで各社ノイズの低減に様々な工夫を凝らしているが、DMC-FX55 では被写体ぶれ補正と画質のバランスを保ってくれる「インテリジェント ISO 感度モード」を搭載している。
インテリジェント ISO 感度モードは、自動で感度を判断するとしても必要以上の高感度でノイズが増大しないよう、あらかじめ上限を ISO400、800、1250 のいずれかに設定することができる。そして被写体の明るさと動きを検知しながら、設定された感度の範囲内で最適な設定を判断し、ぶれを押さえつつノイズの発生も最小限に抑えてくれる。
撮影時にはモニター上に [iISO] アイコンが表示され、適用された感度は撮影後に表示されるプレビュー表示や再生モードで確認することができる。
実際に [ISO MAX 1250] で撮影してみたところ、動きの有無や明るさの変化によって、試した環境では ISO200〜1250 まで幅広く適用されていた。
インテリジェント ISO 感度モードは、通常撮影、マクロモードで設定可能で、新機能である [おまかせ iA ] モード中にも働く。

高感度撮影のノイズ発生を抑制、最高感度 ISO6400 を実現

先に触れたように高感度ISO撮影では、ノイズが発生しやすくなるが、DMC-FX55 ではノイズの発生をおさえるため、新しい高感度モードも搭載している。

高感度モード、シャッタースピード 1/8秒、F2.8、ISO4000。
これはシーンモード内の高感度モードで、CCDの隣接するいくつかの受光素子を1つの素子としてまとめることで、暗い環境で不足する光量を補いつつノイズの発生を抑えている。
そのため利用できる記録画素数は 3M(4:3)、2.5M(3:2)、2M(16:9)に限られる。

さすがに ISO3200〜5000 あたりでの撮影では、立体感が失われるためお世辞にも高画質とは言い難いが、夜、ストロボ無しの手持ち撮影でも目で見ているのと近い状態で撮影できるのは面白い。画像サイズが 3M以下となるので用途は限られるが、縮小してブログに掲載するなどの用途には充分利用できるだろう。

高感度モードでは、最高感度 ISO6400 での撮影も可能だが、任意で ISO6400 を選ぶことはできず、ISO1600〜6400 間での自動設定となる。

撮影サンプル

シーンモード [風景]
シャッタースピード 1/200秒、F8.0、ISO100。
マクロモード
シャッタースピード 1/15秒、F2.8、ISO100。
iA シーンモード [風景]
シャッタースピード 1/400秒、F3.3、ISO100。

文字の焼き込みなどユニークな編集、活用ができる再生モード

フィルムカメラでは撮影時に日付を一緒に焼き込むことができたが、DMC-FX55 でも同様に画像へ日付やコメントを焼き込むことができる。
まず、再生モードの状態で「タイトル編集」として、画像にふさわしいタイトルや言葉を入力する。ひらがな/カタカナ(最大15文字)、英数大文字/小文字/記号(最大30文字)が入力可能で、漢字変換や予測入力などはない。入力ができたら「文字焼き込み」として、日付や先ほど入力した言葉の有無を選択して実行すると、画像の右下に文字が焼き込みされる。
焼き込む際の文字サイズは変更できないので、8M サイズのような大きな画像に文字を入力すると、文字が小さくて判読できない可能性がある。そのため文字の焼き込みでは、画像を 3M サイズ以下に縮小して文字の大きさを保つようになっている。

画像への文字の焼き込みには賛否両論あると思うが、編集後の画像は別画像として保存することが可能で、プリントアウトしてからの整理もしやすく、コメントを入れることでプレゼントとしてユニークな演出もできるだろう。
また、シーンモードの赤ちゃんモードやペットモードで、生年月日などの情報をあらかじめ設定しておくと月齢・年齢を焼き込むこともできる。

気になるのは文字の入力を「タイトル編集」で行い、焼き込みを「文字焼き込み」として、それぞれ別メニューで行わなければならない点だ。できればひとつのメニューの中で文字入力から焼き込みまで一貫してできる方が扱いやすいと思う。
また、文字の色が変えられないので、画像との重なりによっては文字が読みづらくなることもある。できれば文字色は数種類から選べたり、よく使う言葉や顔文字が簡単に入れられるような仕掛けがあっても面白いのではないだろうか。
動画から1コマを静止画として切り出したり、連続する9コマを並べて1枚の静止画として保存することもできる。
スポーツのフォームを研究したり、パーティーでクラッカーを鳴らした決定的瞬間などを、連続の静止画で残すといったユニークな使い方ができそうだ。
スライドショーでは「カテゴリー再生」として、撮影時に適用したシーンモードの「人物」「風景」「夜景」といったカテゴリーで絞り込んで再生することができる。
容量が大きなメモリーカード内に過去の撮りっぱなしの画像が残っている場合にも活用できそうだ。
また個々の画像に「お気に入り」を設定することで、特定の画像に絞り込んでスライドショー再生もできる。

大型モニターを搭載しながらも、フル充電で約280枚の撮影が可能

DMC-FX55 には約120分でフル充電が可能な専用のバッテリーチャージャーが付属する。フル充電の状態で約280枚(※CIPA規格準拠)の撮影が可能だ。LUMIX シリーズには撮影枚数が300枚を超えるモデルも存在するが、DMC-FX55 が 3.0型のモニターを搭載していることを踏まえると満足できる枚数だ。
本体の他に、USBケーブル、バッテリー、バッテリーケース、バッテリーチャージャー、AVケーブル、ストラップ、ソフトウェア、説明書が付属する。
※CIPA規格:カメラ映像機器工業会(Camera & Imaging Products Association)が定める電池寿命測定方法についての統一規格

総論:大きな液晶モニターと、手軽に撮影できるデジカメを求めるならオススメ

DMC-FX55 の新機能や特長のある機能を中心に見てきたが、ここでも紹介し切れていないものもあり、非常に多機能なデジタルカメラだ。

そんな中でも DMC-FX55 の目玉となるのは、撮影シーンを自動で判断してくれる「おまかせ iA」と、大きな3.0型液晶モニターだろう。

手ぶれ・被写体ぶれ補正や顔認識など、ポイントとなる機能が一巡した感のあるコンパクトデジタルカメラにおいては、各社とも機能面での差が無くなりつつあり、閉塞感が懸念されている。

そのような状況において「おまかせ iA」は、話題性のための奇をてらった機能ではなく、触ってみて素直に便利だと感じられる実用的な機能だ。もちろん「おまかせ iA」だけで全てのシチュエーションをカバーできるわけでなないが、スナップや記念写真などの日常的な利用で活躍してくれ、歓迎するユーザーも多いはずだ。

しかし、多機能であることは嬉しい反面、気になる点もなくはない。
というのも LUMIX シリーズは過去を通じてしばらく、本体の操作キーやメニュー構成に大きな変更がされていない。旧モデルから買い換えても操作に迷わないというメリットはあるが、後から追加されていく機能が、これまでのユーザーインターフェイスのままで使いやすいとは限らない。

例えば本編でも触れた動画から静止画を切り抜く機能や、露出補正を変えつつ段階的に自動撮影してくれるオートブラケットなどは、本体の操作だけではピンと来にくい。取扱説明書を見ればよいのだが、せっかくの便利な機能が気が付かれずに埋もれてしまう可能性もある。
DMC-FX55 は大型の3.0型液晶モニターを搭載しているので、ヘルプ表示を充実させるなど使いやすさに対する新しいアプローチがあっても良いと思う。

さて、DMC-FX55 はネットで3万円台後半〜4万円台半ばの価格が付いていて、コンパクトデジタルカメラとしては少し高めの印象を受ける価格帯だ。しかし、2.5型液晶モニターを採用する DMC-FX33と比較しても中身に大きな差はなくバッテリー寿命も同等で、価格差は数千円程度に収まっている。液晶モニターのサイズはモノとしての満足度を思いのほか押し上げてくれる効果があるので、この価格差を納得できるなら DMC-FX55 を強くオススメしたい。
H-lab:山地啓之)
パナソニック [ http://panasonic.jp/ ]
LUMIX DMC-FX55
価格:オープンプライス 最新価格を調べる >>
発売日:2007年8月25日
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