カンタンからコダワリまで対応する、豊富な撮影モードを搭載

撮影、再生モードの切り替えは上部のモードダイヤルで行う。回転するダイヤル式はたくさんのモードを手早く切り替えられるうえ、一目でどの状態になっているのか判断しやすく、マニュアルカメラのようで判りやすい。
撮影モードはハートマークの「かんたんモード」、カメラマークの「通常撮影モード」、「マクロモード」「シーンモード( [SCN] )」がある。各モードで [MENU] ボタンを押すと液晶モニターで詳細な設定が可能だ。
「かんたんモード」では、画質設定など撮影に必要な最小限の設定変更しかできない。画質設定もここでは「引き伸ばし」「サービス版」など画像を使う最終目的に応じたメニュー名で馴染みやすい。
撮影時には逆光時に画像全体を明るく補正する「逆光補正」を利用することができる。
「シーンモード( [SCN] )」では、「赤ちゃん」「美肌」「雪」「パーティー」「花火」など、14種類のモードを搭載している。
それらモードの選択時にメニュー左の「 i 」を選択する(左方向ボタンを押す)と、撮影モードの解説を参照することができる。しかし、使い始めには「 i 」の表示だけではそのことに気がつかず、単なるメニューを選択したときの印としか思わなかった。気持ちとして判らなくもないし、表示できる文字数に限りがあると思うが、できれば「 i 」だけでなく「info」や「help」「?」など説明文があることを感じさせる表示が欲しい。
「通常撮影モード」では、ホワイトバランスや露出補正、ISO感度などを変更可能で、マニュアル設定による撮影が可能だ。
なかでもAFモードは5点、3点、1点の測距ポイントが可能で、シャッタースピードも最大で60秒に設定できる星空モードを搭載するなどマニアックな撮影も可能だ。

手ぶれ補正は優秀、レンズ駆動による補正で画質にも影響ナシ

現在のデジカメにおける手ぶれ補正の方法には大きく分けて二通りある。
ひとつはISO感度をアップさせることによって速いシャッタースピードでの撮影を可能とする方法。こちらは手ぶれ、被写体ぶれの両方に対応できる反面、感度アップによるノイズの発生が避けられない。

もう一つはLUMIXシリーズで採用しているレンズ駆動による補正だ。こちらはカメラ本体のブレの角度を感知して駆動レンズが高速で動いて角度を補正している。LUMIXではこれを「手ぶれ補正ジャイロ」と呼んでいる。手ぶれ補正ジャイロはその名の通り「手ぶれ」のみの対応となるが、レンズ部分での補正となりノイズの発生など画質への影響がなく高画質なままでの補正が可能だ。それが他社のデジカメにはない、DMC-FX9 のアドバンテージといえる。

最近でこそ手ぶれ補正を搭載するデジカメも多くなったが、LUMIXシリーズでは2003年に登場した DMC-FX1 から搭載するなど歴史は古い。もっと言えば、パナソニックとしては1990年にムービーで手ぶれ補正を実現していた「ブレンビー」まで遡ることができる。当時は「ファジイ・ジャイロ」と呼んでいたが、パナソニックは手ぶれ補正の老舗ともいえる。

DMC-FX9 での手ぶれ補正設定は本体上部のボタンで行い、2つのモードがある。
[MODE 1] は、常に補正を行うので、撮影時以外でも液晶モニターに映し出される映像が見やすい。そのためマクロ撮影など手ぶれしやすい状況で構図を厳密に決めたい場合に有効だ。[MODE 2] はシャッターが切れる瞬間だけ補正を行う。使っていても両者の違いは意識しないとハッキリと判らないが、 通常は [MODE 2] で良いだろう。
実は筆者の知人で60代の女性が下位モデルではあるが DMC-FX8 を愛用している。撮影した写真を見せて貰ったことがあるが、手ぶれしている写真がほとんど無かったのには感心させられた。もちろん撮影環境にもよるので一概には言えないが、カメラに決して詳しくないユーザーでも手ぶれによる失敗写真の枚数は格段に少なかった。

描写力は平均的、ホワイトバランスに不満アリ

DMC-FX9 を持ち出し、屋外・屋内など様々な状況で撮影してみた。
ほとんどの場合において、手ぶれ補正を [MODE 2] の状態で撮影していた。手ぶれ補正ジャイロの効果は大きく、草花をマクロモードで手持ち撮影する際には自分でも手が震えているのが判る状況だったが手ぶれのない撮影が可能だった。

描写力はこのクラスとしては平均的だ。DMC-FX8 の500万画素から600万画素にアップしたものの、それら画素数の違いによる描写力の差を感じるほどではないだろう。Nikon COOLPIX S3 のレビューでも触れたが、このクラスの1/2.5型CCDサイズでは600万画素がそろそろ限界ではないだろうか。

少し気になったのは画素の細かさよりも、明るさや色に関する部分だ。
まず、ホワイトバランスの適応範囲だが、マニュアル設定では「晴天」「曇り」「白熱灯」「マニュアル」が選択可能で、あってもよさそうな「蛍光灯」がない。説明書を見ると、「白色蛍光灯」の環境はオートホワイトバランスでの対応のようだが、青みがかった仕上がりとなりホワイトバランスが対応しきれていないようだ。一般家庭では蛍光灯環境が多いので、できれば特化した蛍光灯モードを設けて対応して欲しい。

また、下記サンプル写真にあるように快晴の屋外ではカラーノイズが気になる。スカッと抜けるような青空にはならず、若干赤みがかった印象になってしまった。屋内や日陰では気にならないので直射日光下で発生しやすいようだ。
シーンモード [風景]
シャッタースピード 1/320秒、F5.6。晴天時の直射日光下。空や水面にカラーノイズが見られ全体的に赤っぽくなってしまった。
マクロモード
シャッタースピード 1/125秒、F2.8。ガラス越しの太陽光で撮影。毛並みに描写力の高さを感じるが、少しアンダー気味になってしまった。
シーンモード [キャンドル]
シャッタースピード 1/8秒、F2.8。かなり暗い環境での手持ち撮影だったが、手ぶれを起こすことなく撮影できた。ノイズも気にならない程度にとどまっている。
撮影時、液晶モニターには水平垂直を確認するためのガイドラインが表示できる。他にも「通常撮影モード」では、シャッタースピード、絞り値、ヒストグラムなどが表示される。

さらに、液晶モニターの高精細を生かして、再生モードでのズームレバー操作により、9、16、25画面の画像一覧表示が可能だ。スライドショーは画像表示の秒数を設定できるにとどまっており、画像切り替え時のエフェクト効果などは付いていない。

コンパクトなバッテリーチャージャーが付属

DMC-FX9 には約130分でフル充電が可能な専用のバッテリーチャージャーが付属する。最近ではクレードルが付属するデジカメもあるが、DMC-FX9 には付属せず、オプションでも用意されていない。

本体側面には、付属のUSBケーブルを接続できるUSB端子が用意されているので、パソコンとの接続やPictBridge に対応したプリンターに直接接続してプリントも可能だ。またこれは付属のAVケーブルによるテレビ出力の端子としても利用できる。

同じ場所にオプションのACケーブルが接続できる端子もあるが、ACケーブルを接続しても本体での充電はできない。

USB端子(上)と電源端子(下)
本体の他に、16MB SDメモリーカード、USBケーブル、バッテリー、バッテリーケース、バッテリーチャージャー、AVケーブル、ストラップ、ソフトウェア、説明書が付属する。

総論:入門者にも買い換えユーザーにもオススメの1台

もしも今、周囲からデジカメ購入の相談を受け、何台かピックアップするなら DMC-FX9 は間違いなく選択肢に含まれるだろう。液晶モニターのサイズやバッテリー寿命などは、すでに DMC-FX9 を上回る機種も他社から登場しているが、 DMC-FX9 の液晶モニターサイズ、約270枚撮影可能なバッテリー寿命でも日常的な撮影で大きな不満になることはないだろう。全ての機能が必ずしもトップクラスではないが、希望ラインはクリアし、それら機能面とスタイリッシュなデザインとがトータルでバランスがとれた1台だ。

なかでも DMC-FX9 の一番のポイントはやはり光学式の手ぶれ補正だろう。他社のISO感度アップによる手ぶれ補正はノイズの影響が避けられないが、DMC-FX9 なら高画質なままの撮影が可能で、これに関しては他社を大きくリードしている。特にデジカメ撮影に慣れない初心者にとって手ぶれ補正は心強く、今使っているデジカメが手ぶれしやすいとの不満を持っているユーザーにもオススメできる。

となると、同じパナソニックのデジカメなら光学手ぶれ補正を搭載しているわけで、画素数、液晶モニターの品質がやや落ちるが価格がこなれてきている DMC-FX8 が気になるところだ。店頭での価格差も3〜5千円程度で、 DMC-FX8 をチョイスして浮いた予算でメモリーカードを購入するか、逆に DMC-FX9 を選んで画素数と液晶モニターの解像度アップと思えば納得できる価格差でもある。少しの差であれば上を選んでおくと後から何かと後悔することはないと思うが、このあたりは個人の価値観と懐具合と相談してほしい。
H-lab:山地啓之)
パナソニック [ http://panasonic.jp/ ]
LUMIX DMC-FX9
価格:オープンプライス 最新価格を調べる >>
発売日:2005年8月26日
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