ここ1〜2年でコンパクトデジタルカメラにも、ハイビジョンムービー機能の搭載が広がっている。解像度や記録方式は様々だが、LUMIXシリーズへの搭載はかなり早く、デジタルAV機器と親和性の高いAVCHDを採用してきた。従来はハイビジョンデジタルビデオカメラとの棲み分けもあってか、LUMIXシリーズではフルHDよりも解像度が低いAVCHD Liteが採用されていたが、FZ100ではフルHDのAVCHDに対応する。フルHDの搭載は、この秋に発表された
FX700と併せてLUMIXのコンパクトシリーズ初となる。
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1920×1080ドットの解像度でフルHD撮影ができるのはAVCHDのみで、MOTION JPEGでのハイビジョン撮影は1280×720ドットとなる。AVCHDにも1280×720ドットのAVCHD Liteも用意されているが、メモリーカードの空き容量が少ないといった特別な事情がなければ、常時フルHD撮影で良いだろう。AVCHD・MOTION JPEG問わずファイル容量が大きくなるので、メモリーカードがセットされていない(内蔵メモリーしか利用できない)状態では、ハイビジョン動画撮影のメニュー画面が表示されず、撮影するつもりがなくても画質変更すら利用できない。その場合は、QVGA(320×240ピクセル)のみ対応する。 |
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動画でも人物や風景など被写体を自動認識する「おまかせiA」が利用できるほか、好みのシーンモードが利用できる。さらにフルHD撮影中にも光学24倍、iAズーム32倍のズーム操作利用できる。
ただ気になる点としてはデジタルビデオカメラに比べるとAF合焦スピードがやや遅く、被写体が動くと追尾しきれない場合がある。フォーカスエリアが外れたときは、シャッターボタンを半押しすることであらためてAFが働くのでフォローすることはできる。 |
フルHDによる実写画像は、下に掲載したサンプルムービーを参照して欲しい。AFスピードや細かい部分の操作性では、やはりデジタルビデオカメラが優れる部分もまだまだ多く、被写体にとっては不向きな場合もあるが、FZ100のフルHD動画で充分と感じるユーザーもいるだろう。
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ハイスピード動画は、1秒を220コマの連続する静止画として記録し、それを再生時には1秒30コマとして再生することで、一瞬の出来事を超スローモーションでとらえることができる。ただ、ハイスピード動画を普通の動画撮影の感覚でパン(移動)したり、10〜20秒程度撮影すると再生時には1分を超えるなど、後から鑑賞しづらい動画になってしまうケースもあるので撮影には慣れが必要だ。ハイスピード動画はシーンモードの1つとして利用可能で、再生速度は3段階で変更することができる。 |
日常的に使い勝手の良い撮影モードは、やはり「おまかせiA(インテリジェントオート )モード」だ。いわゆるシーン自動判別機能で、顔や風景、夜景など被写体の状況を判断して最適な撮影モードを自動設定してくれる。
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しかし、FZ100にはそれ以外にもユニークな撮影モードが搭載されている。その1つが「アドバンスシーンモード」だ。例えば「クローズアップ」では「花」「料理」「コレクション」「クリエイティブクローズアップ」と、被写体ごとに詳細な設定ができる。中でも「クリエイティブクローズアップ」は背景のボケ具合を調整できる機能で、絞りの仕組みが判らない初心者でも手軽に背景ボケを楽しむことができる。 |
また、「マイカラーモード」では「ポップ」「レトロ」「ピュア」など、こちらも明るさと鮮やかさなどを細かく調整して、意図的に色を変化させる表現が可能だ。カスタムとして光の色、明るさ、鮮やかさを任意に調整することもできる。
いずれも常時利用するモードではないが、「おまかせiAモード」とは正反対に写真へ、自分なりの味や雰囲気を追加できる楽しい機能だ。利用するにはメニューを深く巡る必要があるので、気に入ったモードは即座に呼び出せるカスタムセットとして登録しておくと良いだろう。
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iA シーンモード
シャッタースピード
1/1600秒、F4.0、ISO160。 |
プログラムモード
シャッタースピード
1/6秒、F2.8、ISO100。 |
iA モード
シャッタースピード
1/200秒、F4.0、ISO100。 |
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iA モード
シャッタースピード
1/60秒、F2.8、ISO400。 |
プログラムモード
シャッタースピード
1/15秒、F2.8、ISO100。 |
iA モード
シャッタースピード
1/250秒、F4.0、ISO100。 |
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iA モード
シャッタースピード
1/125秒、F4.0、ISO160 |
プログラムモード
シャッタースピード
1/40秒、F2.8、ISO100 |
プログラムモード
シャッタースピード
1/100秒、F4.0、ISO100 |
ムービー サンプル:フルハイビジョン(AVCHD・M2TS形式) |
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ハイビジョンムービー
画像サイズ 1920×1080 FSH(ファイルサイズ:29.4MB) |
ハイビジョンムービー(ズーム)
画像サイズ 1920×1080 FSH(ファイルサイズ:40.01MB) |
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※動画再生環境に関する質問にはお答えできません。 |
ムービー サンプル:ハイスピードムービー(Motion JPEG・MOV形式) |
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ハイスピードムービー
画像サイズ 320×240(ファイルサイズ:15.92MB) |
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※動画再生環境に関する質問にはお答えできません。 |
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フル充電の状態で約410枚(※CIPA規格準拠)の静止画撮影が可能だ。また、フルHD動画のAVCHD(画質設定:FSH)形式で約110分の連続撮影、約60分の実撮影時間が確保されている。Motion JPEG形式のHD動画では、撮影時間が約1.5倍程度長い。パッテリーチャージャーはコンパクトデジタルカメラ程度の大きさがあるが、コンセント直結タイプなので携帯には便利だ。 |
※CIPA規格:カメラ映像機器工業会(Camera & Imaging Products
Association)が定める電池寿命測定方法についての統一規格
現在のデジタルカメラ市場で、特に元気なのはレンズ交換が可能なデジタル一眼のようだ。特にミラーレス一眼は人気で、パナソニックのGシリーズ、オリンパスのPENシリーズ、ソニーの“α” NEXシリーズはいずれも店頭では注目度が高い。コンパクトデジカメでは飽きたらず、かといって従来からの大きくて重いデジタル一眼では持て余してしまう、ユーザーの心を掴むことができたのだろう。
FZ100はちょうどそれらミラーレス一眼とコンパクトデジタルカメラの間に属するデジカメで、その意味では存在が微妙に感じられるかもしれないが、高倍率ズームを有するこのカテゴリーには根強い人気がある。ズーム性能のほか、コンパクトデジタルカメラよりも大きな撮像素子、コンバージョンレンズなどオプションによる拡張性の高さ、RAWでの撮影などデジタル一眼に迫る高い性能を備えているのがポイントだ。
FZ100に関していうなら、シリーズ初となるフルHDによる動画撮影が可能となったのも注目すべきポイントだ。高画質なだけでなく、ハイ・ローアングル撮影に対応するフリーアングル液晶モニターと相まって、デジタルビデオカメラにも負けない機動性を発揮できる。また、記録方式が AVCHD なのでパナソニック製薄型テレビや、ブルーレイレコーダーとの連携もしやすく、撮影後の保管や楽しみもフォローされている。
レンズ交換ができるデジタル一眼であれば撮影の幅はより広がるが、交換できないからと言って極端に狭くなるわけでない。かえってフットワークの軽さから持ち歩く時間が多くなり、写真がもっと楽しくなるかもしれない。FZ100はそんな可能性を感じさせてくれる一台だ。