GF1はそのスタイリングと、カタログや広告などのプロモーション展開からもわかるように、マニアックなカメラユーザー向けというよりも、これまでコンパクトデジタルカメラを使い続け、そろそろデジタル一眼へステップアップしたいと考えているユーザーを、主なターゲットとしている。
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それは見た目のデザインだけでなく、中身にも現れている。デジタル一眼は撮影の設定を細かくマニュアル設定することこそが特長でもあるのだが、その反面、初心者にとっては難しいと受け止められてしまい、一歩踏み出すことに躊躇してしまうユーザーも少なくない。GF1は撮影機能でも、そのようなユーザーをしっかりサポートしてくれる。 |
まず、撮影モードはLUMIXシリーズではお馴染みとなったシーン自動判別機能である「おまかせiAモード」を搭載する。これは人物や風景、夜景など7つのシーンをカメラが自動判断し、最適な設定を行ってくれる機能だ。単なるオートとは異なり、被写体の状態を細かく常に判断し続けてくれるので、設定をあれこれと触る必要がない。また、顔検出機能が進化した「個人認識」が可能で、家族の顔をあらかじめ登録しておくことで、複数の人がいても顔を検出する優先順位を決めることができる。登録は最大3人まで可能で、ファインダーで検出するとフォーカス枠に加え、登録していた名前も表示される。他にも被写体の動きをフォーカスエリアが追尾する「追っかけフォーカス」、複数のフォーカスエリアから自動で被写体にピントを合わせる「23点AF」も搭載する。
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ユニークな撮影モードとして、シーンモードに含まれる「背景ボケモード」がある。これはファインダーでピントを合わせたい被写体を指定すると、背景をぼかすように被写界深度を調整してくれる機能だ。使用するレンズによってボケ具合は違ってくるが、被写体を引き立たせる写真が理屈抜きで手軽に撮影できる。実際に操作してみると、ボケの変化する様子が即座に反映されて確認しやすい。 |
さらに「フィルムモード」として明るさや鮮やかを調整してフィルムの味わいを演出できるほか、「マイカラーモード」では「ポップ」「レトロ」「ピュア」など、こちらも明るさと鮮やかさなどを細かく調整して、意図的な色表現が可能だ。
これら色の表現やISO感度、ホワイトバランスなどは自分好みの設定を「カスタムモード」として4つまで登録することができる。メニュー画面で細かな設定ができるほか、いま使っている設定をそのまま残すこともできる。設定はモードダイヤルの「C1」に1つ、「C2」に3つ登録される。「C2」はモード選択後、さらにメニューから「C2-1」「C2-2」「C2-3」から選択する必要があるので、「C1」がメインのカスタム、「C2」がサブのカスタムと使い分けると良いだろう。
GF1はハイビジョン画質の動画撮影機能と搭載し、AVCHD LiteとMOTION JPEGによる撮影が可能だ。AVCHD Liteは720p(1280×720ピクセル)のハイビジョン動画記録の規格で、上位モデルのGH1が採用するフルハイビジョンのAVCHD(1920×1080ピクセル)よりは、解像度がやや落ち、画質や使い勝手の面では、やはりデジタルビデオカメラに軍配があがる。そのためメインでハイビジョン撮影をするというよりも、静止画撮影が主体で気が付いた時に動画で残したい、しかもできれば高画質でという用途に向いている。
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ハイビジョン動画の撮影は簡単で、上部のモードダイヤルの位置にかかわらず、上部の動画ボタンを押せば即座に動画撮影がスタートする。撮影開始・終了の反応は液晶ファインダーを見ているとワンテンポ遅れているように感じるが、撮影された映像は、それほどタイムラグはなく反応して撮影されている。ハイビジョン動画撮影中もAFは動作可能だが、ビデオカメラに比べるとやや動作が散漫な印象だ。特に子供やペットなど被写体の動きが激しいと、AFが間に合わずピントが外れてしまうことが多い。しかし、動画撮影でも「おまかせiA」が働き、顔検出、風景、夜景などをシーンの違いを自動判別するので、手軽に高画質な動画を楽しめる。 |
また、レンズの交換により独特の絵作りができるのは、GF1の大きなアドバンテージだ。パンケーキレンズを使って撮影したところ、背景のボケは静止画だけでなくハイビジョン動画でも有効で、一般的なデジタルビデオカメラでは見られない、被写体が浮かび上がる印象的な雰囲気を醸し出してくれた。標準ズームレンズLUMIX G VARIO
14-45mm/F3.5-F5.6 ASPH./MEGA O.I.S.での撮影では、広角側ではそれなりの画質が得られるが、望遠側では画質の低下が感じられ、ハイビジョンらしい精細感は得られず物足りなかった。
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iA シーンモード
LUMIX G VARIO 14-45/F3.5-5.6、シャッタースピード
1/400秒、F7.1、ISO100。 |
iA シーンモード
LUMIX G 20/F1.7、シャッタースピード
1/400秒、F1.7、ISO100。 |
iA シーンモード
LUMIX G 20/F1.7、シャッタースピード
1/60秒、F1.7、ISO100。 |
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iA シーンモード
LUMIX G 20/F1.7、シャッタースピード
1/60秒、F1.7、ISO100。 |
プログラムモード
LUMIX G VARIO 14-45/F3.5-5.6、シャッタースピード
1/320秒、F6.3、ISO100。 |
プログラムモード
LUMIX G VARIO 14-45/F3.5-5.6、シャッタースピード
1/80秒、F3.5、ISO100。 |
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プログラムモード
LUMIX G 20/F1.7、シャッタースピード
1/640秒、F1.7、ISO100 |
プログラムモード
LUMIX G 20/F1.7、シャッタースピード
1/30秒、F1.7、ISO160 |
プログラムモード
LUMIX G 20/F1.7、シャッタースピード
1/30秒、F1.7、ISO500 |
ムービー サンプル(AVCHD・M2TS形式) |
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ハイビジョンムービー
LUMIX G 20/F1.7、画像サイズ 1280×720(ファイルサイズ:10.7MB) |
ハイビジョンムービー
LUMIX G 20/F1.7、画像サイズ 1280×720(ファイルサイズ:18.1MB) |
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※動画再生環境に関する質問にはお答えできません。 |
DMC-GF1 には専用バッテリー DMW-BLB13 が付属、専用バッテリーチャージャーを使い約155分でフル充電が可能だ。フル充電の状態で20mm/F1.7装着時で約380枚(※CIPA規格準拠)の撮影ができる。試用中、昼間に数時間、2〜3日持ち出したくらいではバッテリー残量が気になることはなかった。
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旅行など長期外出になるとバッテリーチャージャーは必須だが、デジタル一眼の場合は交換レンズなどアクセサリー類など持参すべきものが多くなる。少しでも荷物は減らしたいので、できればバッテリーチャージャーはケーブル無しで、コンセントに直結できるタイプにして欲しかった。ただ、そうするにはバッテリーチャージャーが大きく、コンセントを占有してしまうので、バッテリーチャージャー本体そのものも小型化するなど改良を望みたい。 |
※CIPA規格:カメラ映像機器工業会(Camera & Imaging Products
Association)が定める電池寿命測定方法についての統一規格
コンパクトデジタルカメラ並みのサイズでレンズ交換ができるカメラとしては、同じマイクロフォーサーズ規格を採用するオリンパス ペンシリーズE-P1、E-P2もあり、GF1と並んで人気だ。特にGF1はペンシリーズよりも店頭価格がリーズナブルなこともあり、登場以来人気が高い。
コンパクトデジタルカメラはひと通り行き届き、今は買い換え需要がほとんどで飽和状態でもある。それなりに高画質で多機能ではあるものの、背景をぼかしたいとか高感度撮影でももっとノイズを抑えたいなど、物足りなさを感じているユーザーも多いのではないだろうか。
反面、そろそろデジタル一眼に手を伸ばしたいと思いつつも、デジタル一眼は難しいのではと感じて躊躇しているユーザーもまだまだ多い。一時に比べると、リーズナブルな入門者向けのデジタル一眼が増えたとはいえ、使いこなしをはじめ本体サイズや重量なども含め、購入にはそれなりの覚悟が必要だった。だが、GF1はそれらの不安要素の、多くを取り除いてくれる。
GF1は、いかにもなカメラバックでなく、カジュアルなバックに入れて気軽に持ち出すことができる。日常持ち歩いても大きな負担になりにくい。使いこなしに関しても、カメラにお任せでも最適な設定を自動で選んでくれ、デジタル一眼を使っているという気負いも必要ない。ややこしいとか、難しいという言葉とは無縁だ。さらにハイビジョン動画も撮影できるので、ここは静止画にすべきか動画にすべきか、と迷ってしまうシーンでも対応できる。
今回、主に試用したパンケーキレンズLUMIX G 20/F1.7は、背景のボケが美しい優秀なレンズだ。GF1本体のコンパクトさと相まって、携帯する際も取り回しやすい。ズームレンズの搭載が当たり前のコンパクトデジタルカメラユーザーからすると、ズームが効かない単焦点レンズでは心細く感じるかもしれないが、ズームが効かないぶん自分が動くことで新しい構図の発見があるかもしれない。どうしてもという場合には、GF1はデジタルズームの利用が可能だ。
GF1の発売後の様子を見てみると、ユーザーはメーカーが想定するデジタル一眼入門者だけでなく、そのコンセプト、スタイリングに惚れ込んだマニアにも受け入れられている。ストラップやフードへのコダワリから始まり、レンズマウントアダプターを使って手持ちのオールドレンズを装着するなど、熱心なユーザー層が形成されているのも注目すべき状況だ。
今のコンパクトデジタルカメラから、次もコンパクトに買い換えても大きな変化は期待できなさそうとか、コンパクトでは思ったような写真が撮れないと感じ始めているなら、GF1を候補にデジタル一眼の世界へ、一歩踏み出してみてはいかがだろうか。