高感度によりブレを防ぐ、[ISO AUTO-HI] |
フォーカス距離を1m/2.5m/5m/∞から選択できる |
また「プレAF」はシャッターボタンを半押ししなくても、被写体にピントを合わせ続ける機能だ。いわゆる追尾AF機能だが、常にピントを合わせ続けるとフォーカス駆動を続けるため、バッテリーが消耗しやすくなるので注意が必要だ。
撮影後に確認できるDRと、通常撮影の比較。通常撮影に比べて、DRのヒストグラム(左)の方が明るい部分(グラフの右の方)の情報が記録されていることがわかる。 |
日向と日陰、白と黒のような明暗の差が激しい被写体では、明るい部分が白飛びしてしまうことが良くある。これはデジタルカメラが対応できる暗い部分から明るい部分までの範囲(ダイナミックレンジ)が、人間の目に見えている範囲よりも狭く、その範囲を超えた明るい部分の変化を記録できないからだ。
シーンモードの「ダイナミックレンジダブルショット(以下、DR)」機能は、通常の状態と、レンジを拡大した2枚を連続撮影し、それらを合成することで明るい部分の白飛びを抑えた画像を記録できる機能だ。DR ではレンジの拡大幅を、弱・中・強の3段階で設定できるほか、 ダイナミックレンジを拡大した画像と通常の画像を同時記録することもできる。 |
GR DIGITAL III は最高感度ISO1600まで対応する。従来よりもCCDサイズが大きくなったので、高感度撮影でもノイズの発生は抑えられ有利になったと思われる。実際、ISO1600ではノイズにより立体感は低下するが、ザラつきは少なく用途によっては充分使える画質だ。また、GR DIGITAL III は撮影時に利用できる「ノイズリダクション」機能も備える。ノイズリダクションは弱・強の2段階で調整が可能だ。設定を変えながら、ISO1600 で撮り比べてみた。
上のサンプル写真を見る限りノイズリダクションの効果は、光が当たる木の枝や葉といった複雑な被写体ではわかりにくいが、空や電柱の表面など形状の変化が少ないところでは、その効果が実感できる。その代わり細かなディティールが若干失われているので、何を見せたいかによって使い分ける必要があるだろう。ノイズリダクションは「ISO401以上」というように、ある感度を超えると自動的に働くように設定することもできる。
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ズームレバーの操作で、画像1枚表示から20枚、さらに81枚のマルチ表示が可能だ。81枚表示では3.0型液晶でも、サムネールはかなり小さな表示となるが、内容は充分確認できる。1枚表示の時にボディ前面のダイヤルを回転、または背面のズームボタンを使って画像の拡大表示が可能だ。またこれらのキー操作はカスタマイズが可能で、拡大時の位置移動などを割り当てることもできる。また、再生モードでは編集機能として、明度やホワイトバランスなど色調補正も行える。 |
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GR DIGITAL III の電源をオフにすると、液晶モニターに表示されるシャットダウン画面では「Today:0000015」と、その日に撮影した画像の枚数が表示される。ちょっとしたことだが、その日の「収穫」を確認しているようで心憎い演出だ。 |
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GR DIGITAL III にはリチャージャブルバッテリー DB-65 はが付属する。フル充電で約370枚(CIPA準拠※)の撮影が可能で、付属のバッテリーチャージャーを使って約120分でフル充電が可能だ。
また応急の手段として単四形電池も利用可能で、アルカリ乾電池で約25枚の撮影が可能だ。撮影枚数は限られるが、いざという時にコンビニでも入手できる単四形電池が使えるのは心強い。 |
※CIPA規格:カメラ映像機器工業会(Camera & Imaging
Products Association)が定める電池寿命測定方法についての統一規格。
GR DIGITAL III の注目機能を中心に取り上げてきたが、ボディデザインこそほとんど変化がないものの、画質向上に繋がる内部的な変更が図られていることがわかる。レンズの大口径化やCCDサイズの拡大など根本的なところに手が加えられていて、GR シリーズとして正統進化と呼べる堅実なモデルチェンジを遂げている。それらハード面の改良と共に、新開発の画像処理エンジン「GR ENGINE III」や、白飛びを抑えダイナミックレンジを広げた記録が可能なダイナミックレンジダブルショット機能など、ソフト面での機能強化もあり、シンプルなボディに高度な技術が凝縮されている印象だ。
また、GR シリーズで期待できるのが、発売以降のファームウェアのアップデートによる機能の拡張だ。一般的にファームウェアのアップデートは不具合を修正するものが多いが、GR シリーズでは機能の拡張を目的としたものも多い。前モデルの GR DIGITAL II でも、2007年11月の発売から、これまで5回のファームウェアアップデートが実施され、トータル20を超える新機能が追加されている。おそらく GR DIGITAL III でもこの手厚いサポートは変わらないと思われるので、購入後の楽しみもある。
ハイエンドコンパクトデジタルカメラで、気になるのが価格面での競合だ。GR DIGITAL III も発売から少し時間が経過し、ネットでは6万円を切る価格を付けるところも出てきた。しかし、最近では初心者向けデジタル一眼の低価格化がさらに進み、それに加えて新しいカテゴリーとしてオリンパス、パナソニックが採用するマイクロフォーサーズ規格のコンパクトなレンズ交換式デジタルカメラも登場しており、6〜8万円台の価格帯のデジタルカメラ市場の競争は激戦区になっている。
しかしながらGR シリーズは、モデルチェンジが行われても常に登場を心待ちにしていて、購入後も愛着を持ちながら利用し続ける根強いファンも多い。今回のモデルチェンジの内容も、ファンの要望に答えるメーカーの真摯な姿勢が伺える。GR DIGITAL III の完成度は高く、今後しばらくは機能面で大きな不満を感じることはないだろう。また、自分好みのカスタマイズを加えることで、写真の面白さを発見しながら、末永く付き合っていけるパートナーとなりうるデジタルカメラだ。