ひと昔前まで、コンパクトデジタルカメラの光学ズームの倍率は3倍程度が一般的だったが、最近では4〜5倍ズームを搭載するモデルが増えている。RICOH PXもそのあたりのトレンドを押さえ、コンパクトながらも光学5倍ズームを搭載する。さらにRICOH PXではズーム倍率をアップしても画像の劣化を意識させない超解像SRズームを用いて、光学10倍相当のズームが可能だ。
超解像SRズームは画像の輪郭部分と、それ以外の部分に最適な画像処理を行い、解像度を高める技術だ。もう少し具体的に言うと、光学ズーム域からデジタルズーム域に切り替わると、通常は拡大処理により画像がぼやけるなどの劣化が生じる。それを画像の輪郭部分にシャープネスを施すことにより、クッキリとした印象になり画像の劣化を感じにくくしている。デジカメの再生・編集モードやパソコンの画像編集ソフトでもシャープネスをかけることはできるが、それらの多くは画面全体にシャープネスを実行するが、超解像SRズームは画像の中から輪郭とそれ以外を判断して、それぞれに最適なレベルの処理を施している。
液晶モニター上ではズーム倍率のインジケータが表示され、光学域、超解像SRズーム域、デジタルズーム域を確認することができる。撮影時はできるだけ素のままで、画像処理を加えたくないという場合は、設定画面でオフにすることもできる。そのような特別なコダワリが無ければ、常時オンで使用すれば良いだろう。
また、ズーム機能としてはズーム比率に応じて画像の中央部分を切り抜き、ズーム効果が得られるオートリサイズズーム機能を搭載する。画像を切り抜くので、撮影した画像のサイズはVGA(640×480ピクセル)となるが、最大36倍相当(1000mm換算)のズーム効果が得られる。ただし、利用できるのは画像サイズが16M(4:3)を選択している時のみだ。
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RICOH PXの背面にあるキーを見ると「PREMIUM」という文字がある。これは全ての撮影モードを、手軽に切り替えることができるボタンだ。多くのデジタルカメラでは、プログラムやシーンモードなどの撮影モードを、ダイヤルやレバーなどを使って切り替えるが、RICOH PXでは「PREMIUM」キーを押すことで、全ての撮影モードを垣根無く、ひとつの画面で呼び出すことができる。これを「プレミアムショット」と呼んでいる。 |
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「プレミアムショット」には、[P(プログラム)] [ポートレート] [夜景ポートレート] [手持ち夜景] [パーティ] [料理] [スイーツ] [拡大鏡] [遠景] [ビーチ] [スノー] [スポーツ] [打ち上げ花火] [オークション] [斜め補正] [ペット] [ミニチュアライズ] [トイカメラ] [ハイコントラスト白黒] [ソフトフォーカス] [クロスプロセス] [白黒] [セピア] の23モードがあり、オリジナルのモードを5つまで [マイ登録] として登録することができる。 |
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全ての撮影モードをシームレスに切り替えできるとはいうものの、ここまで数が多いと逆に目的のモードを選択するに手間がかかってしまう。そこで「プレミアムショット」では、よく利用するモードを5つまで「お気に入り」として登録し、モードメニュー画面のトップに表示させることができる。「お気に入り」以外のモードを使いたいときは、十字キーの下方向ボタンを押せば他のモードに切り替えることができる。 |
RICOH PXを初めて触った際には、撮影モードを切り替えるダイヤルやレバーなどが無く、やや戸惑いがあった。しかし、全てのモードを一画面で管理できるのは、慣れると便利だ。他のモードダイヤルなどで選択する機種の場合は、ダイヤルでシーンモードを選択してから、さらに「ポートレート」を選ぶ、というように二段階の操作が必要だ。そのような場合、撮影モードが充実していても埋もれて使われないケースも多いのではないか。RICOH PXならアクセスしやすい「プレミアムショット」により、普段利用することが少ないモードも使う機会が増え、楽しさも広がるだろう。
撮影モードには人物や風景などシーンに適したもの、ミニチュア風やトイカメラなど遊びの要素を持ったフィルター的なものなど多用なモードがある。そんな中、日常の撮影で重宝しそうなのが「手持ち夜景」モードだ。これはその名の通り手ぶれを起こしやすい夜景を、手持ちで撮影できるモードだ。だが、単に感度を上げて手ぶれを防ぐのではなく、撮像素子の隣り合う4画素を1画素として扱い受光量をアップすることで、高感度ながらもノイズを押さえた撮影ができる。ただし、画素を加算するため撮影サイズを最大の4608 x 3456ピクセルに設定していても、2034 x 1728ピクセルでの撮影となる。
「P(プログラム)」モードと「手持ち夜景」モードで撮り比べてみた。拡大の比率が異なるのは、「手持ち夜景」モードでは記録サイズが小さくなるためだ。
プログラムモード |
手持ち夜景モード |
一見すると「プログラム」モードの方が明るく撮れているように感じられるが、いわゆる「夜景」の雰囲気はなく、拡大してみると手ぶれを起こしているのがわかる。それに対して「手持ち夜景」モードは、夜景の雰囲気を醸し出しつつ、手持ちながらもぶれずにノイズが抑えられている。 |
ムービー サンプル(AVI形式) |
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ハイビジョンムービー
画像サイズ 1280×720(ファイルサイズ:48.61MB) |
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毎年夏が近づくと各社から、アウトドアでの利用に対応したタフネスデジカメが登場する。そんな中、リコーからの登場は少し意外でもあった。これまでリコーは人気のハイエンドコンパクトを中心に、ある種マニアックなデジカメユーザーに支持されるデジカメを作っており、一般、特に女性に受け入れられそうなカジュアルモデルを出すとは思っていなかったからだ。しかし、RICOH PXを触ってみると、同社ならではのコダワリを感じられる部分が数多くあった。
そのひとつは、見た目にいかにもな頑丈デザインではないこと。筆者も毎年夏が来ると、タフネス設計のデジカメが気になる。しかし、これまで購入に至っていない。それはアクティブな環境にハマる頑丈デザインが、逆に日常の利用では無骨に感じられるものが多かったからだ。海や山で使うよりも、街や日常で利用するシーンが圧倒的に多く、質実剛健なデザインのデジカメには手を出しづらい。タフネスデジカメを買ったとして、その性能を必要とするシーンが何回くらいあるのか?と、気負いのようなものさえ感じてしまう。その点、カジュアルデザインのRICOH PXは日常に馴染みやすく、且つ水やホコリ、落下など、いざという時にその性能を発揮してくれる。カジュアルな顔でありながら、中身はタフネス性能を持つ。これがRICOH PXがこだわった大きなポイントのひとつだろう。
このように今までタフネスデジカメに興味はあったが日常使いが多く、頑丈デザインのデジカメには手を出しづらかったユーザーにはうってつけのデジカメだ。利用シーンにアウトドアのアクティブな状況が思い浮かばなくても、防水や落下性能は日常シーンでも充分役立つ性能だ。オシャレさと丈夫さを併せ持つデジカメとしてオススメしたい。