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HDモードの撮影では、液晶モニターでのハイビジョン撮影時の画角が判るように周囲が少し暗く表示される。
というのもEX-F1の場合、静止画・動画モードを切り替えるスイッチはなく、シャッターボタンで静止画撮影、背面の動画記録ボタンで動画撮影というように双方をシームレスに利用できる。そのため静止画撮影の時は液晶モニターの画角一杯、HD撮影では一回り小さくなりますよ、ということを視覚的に把握できるようになっているのだ。 |
撮影した動画はMOV形式で記録されるが、QuickTimeプレーヤー(ver.7.4.5)では再生できなかったので、パソコン上で再生するには付属する動画再生・編集ソフト「TotalMedia Extreme」を利用することになる。ただしこれはWindows版のみなので、現状 EX-F1 でフルハイビジョン撮影した動画をMac上で再生することはできない。
液晶モニターの右には、画像サイズやストロボなどの設定が行える操作パネルが表示される。操作パネルでは、撮影中に設定を変えることがよくある項目が並んでおり、変更のたびに設定メニューを呼び出すことなく、即座に確認や変更ができる。
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有効600万画素のEX-F1で利用できる画像サイズは、最大2816 × 2112ピクセルまでだが、RAW形式の記録が可能で、JPEG形式の同時記録に対応する。動画撮影中、最大20枚までの静止画同時撮影も可能だ。
EXILIM シリーズとしてはお馴染みの「BS(ベストショット)」モードも搭載する。
利用できるモードは、[人物] [風景] [風景と人物] [子供] [スポーツ] [キャンドルライト] [パーティー] [ペット] [花] [緑を鮮やかに] [紅葉] [水の流れを滑らかに] [水しぶきを止めて] [夕日] [夜景] [夜景と人物] [花火] [食べ物] [文字] [コレクション] [オークション] [デジタル手ブレ補正] [デジタル流し撮り] [ムーブアウト連写] [ムーブイン連写] [YouTube] の26種類のほか、自分好みの設定を1つ登録することができる。 |
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中でもユニークなのが [YouTube] モードで、あらかじめYouTubeにアップロードしやすいファイル形式で撮影できる。詳しい内容に関しては、
EX-Z1080 のレビューを参照して欲しい。
また連写モードの [ムーブアウト連写] [ムーブイン連写] では、画面内のフレームから外に出る動き、またはフレームに入る動きがあった瞬間に自動連写する。これはあらかじめ設定した時間分の画像を繰り返し一時的に保持して、フレームに動きがあった瞬間を検出して記録するというもので、動物や昆虫などを撮影する際のシャッターチャンスを捕らえやすくなる。
他にも絞り優先、シャッター速度優先、マニュアル撮影、オートフォーカスエリアの移動、白飛びや黒つぶれを軽減するダイナミックレンジなどマニアックな撮影機能も備えている。
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ベストショット [風景を写す]、シャッタースピード
1/200秒、F9.4、ISO100。 |
オート、シャッタースピード
1/10秒、F2.7、ISO100。 |
高速連写、シャッタースピード
1/10秒、F2.8、ISO400。 |
ハイスピードムービー サンプル(MOV形式:要QuickTime Player) |
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ハイスピードムービー、フレームレート 300fps、画像サイズ 512×384pixel(1.1MB) |
ハイスピードムービー、フレームレート 600fps、画像サイズ 432×192pixel(2.2MB) |
ハイスピードムービー、フレームレート 1200fps、画像サイズ 336×96pixel(2.2MB) |
※動画再生環境に関する質問にはお答えできません。 |
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再生モードの一覧表示では、静止画・動画・高速連写画像とタイプによって表示が異なり、それぞれが判断しやすく、ズームレバー、方向キーによる表示切替のレスポンスも快適だ。
ほかのEXILIMシリーズに見られるような、撮影日ごとのカレンダー表示には対応しない。 |
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高速連写された画像はセットで管理され、1秒あたり60枚の高速撮影の場合だと、60枚の画像が1セットになったグループ管理がされる。[SET] キーを押すと、グループ内の画像がコマ送りで順次表示されていく。パソコンに取り込むとグループではなくなり、通常の1枚単位でとなるので、連写を多用すると、あっと言う間に数百枚の画像で数百MBの容量になるので管理には工夫が必要だろう。 |
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ハイスピード撮影された動画は、再生中に本体背面のコントロールダイヤルを回転させると、再生スピードを正逆方向で可変させることができる。
ハイスピード撮影の場合、数秒を撮影してもフレームレート数が高いと再生時には数十秒から数分になっているケースもあるので、可変再生は有り難い。
動画編集機能としては、不要なシーンをカットする [ムービーカット] 機能が利用できる。ムービーカットは設定したその位置から [前カット] [後カット]、またはカットしたい範囲を決める [中カット] が利用できる。
EX-F1には、Arcsoftの再生・編集ソフト「TotalMedia Extreme for CASIO」が付属するが、MOV形式を直接編集することはできない。他にMOV形式を編集できる動画編集ソフトがあるならよいが、無ければEX-F1本体で編集してからパソコンへ取り込んだ方が、鑑賞する場合に扱いやすいだろう。 |
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その付属ソフト「TotalMedia Extreme for CASIO」は、EX-F1で記録されたハイビジョン画質の動画を、ハイビジョン画質のままDVDに記録可能なAVCHDディスクを作成することができる。このAVCHDディスクを作る段階では、不要シーンのカットやチャプター設定が可能で、メニュー画面付きのAVCHDディスクを作成できる。ただし対応はWindowsのみだ。
AVCHDディスクはゲーム機Playstation3や、対応するBlu-rayレコーダーなどで再生可能だ。
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EX-F1には、デジタル一眼レフ並みの大型バッテリー、専用リチウムイオン充電池 NP-100 が付属する。
同梱のバッテリーチャージャーを利用して約4時間30分でフル充電が可能だ。バッテリーが大型なので充電時間はそれなりに必要だが、フル充電で撮影枚数約520枚(CIPA準拠※)の撮影が可能で、半日ほど持ち出して静止画、ハイスピード動画を切り替えながら撮影、再生を繰り返したが、バッテリー表示に変化はなかった。 |
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本体の他に、リチウムイオン充電池、専用充電器、AC電源コード、USBケーブル、AVケーブル、ストラップ、レンズキャップ、レンズフード、シャッターレリーズ、CD-ROM、取扱説明書が付属する。 |
今回、レビューのために約10日間ほどEX-F1をお借りしたが、目玉機能となる超高速撮影やハイスピード撮影は、非常に魅力的で面白かった。デジタルカメラは多機能になり便利にはなったが、機能そのもので面白いと感じたのは久しぶりではないだろうか。10日間で撮影のコツを掴みかけた段階で、もっとこんな被写体を撮ってみたいと、少々後ろ髪を引かれるような思いで返却をした。
おそらくEX-F1を手にしたユーザーは、まず今までにテレビ番組で見たことがあるような映像世界を、自分で再現したくなるだろう。その意味では「EX-F1に撮らされる」時期もあるかもしれない。そして場合によっては「一通り撮りたい物を撮ったら飽きるんじゃないか」との懸念もあるだろう。
確かにそれはあり得るが、これまで超高速撮影やハイスピード撮影は一部のハイエンドな機材でしか利用できなかった技術だ。EX-F1の登場によって、幅広いユーザーが手にすることで発想が広がり、今まで誰も見たこともない映像世界の表現に繋がる可能性も秘めている。
ただEX-F1を使って、例えば動物や昆虫などの驚異的な一瞬を捕らえるには、セッティングの工夫や時間、ある程度の慣れが必要で試行錯誤も必要だ。サッと撮って面白い写真も撮れるが、ジックリと腰を据えて付き合った方が、EX-F1の魅力を引き出すことができるだろう。
また、EX-F1がデジタルカメラのスタイルを取っているのには、重視する機能によって評価が分かれる。静止画中心の超高速連写重視なら大きな問題はないが、ハイビジョン撮影重視なら、デジタルビデオカメラとは操作性の面で勝手が異なり不便に感じられる部分もあるので、利用シーンの見極めは必要だ。
EX-F1は店頭で約10万円程度の価格が付いている。価格的には手頃なデジタル一眼を、ダブルズームレンズをセットでおつりがくるレベルで、そう簡単に手を出せるカメラではない。しかし EX-F1の魅力を、単純に価格だけで比較できないのも事実で、非常に悩ましいところだ。
最終的にはユーザー側の価値観をどこに置くかによるのだが、EX-F1が提供する価値観は全く新しいものであることには間違いない。