DMC-FT1はAVCHD LiteとMOTION JPEGによる動画記録が可能だ。AVCHD Liteはハイビジョンテレビなどに映し出すのに最適なハイビジョン記録の規格で、MOTION JPEGはパソコン上で映像を見る用途に向いている動画形式だ。
このうち目玉となるのはAVCHD Liteによる記録で、デジタルカメラ・ビデオカメラも含めてAVCHD Liteの搭載は、本機と
DMC-TZ7が初となる。
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では、AVCHD規格について簡単に説明しておこう。AVCHDはDVDやHDD、メモリーカードなど様々な媒体でハイビジョン記録を可能とする動画記録の規格で、それまで膨大な容量を必要としていたハイビジョン記録が、AVCHDの登場により少ない容量でも可能となった。そしてAVCHD Liteは720p(1280×720ピクセル)のハイビジョン記録に限定した規格で、いわゆる「フルハイビジョン」ではない。
DMC-FT1で記録可能なAVCHD Liteの画質モードは、ビットレート(一定時間あたりのデータ量で数値が高いほど高画質)が17Mbpsの「SH」、13Mbpsの「H」、9Mbpsの「L」が選べる。解像度はいずれも720pで、ビットレートが高いほど圧縮率が低くく高い画質が得られる。このあたりの理屈は、JPEG形式の圧縮率と画質の関係と似ている。 |
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DMC-FT1の動画撮影は静止画撮影モード中であっても、背面の動画ボタンを押せば即座に動画撮影をスタートできる。「ハイビジョンで撮るぞ!」というような気負いもなく、動画で撮りたいと思い立って気軽に撮影できるところが大きなポイントだ。
ちなみに本体内蔵メモリーはAVCHD Liteによる記録には対応しておらず、256MB以下のSDメモリーカードもAVCHD Liteの記録を保証していない。AVCHD Liteを重視するなら、SDスピードクラス6対応の高速で大容量のSDHCカードを利用しよう。
撮影されたAVCHD Liteのハイビジョン映像は、フルハイビジョンのAVCHDと比較すると解像感・精細さにやや欠けるが、AVCHD Liteはデジタルカメラで高画質な動画撮影ができる、手軽なハイビジョン記録として今後の広がりが期待できる。
現在のコンパクトデジタルカメラでは、すでに必須機能となった顔検出だが、DMC-FT1ではさらに進化し、個人の顔を見分けて優先的にピントを合わせる個人認証が可能になった。
個人認証の利用には、先に個人の顔を登録しておく必要がある。顔登録の画面では目と顔の位置を当てはめる枠が表示されるので、登録したい人物の顔に合わせて撮影を行う。 そして名前や年齢、個人に合わせた特別なフォーカスアイコンなどを設定することができる。そして撮影時に登録された顔を検出すると優先的にピントを合わせ、顔検出と同時に名前も表示する。同じ顔を何度か撮影すると、DMC-FT1がその顔を記憶して自動登録させるといったことも可能だ。
実際に個人認証を使ったところ、登録した顔の表情と多少違っていても検出してくれるケースもあったが、大きく表情が異なったり横顔やうつむいた場合には認識できないこともあった。
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また、一度ロックしたフォーカスが被写体の動きを追いかける追尾AF機能も搭載する。追尾AFの設定はメニュー操作でフォーカスモードを設定し、ロック操作は下方向キーで行う。フォーカスロックは顔に限らず、人物の体やペット、物でも可能だ。ロックすれば少しくらい動いても追尾は可能だが、被写体がカメラから遠く離れるほど、追い続けるのは難しいようだ。人物の場合、3m以上離れると追尾が外れることもあったので、状況によっては撮影者も動いた方が良いだろう。 |
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iA シーンモード [風景]
シャッタースピード
1/1250秒、F3.3、ISO80。 |
iA シーンモード [マクロモード]
シャッタースピード
1/8秒、F3.3、ISO100。 |
iA シーンモード [マクロ]
シャッタースピード
1/1250秒、F3.9、ISO80。 |
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iA シーンモード [風景]
シャッタースピード
1/50秒、F3.3、ISO80。 |
iA シーンモード [風景]
シャッタースピード
1/1000秒、F3.3、ISO80。 |
iA シーンモード [マクロ]
シャッタースピード
1/30秒、F3.3、ISO160。 |
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AVCHD Lite 動画(MTS)
画像サイズ 1280×720、画質 SH
(ファイルサイズ:36.1MB) |
※動画再生環境に関する質問にはお答えできません。 |
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再生モードではズームレバーの操作で1枚、12枚、30枚表示、カレンダー検索に切り替えることができる。
また静止画、AVCHD Lite、MOTION JPEGといったモード別による再生や、撮影時に適用したシーンモード別に再生することもできる。
編集機能としては、最大2度まで画像の傾きを補正することができる [傾き補正] が利用できる。
画像に文字やコメントの焼き込みができる機能の説明は、過去の記事を参考にして欲しい。
再生・編集機能としては標準的で、やや物足りない印象だ。アウトドアでの撮影後、帰りの道中でも写真を楽しめるユニークな機能があっても良いのではないだろうか。 |
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AVCHD Liteで撮影された動画の仕様は、AVCHDとほぼ同一なためAVCHDに対応する機器で再生することが可能だ。最新バージョンにアップデートされたゲーム機、プレイステーション3でも再生することができた。
PHOTOfunSTUDIO 3.0 HD Editionによる
AVCHD Lite動画の部分削除 |
ただパソコン上では、他社のAVCHD対応ビデオカメラに付属していたソフトウェアでは読み込み・再生できないケースもあったので、パソコンはDMC-FT1付属のソフトウェア「PHOTOfunSTUDIO 3.0 HD Edition(Windowsのみ対応)」を利用するのがベストだ。AVCHD Liteの読み込み・再生のほか、シーンの部分削除といった簡易編集にも対応する。ただし編集を行う場合は、処理能力の高いパソコンの利用が推奨されているので、こちらを参照して欲しい。 |
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DMC-FT1 には専用バッテリー DMW-BCF10 が付属、専用バッテリーチャージャーを使い約130分でフル充電が可能だ。フル充電の状態で約340枚(※CIPA規格準拠)の撮影ができる。アウトドアでは異物混入を避けるため、バッテリーの入れ替えはできる限り避けたいところだが、これだけの枚数が撮れるならバッテリーの交換を必要とする機会もグッと少なくなるだろう。 |
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本体の他に、USBケーブル、バッテリー、バッテリーケース、バッテリーチャージャー、AVケーブル、ストラップ、ソフトウェア、説明書が付属する。 |
※CIPA規格:カメラ映像機器工業会(Camera & Imaging Products
Association)が定める電池寿命測定方法についての統一規格
今回、DMC-FT1を触るまでは正直なところ、防水・防塵デジカメの老舗としてオリンパス、ペンタックスの両巨頭が存在するポジションに、LUMIXでタフネスモデルを投入するのは意外な印象を持っていた。後発で参入するにしても勝算があるのだろうかと、疑問に感じていたのだ。
しかし中身を見てみると生活防水といった生やさしいものではなく、水深3.0mの水中撮影や耐衝撃など本格的なタフネス仕様で固めたところに、かなりの本気度が感じられる。もちろん参入するからには本気であることに違いないのだが、初めてだからといって出し惜しみすることなく、持てる物を盛り込んで直球勝負を仕掛けてきた。
その「出し惜しみすることなく」の象徴は、ハイビジョン撮影が可能なAVCHD Liteの搭載だ。これが一番売れ筋のスリムでコンパクトなLUMIXシリーズではなく、同シリーズ初のタフネス仕様モデルに搭載されたことは興味深い。言ってみれば挑戦にさらに挑戦が重なっているようだ。
AVCHD規格をはじめハイビジョン映像は撮ったは良いが、その後の再生環境や保存で不便を感じることが少なくない。最近ではデジタル一眼レフでもハイビジョン映像の記録ができる機種も出てきているが、撮影後の映像の活用となると各メーカーがどこまでフォローできるのか気になるところだ。
その点をAV機器との連携に広げることができるのは、AVCをトータルで手がけているパナソニックの強みで、この強みがあるからこそ既に他メーカーが存在感を示しているタフネスデジカメに、機能的な差別化を備えつつ参入することができたといえる。おそらくAVCHD Liteの搭載は、今後LUMIXシリーズも広がっていくだろうが、ハイビジョンをキーワードにデジカメから他のAVCへの囲い込み戦略も垣間見ることができる。
ハイビジョン映像の話に終始してしまったが、シーン自動判別や追尾AFなどコンパクトデジカメとしても出し惜しみのない充実ぶりで、タフで全部入りのデジカメとも言い換えることができる。
いずれにしてもタフネスデジカメ市場に選択肢が増えたことは、ユーザーにとって間違いなくプラスな出来事だ。これからの季節、海や山でアクティブに、高画質な写真と映像も残したいなら是非DMC-FT1にも注目して欲しい。