パナソニック DMC-FX35 レビュー

被写体を自動判断する「おまかせ iAモード」、明暗差を補正する「暗部補正」

DMC-FX35 には、カメラを向けるだけで被写体を自動で認識し、最適なシーンモードを選択する「おまかせ iA(インテリジェントオート)モード」が搭載されている。

おまかせ iAモードでは [顔認識] [風景認識] [接写認識] [動き認識] [顔&夜景認識] の5つのシーンを自動認識する。
認識の精度は高く、カメラを風景や人、物へ向けるとほとんど待たされることなく認識し、モニター表示の左上に設定されたモードのアイコンが表示される。
人物の場合は顔検出機能が働き、顔には枠が表示、人物が動いた場合でもピントが追尾する。顔検出は同時に最大15人まで対応する。
おまかせ iAモードではシーンの認識に加え、ISO 感度、手ぶれ補正も同時に判断し、ISO 感度はインテリジェント ISO 感度(後述)が働く。
さらに DMC-FX35 では「暗部補正」機能が追加された。
これは被写体と背景の明暗差が大きい場合、状況に応じてコントラストや露出を自動補正する機能だ。例えばストロボを使った場合に、暗くなってしまう背景を明るく補正する、という具合だ。
「暗部補正」は、おまかせ iAモードでは常にオンの状態になり、[通常撮影] モードではオン・オフの切替が可能だ。
今回は [通常撮影] モードで「暗部補正」のオン・オフを切替ながら撮り比べてみたが、劇的な差を感じるほどの結果は得られなかった。パソコンのモニター上で撮影画像を二枚並べて比較すれば効果がわかるものの、DMC-FX35 の液晶モニターでは効果を実感しづらい状態であった。 もしかすると撮影のシチュエーションが適切ではなかったのかもしれないが、期待したほどの効果が感じられなかったというのが正直なところだ。

光学式手ぶれ補正と、動き認識でぶれを補正するインテリジェント ISO

DMC-FX35 は、手ぶれ対策として光学式手ブレ補正機能(MEGA O.I.S.)、被写体ぶれ対策として高感度 ISO を採用している。
レンズ駆動による光学式手ブレ補正は、画質に影響を与えることなく手ぶれを防ぐことができる。
高感度 ISO による被写体ぶれ補正は、感度アップによるノイズの発生が起きるが、DMC-FX35 では被写体ぶれ補正と画質のバランスを保つ「インテリジェント ISO 感度モード」を搭載している。
インテリジェント ISO 感度モードは、あらかじめ感度の上限を ISO400、800、1600 のいずれかに設定する。そしてカメラが被写体の明るさと動きを検知しながら、設定された感度の範囲内で最適な設定を判断する。そのため画質への影響を最小限に抑えることができる。
撮影時にはモニター上に [iISO] アイコンが表示され、撮影後に表示されるプレビュー表示や再生モードで、適用された感度を確認することができる。
任意に設定できる ISO感度は最大1600までだが、シーンモード内の [高感度] モードを選ぶと、最大6400まで自動設定される。ただしこの場合は記録画素数は 3M(4:3)、2.5M(3:2)、2M(16:9)に限られる。これは、暗い環境で不足する光量を補いつつノイズの発生を抑えるため、CCD の隣接するいくつかの受光素子を1つの素子としてまとめて利用するので記録画素数は小さくなってしまうためだ。

撮影サンプル

iA シーンモード [風景]
シャッタースピード 1/800秒、F4.0、ISO100。
iA シーンモード [マクロモード]
シャッタースピード 1/125秒、F2.8、ISO100。
iA シーンモード [オート]
シャッタースピード 1/100秒、F5.2、ISO100。

文字の焼き込みなどユニークな編集、活用ができる再生モード

再生モードではズームレバーの操作により、1枚表示、12枚表示、30枚のマルチ表示と、撮影日毎のカレンダー表示が可能だ。
スライドショーでは記録されている全画像再生のほか、「カテゴリー再生」として、撮影時に適用したシーンモードの「人物」「風景」「夜景」といったカテゴリーで絞り込んで再生することができる。

また画像には「お気に入り」を設定することが可能で、気に入った画像のみを絞り込んでスライドショー再生することも可能だ。撮影時にはよく似たカットや失敗写真が何枚もありがちだが、お気に入りに設定することで不要な画像を再生させずにすむ。

スライドショーでは4つの効果「ナチュラル」「スロー」「スウィング」「アーバン」から選択することが可能で、それぞれは画像が切り替わる効果やBGMの曲が異なる。
BGMはオフ、画像切替効果のみ利用することもできる。
付属のAVケーブルを使ってテレビ画面へ映し出すことが可能で、それ以外にも別売りの D端子接続用コンポーネントケーブル DMW-HDC1 を利用することで、D端子(D3以上)を搭載するテレビに高画質で映し出すことができる。
あらかじめ [画像横縦比] で [16:9] に設定して撮影した画像なら、ハイビジョンテレビの画面比率と一致するので広がりのある表示が可能だ。
再生モードの編集機能として、画像にタイトルや撮影日などを焼き付けることができる「タイトル編集」「文字焼き込み」がある。
これらに関しては、DMC-FX55 のレビューで詳しく触れているのでそちらを参照して欲しい。

画素数アップながらも撮影枚数は増加、フル充電で約290枚の撮影が可能

DMC-FX35 には専用バッテリー DMW-BCE10 が付属、フル充電の状態で約290枚(※CIPA規格準拠)の撮影が可能だ。これは前モデル DMC-FX33 から約10枚のアップになる。実感できるほどの差はないかもしれないが、画素数がアップしていることを踏まえると嬉しいポイントだ。バッテリーは専用のバッテリーチャージャーにより、約120分でフル充電が可能だ。
本体の他に、USBケーブル、バッテリー、バッテリーケース、バッテリーチャージャー、AVケーブル、ストラップ、ソフトウェア、説明書が付属する。
※CIPA規格:カメラ映像機器工業会(Camera & Imaging Products Association)が定める電池寿命測定方法についての統一規格

総論:高機能にもかかわらず、カジュアルに誰にでも使えるデジカメ

前モデルの DMC-FX33 で先進性を感じさせる「おまかせ iA」を搭載していたことで、普通なら今回のモデルチェンジは画素数アップ程度のマイナーチェンジに終始しやすいところだが、広角 25mm の採用や、操作性を向上させるなど機能・性能向上の手を緩めていない印象だ。

広角レンズのメリットは「広い範囲が撮影できる」というのが一般的で伝わりやすいが、構図や被写体との距離によっては、レンズの歪みを利用してダイナミックな表現が可能となる。
すでに 28mm モデルを所有するユーザーからの買い換えだと感動は少ないかもしれないが、35mm モデルからの買い換えなら DMC-FX35 をオススメしたい。一度、広角の面白さを体感してしまうと、35mm のデジタルカメラでは物足りなく感じるだろう。

モードダイヤルやキーの変更、軽量化やバッテリー寿命の向上など、見た目のデザインよりも中身の向上に力を入れているところも多く、地味な部分ではあるが日常的に使っているとメリットが実感できる改良も多く、好感が持てる。

気になったのが液晶モニターの視野角の狭さだ。確かにバックライトの明るさを変えて視認性を向上させる「パワーLCD」「ハイアングル」があるのでフォローはできる。しかし「おまかせ iA」はカメラにお任せで OK なのに、撮影の途中で構える角度に応じてメニュー操作が必要なのは面倒だ。操作不要でどのアングルでも見やすい液晶モニターであればこそ、「おまかせ iA」の「おまかせ」がもっと生きてくるだろう。

それら気になる点はあるものの、全体としての完成度が高いのは間違いない。 「おまかせ iA」のようなシーン判別機能は、他社でも追随する傾向にあるので今後のトレンドとなるだろう。
また広角レンズの採用も広がりつつある中で、さらにワイドな 25mm レンズを採用する DMC-FX35 は、いろいろな面で先に進んでいるといえる。

今後はさらに高機能なデジタルカメラも登場するだろうが、すでに進んでいる DMC-FX35 を手にしていれば大きな不満が出てくることも少ないだろう。
H-lab:山地啓之)
 パナソニック [ http://panasonic.jp/ ]
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 発売日:2008年2月下旬
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